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ノーエルからの帰還(2)

2

 「お疲れ様でーす。」

「ありがとう野音ちゃん。」

「いえいえ、お片付けは。」

「私たちだけでやれます。」

「わかりました。18時5分までにお願いします。」

「はい。」

雫たちがジュータンを降りる。

「チコ、メーラ、レークいい加減起きてください。」

Miraが3人に大きめの声で話しかける。

「まだ眠い。」

「あー。」

3人がだらだらと体を起こす。

「あなたたちそのままジュータンに寝転がってたら、一緒に折りたたまれるわよ。」

雫の一言にチコがぱっと立ち上がる。

「さあ、取り合えず荷物を降ろしてジュータンを畳みましょう。」

「はーい。」

各自の荷物を降ろすと、ジュータンがとても広く見えた。

「こんなに広かったんだ。」

「何も乗ってないと意外。」

クシーとシーナが頷きあう。

「誰か畳むの手伝って。」

「私やる。」

「僕もしよう。」

彩都の声掛けにメーラと糸奈が答える。

「私たちは荷物を端に寄せておくわね。」

あまり時間がない。

3人が手早くジュータンを畳んでいく横で、雫たちがキャリーケースを一人分ずつに分けていた。

(あれ。)

雫がふとした拍子に視線に気づき、大気スペースに目をやる。

(あれ、もしかして一園さん。)

「雫。」

「あー、なにチコ。」

「どうかした。」

「うーん、なんでもないわ。」

雫がもう一度大気スペースを見る。

(やっぱり一園さんだ。どうしたんだろ。)

2,3分で、10畳ほどの広さのあるジュータンが綺麗に畳まれた。

「グループルームまで持って行くよ。」

「ありがとう彩都。」

「早く帰ろう。」

チコたちがそれぞれのキャリーケースとグループの荷物がまとめられたキャリーケースを引いて大気スペースに入る。

 「涼しい。」

大気スペースに入るや否やメーラが声をあげた。

「メーラうるせえ。」

「煩いねえ。」

「本当に涼しいわねえ。」

雫も頷く。

「取りあえず、グループルームに戻るでいいの。」

一同が頷いた。

「学生さんたちは今日はもう学校行かないわよね。」

「ごめん無理。」

シーナとメーラが頷き、レークが当然というような顔をする。

「わかったわ。ならグループルームに戻って一息ついてから解散にしましょうか。今日の報告書等々は各自書き上げてくれているし。」

「はーい。」

雫が頷いてもう一度ソファー席を見る。

(あれ、もしかして私に用事かな。)

声をかけには来ないが、さっきから視線を感じていた。

「ごめんなさい。みんなは先に戻ってて。少し寄り道をして帰るから。」

「どこ行くの。」

「この辺りをふらっとね。」

「怪しいな。」

シーナやレークが雫を見つめる。

「2人とも早くグループルームに戻ろう。上手さんが冷たいジュースを用意してくれてるかもよ。」

スマスが2人に声をかける。

「ジュース。」

「帰ろう。」

今の今まで雫に興味津々だった2人がひょいっと体の向きを変える。

「まったく、素直なんだから。」

雫が苦笑いを浮かべる。

「では先に帰っていますよ。」

「ええ、落ち着いたら私を待たずに帰ってね。」

「はーい。」


 Miraたちを送り雫がソファー席の方へ歩いて行く。

「お疲れ様です、第26グループグループリーダー一園さん。」

「あー。」

「私に用事があると思っていいですか。」

「あー。」

「では申し訳ありませんが、お隣に座らせていただいても。」

「もちろん。」

「すみません、遠方帰りで足がぱんぱんで。」

雫が照れ臭そうに笑い一園の隣に座る。

「今日はどういったご用件でしょう。」

一園が雫の顔を見て立ち上がり、雫の前に立つ。

「まず、今回うちのグループのC班がおこなった不手際を謝罪したい。」

一園が雫に頭を下げた。

(まあそうだよね。それ以外に私のところに来る理由がないわ。)

「一園さん、頭を上げてください。」

雫が落ち着いたトーンで答える。

「許すなんて言えません。私は許す立場にありません。今回MSHMTを使い、ノーエルに住む人たちの生活を脅かしたのは確かに26グループのC班のみなさんです。結果として倒しきれていなかったレッドネックを倒したのはうちのグループです。私たちも苦労しましたが、それは仕事ですからいいんです。ですが、ノーエルに住む人たちの生活に苦労を強いたことはそれ相応の報いを受けなければ許されないと思います。それにもっと彼らには勉強してもらわないといけないことがたくさんあると思います。何より、許してほしいと思う相手は私ではなく、ノーエルの人たちです。」

一園が無言で頷いた。

「やはりあなたにお任せしよう。」

「えっ、何をでしょう。」

「C班への勤務改善指導だよ。」

「えっ。」

「木漏れ日君に教官になってもらいたい。グループリーダーとして公式にお願いするよ。やれるだろう。」

「資格的には可能ですが。」

「上戸はそういうことで相談をしている。事態の一部始終を知っていて、そのうえで自分たちではなくノーエルの人たちに謝罪をするよう促す姿勢があるなら、ぜひお任せしたい。」

(断りたいけど、断る公的な理由もないし、断る権限も私にはないか。)

「わかりました。上司と相談してみます。改めて日にちをご連絡いたします。」

「いやできるなら今夜がいい。」

「今夜ですか。この後いくつか行かないといけないところがありますので。」

「何時になっても構わない。」

全く抑揚のない話し方から雫が必死に一園の感情を読み取ろうとする。

「畏まりました。念のためにもう一度お伝えしますが、まだ私が彼らの教官になると決まったわけではありません。そのおつもりで。」

「了解した。」

一園が軽く会釈をしてその場を離れていく。

(あー、はー。)

雫が鼻からゆっくり息を吐いて立ち上がる。

(なんだろう。仕事が一個増えた気がする。)

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