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今日の終わりに(8月26日)(5)

5

 寮の扉を開けて彩都が玄関に上がる。

「疲れた。」

帰ってすぐにリビングのテレビをつける。

「今日のニュースです。」

彩都がソファーに座ってテレビを凝視する。

「昨夜、ノーエル地域で古代モンスターが蘇り、魔道良2205室のポリスが浄化に当たりました。このモンスターは先週同道良別の別のポリスが浄化をしたと報告されていましたが、魔道良2205室によりますと完全には浄化できていなかったにもかかわらず、先週担当したポリスが浄化をしたと報告していたということです。魔道良は主な原因をポリスの確認が不十分だったためとしています。今回の戦闘による死者や怪我人はいません。魔道良2205室ポリス業務部ポリス業務向上課ポリス担当魔道市職員指導室チーフ統括釵氏は、皆様に多大なるご心配をおかけいたしましたこと、またノーエルの方々にご迷惑をおかけいたしましたことを心よりお詫び申し上げますと共にノーエル地域の復興を全面的に支援すること、再発防止を徹底することをお約束いたしますとのコメントを発表しています。」

ニュースは次の話題に移った。

「そっか、雫はこの人たちの指導をするのか。」

彩都がソファーから立ち上がり、洗面台に向かう。

「それにしても疲れたな。この週末はゆっくりしよう。」

手洗いとうがいをして彩都が冷蔵庫を開ける。

「あっ、卵食べないと。」

彩都が顎に手を当てる。

「今日の夕食何にしようかな。」

彩都は料理が好きだ。

何かを生み出すことが好きだ。

勉強をして自分の中に吸収することも好きだけど、それ以上に何かをアウトプットすることが好きだ。

そんな彩都にとって、料理は一つの趣味である。

「うん、決めた。」

野菜室や冷凍室から適当に材料を出してきて、冷蔵庫に残っていた卵を六つ取り出して、彩都がちゃくちゃくと準備していく。

「やっぱり一晩家を空けると材料の減りが計算通りにいかないなあ。来週はポリスの週だから、余計に分からないだろうな。」

彩都が作っているのは簡単な炒め物だ。

後ろでは炊飯器がばちばち仕事をしている。

「ここまで作ってインスタントの汁物はちょっと寂しいな。よし作るか。」

彩都が引き出しを開ける。

「おー。」

彩都が引き出しから取り出したのは鰹節。

「使える。」

 19時半、彩都渾身の夕食ができた。

炊き立ての白米に乗せるのは彩都手作りの梅干し。

鰹節をメインに作ったスープと栄養バランスの考えられた炒め物。

「最後に。」

彩都が冷蔵庫に入っているヨーグルトを3パック取り出す。

「今日までなんだよね。食べちゃおう。」

彩都がパックに入ったヨーグルトを陶器の容器に移す。

「よしいただきます。」

彩都が満足そうに食事を摂る部屋の本棚には優に100冊を超える書籍が並んでいた。

背表紙にはさまざまな言語が書かれている。

「そうだ。」

彩都がテレビを消して席を立つ。

「昨日届いてたんだよね。」

彩都がさっき荷物を置いたソファーの上の団ボールを持ち上げる。

書類には書籍と書かれていた。

「楽しみにしてたんだ。」

彩都が箱を開け、本を左手に持って食事を始めた。

部屋には彩都が食器に箸を当てる音とページが捲られる音しか聞こえない。

今彩都が読んでいるのは、今週の月曜日に出版された異世界ファンタジー。

魔法のない世界を生き延びる学生の物語だ。

(不思議だな。魔法が無くて当たり前。そんな世界を平然と生きられる人たちがいる。まあ小説だからあり得るのかな。)

 食事を終えた彩都は手早く入浴を済ませてテーブルに分厚いノートと鉛筆を持ってきた。

「昨日の分も書かないと。」

これは彩都の日記帳。

表紙には「2029年4月1日から3月31日まで」と書かれている。

彩都がしおりの入ったページを開ける。

隣のページには8月24日の出来事がまとめられていた。

(8月25日木曜日晴れ。)

彩都が書き始める。

(今日はノーエルに向かいました。グループルームに入ったら雫が倒れていて驚きました。雫は無理をし過ぎです。久しぶりに空飛ぶジュータンに乗りました。ノーエルに着いてまずネオンダールの神殿に向かいました。あそこは悪気が強いから嫌いです。そのあと、Miraと一緒に宿舎に向かいました。宿舎に着いた後空飛ぶジュータンを畳みました。今日はいつもよりうまく畳めて、小さくまとめることができました。荷物を置いた後ノーエル局に行きました。)

彩都は丁寧に昨日あったことと今日あったことを書いて行った。

「よし。」

1枚の紙がいっぱいになるまで一日にあったことを書いて行ったから、20分で紙2枚分が埋まった。

「そういえば。」

彩都が席を立って本棚に向かう。

手に取ったのは今書いていた日記帳と同じカバーの付けられたノート。

「去年の今日って。」

彩都がノートをペラペラと捲って行く。

「あった。」

去年の8月26日、彩都の日記には一日オフだったことが記されていた。

「そうだ、ノーマル月間にしては珍しく3連休でレークと糸奈に誘われてノンフェリーゼ海岸に行ったんだ。結局クシーとスマスもついてきて、男5人で一泊二日の海の旅になったんだよね。楽しかったな。」

彩都が嬉しそうに日記を読み進める。

「だめだ、早く洗い物を済ませないと。」

彩都が日記をテーブルに置いてシンクに向かう。

「そっか、31日にアルミラさんのところに行くって言ってたな。楽しみだ。」

彩都が洗い物をするシンクの真反対に食材や調味料の入った引き出しがある。

その上に布巾やラップ、お菓子なんかが置いてあってそのすぐ近くに1錠ずつに分けられた錠剤の入った袋が置かれていた。

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