レークと雫の三者面談(5)
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「何か来るわ。」
雫が立ち止まった。
「どうなさいましたか?」
「透明魔法で身を隠した人間がこっちに来てる。それもずいぶん急いでね。」
雫が見上げる先には透明魔法で姿を隠した雅がいた。
透明魔法を使いこなせる魔道師は、透明魔法で姿を隠した魔道師もうっすらとしたシルエットや魔道のオーラで見つけることができる。
そして、雫は透明魔法の熟練者だ。
「気づいていただけたのですね。」
「ええ、降りてきてください。」
雅がゆっくり地面に降りて透明魔法を解く。
透明魔法が解かれた姿を見て雫が驚いた。
「あなたは学園の生徒ね。」
「はい、西道路雅と申します。レークのクラスメートです。少しだけお時間をいただけませんか?」
雫は雅の瞳をじっと見てから、時計を見た。
8時58分だ。
「あまり長居はできないけれど、それでも話そうと思うようなことかしら?」
「はい。」
「深刻な内容なのね。」
「はい。」
「分かったわ。わざわざ私のところに来てくれてありがとう。お話お聞きします。」
雅は静かに話した。
「あまりお時間がないとのことなので、一方的になってしまいますが、僕が伝えたいことを一気にお話します。」
「ええ。」
雅と雫が対面し、その後ろで上手も話しを聞いていた。
「この後舞薔薇先生との面談がありますか?」
「ええ、なぜそれを知っているの?」
雫が目を開いて雅を見た。
「たんなる推測です。これは僕の予想にすぎませんが、そこにレークがいると思います。」
「なぜ?今回の面談は私と舞薔薇先生の2人で行うはずよ。」
「さっき、教室にいたレークを先生が呼び出して連れて行きました。どこに連れて行ったのかは分かりませんが。」
「一つの仮説としては十分に在り得ると。」
「はい。」
「なるほど。それをわざわざ言いに来てくれたの?」
「はい。先生の態度やレークの態度を見ていると嫌な予感がしたんです。十分にご注意ください。」
「わざわざ本当にありがとう。来てくれたついでに一つお聞きしてもいいかしら?」
「はい。」
「舞薔薇先生はあなたに優しい?」
「はい、なぜそう思われたのですか?」
「その胸のバッチは学年主席に与えられるものでしょう。それにあなたのことはレークから聞いているわ。学業成績や生活態度が優秀で舞薔薇先生のお気に入りだそうじゃない。」
雅は返事に困っていた。
「君は先生に気に入られていることを嬉しく思っていないの?それとも、先生の見方をしているの?」
「僕僕は舞薔薇先生の授業方針や考え方があまり好きではありません。なにより、万が一レークが学園を出て行くことになったら、僕は毎日が退屈でしかたなくなります。」
「そう。」
「はい。」
雫は少し目を閉じて、呼吸を整えてから目を開けて雅を見た。
「レークは本当に素敵なお友達を持ったわ。いつもありがとう。」
雫が歩き出し、上手が雅に一礼してから後ろに続いた。




