レークと雫の三者面談(9)
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教室に向かう途中レークは自分から私に声をかけようとはしなかった。
「レーク?」
階段の踊り場でレークが止まった。
「おー。」
「どうしたの?」
「俺さ。」
そこからレークが話そうとしない。
「私はレークのその態度からいろいろ察すればいい?それとも、私はレークが
話始めるのを待ってたらいい?」
「自分で話す。」
声がぼそぼそしているがまあ頑張れば平気で聞こえる声だ。
「俺、雫に迷惑掛けてるよな?」
「いや、迷惑掛けられてないよ。」
「だって今日だって。」
レークの声が少し大きくなって、私を見る目に力が入る。
私は首を振った。
「迷惑掛けられてない。だって私にはつんけんしてるレークを見守って、宥めて、諭して、レークが壁にぶち当たったときヒントをあげるっていう義務があるから。」
「義務?」
「そ、初めて会った時からそうじゃない。それにね、私のグループに入れようって決めた時から覚悟ができてるの。」
レークが何も言わずに歩き出した。
私はその後ろをついていく。
「私はレークのつんけんしたところ好きよ。自分で曲げようなんて思わなくていい。」
「なんでいつも雫たちは周りと逆のこと言うんだよ。」
「私やほかのグループメイトはレークのことをちゃんと見ているからじゃない。だから、シーナやメーラはレークを学校に連れて行くし、どれだけ口喧嘩をしても糸奈はレークを本気で怒らない。レークだって糸奈のことよく知ってるから切れないでしょ。」
「まあ。」
「それと同じ。うちのグループは人間観察に長けた人が多いの。」
レークが次に立ち止まったのは教室に行く廊下の曲がり角だった。
「ここでいい。」
「教室まで送るわよ。」
「誰かに見られたらめんどくさいだろ。」
「そっか、じゃあまた後でね。」
「おー。」
レークが一瞬私を振り返って歩き出した。
「行ってらっしゃい。」
こう言うと、レークが足を止めずに前を向いて一言言ってくれた。
「行ってきます。」




