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魔道良2205室ポリス業務部ポリス業務向上課ポリス担当魔道市職員指導室チーフ木漏れ日雫(6)

6

 「ではまたいつか、お疲れさまでした。」

雫は満面の笑みで挨拶をし、グループルームを出て行った。

「いつかっていつなの。」

「さあ。」

「あれが教官。」

「私たちのこと全員合格にするって言ったけど。」

「なんだ簡単じゃん。つまり全員形式的な指導を受ければ、合格にしてくれるってことでしょ。」

「そっかそっか。身構えて損した。」

そんな中裏梯だけ黙っていた。

「裏梯どうしたよ。」

「てかあんたがあんなに怒鳴るなんて思わなかった。」

「あれはやばい。」

裏梯が呟いた。

「何言ってんの。」

裏梯の顔がどんどん険しくなる。

「あいつはやばいやつだ。全員合格させるの意味は。」

周りの社員が首を傾げる。

「裏梯どうした?大丈夫か。」

その様子を後ろから一園が見ていた。

「裏梯君、心配し過ぎだ。大丈夫だよ、木漏れ日教官はオーラこそ異常だが、至って人間らしい人だ。それより皆さん、さっき教官が配った紙はもう書き終わりましたか?」

職員が頷く。

「では私が今から教官を追いかけて渡してきます。集めますね。」

一園が職員の前に行き、一枚ずつ集めていく。

「今日はお疲れさまでした。これで解散とします。」

一園がそれだけ言って部屋を出る。

 (疲れたあ。)

エレベーターホールの近くのソファーに座り、雫が伸びをする。

(何とか終わった。でも。)

雫がC班のいた部屋の方を見る。

(そろそろ来るかな。)

雫がソファーから立ち上がる。

それと同じタイミングで扉が開き、一園が出てきた。

「分かっておいででしたか。」

「ええわざとでしょう。」

「回りくどいことをしました。すみません。」

「ここで話していると彼らが出てきます。」

「では場所を変えましょうか。一園さん、この後お時間大丈夫ですか?」

「はい、木漏れ日さんは。」

「大丈夫です。何とかします。」

二人がどちらかということもなく歩き出す。

向かった先は階段だ。

「木漏れ日さん、この後は。」

「この後はグループルームに戻って残っている仕事を。」

「では上に上がりましょう。」

「はい。」

二人が30階まで上がる間、一言も会話はなかった。

「この辺りの椅子で。」

「はい。」

雫と一園がテーブルを挟んで向かい合う。

(変な空気だ。元々一園さんのことはよく知ってるし、お話もしたことがあるから、緊張しなくていいはずなのに、ものすごくそわそわする。)

「木漏れ日さん。」

「はい。」

「これを。」

一園がさっき集めた紙を渡す。

「あー。」

雫が慌てて立ち上がり、一園から受け取った。

「すみませんでした。すっかり忘れていました。」

「これを私が持って来るようにしたわけではないと。」

「ええ、てっきり今後の予定の確認で私を追いかけて来られたとばかり。」

数十秒の沈黙の後、一園が声を上げて笑った。

「何も変わっていないなあ。」

雫も釣られて笑顔になる。

「何を書いてくれたんでしょう。」

雫が紙の中身を一枚ずつ見ていく。

「何かありますかな。」

「そうですね、みんな学習意欲が高いようです。これは教え買いがありますね。」

雫が5分ほど社員から受け取った紙を見ている間、一園は黙って雫を見ていた。

「お待たせしました。」

「いえいえ。」

「今後の指導内容何となくイメージできてきましたよ。」

「何を彼らに教えますか?」

「まずはスタンダードに魔道支援器具のこととポリス業務の一連の流れの確認。それに付随する実践演習は実際に現場に出向いて行いたいですね。」

「現場。」

「はい、たとえばノンフェリーゼとか。」

「おー、木漏れ日さんの多忙なスケジュールで実現できますかな。」

「そうですねえ、いろいろな用事とくっつければ、うまく行くかもしれません。たとえば、うちの班の強化訓練とか。」

「なるほど、ではぜひうちのグループもご一緒させていただこう。そうすれば、人手も足りるでしょう。」

「はい楽しみにしています。それから。」

雫が手に持つ紙に視線を落とした。

「残りの時間はここに皆さんが書いてくれている内容のレクチャーをしましょうか。後連係プレーのイロハも教え直さないといけなさそうですね。」

雫が紙を整えてカバンにしまう。

「さきほどもお伝えしましたが、一園さんもできるだけC班の皆さんと一緒に指導を受けてくださいね。一緒に同じことに取り組むのが、関係修復の近道になると思います。」

「それは私たちの問題です。そこまで木漏れ日さんのお手を煩わせることはいたしません。」

雫が微笑む。

「つまり他所のグループ内事情にまで首を突っ込むなと。」

「はい。」

一園がはっきり答え、雫がそれに頷く。

「もちろんです。私の教官としての役割にグループ内事情への介入は含まれていませんからね。ただ、私は関係修復のきっかけを提供するくらいなら許されると思っていますよ。」

「ほお。」

一園が目を細める。

「せっかくです。どちらにせよ指導時間の半分は一緒に受けていただかないといけないわけですし、ご多忙とは存じますが、ご協力ください。」

雫が首を傾げて微笑んで見せる。

「よく見抜かれますな。相変わらずの観察眼だ。」

「まだまだ新米ですが、これでも一つのグループリーダーです。それに、一園さんのお人柄は彼らより理解しているつもりですよ。」

「確かにそうですな。」

「お気を強くお持ちください。一園さんの指導法は間違っていないと思います。」

「そうですか、そう言っていただけますか。」

「はい。」

雫は席を立ち一園に一礼した。

「それではこの辺りで失礼いたします。」

「はいお疲れさまでした。」

雫はカバンを肩に掛けて歩いて行った。

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