ノーエルからの帰還(1)
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ジュータンを持ち回りで操縦すること3時間半、ようやくMYに戻ってきた。
一人一人が使えるセルフスパイラルが少ないせいで、いつもより時間がかかってしまった。
「そろそろ着きますよ。チコたちを起こさないと。」
Miraが右手を左に回転させ、ジュータンの向きを変える。
「着陸は誰がする。」
雫がパソコンを閉じて辺りを見る。
外はすっかり夕方の景色だ。
ノーエルと違いMYの地上には高い建物がたくさん生えている。
「そりゃ雫でしょ。」
「賛成。」
「ええ。」
雫がクシーを見る。
「なに。」
雫の視線に気づいたクシーがスマホから顔を上げる。
「ねえクシー、昨日私の運転に文句を付けたわよね。私の運転は信頼できないって。」
「言ったね。」
「ならさあ、そんな危ない人に着陸なんて任せられないでしょ。」
「なに言ってるんだ。雫はあの時、着陸は得意だって断言しただろう。それに俺もそれは認めるよ。」
「それならなおさら雫に任せないとな。」
「ええ。」
雫がため息をついて姿勢を正す。
「Mira交代。」
「はーい。」
雫が目を閉じてMiraとエントランスを繋ぐ。
二人ならブレスリンクが無くても平気でエントランスを繋げられる。
エントランスを繋げて、Miraがおこなっている飛行魔法をそのまま雫が引き継ぐのだ。
「Mira、もういいわよ。飛行魔法空飛ぶジュータン。」
雫が右手をジュータンと平行にする。
イメージとしては、半球状の道具をジュータンに置いて回転させているような感じだ。
「雫上手さんへの連絡は。」
「さっきしたわよ、糸奈。」
雫が左手で電話帳を立ち上げる。
「スカイガーデン、スカイガーデン着陸カウンター。」
雫のスマホにはあっちこっちの連絡先がびっしりだ。
「あった。」
雫がワンタップしてスマホを耳に持って行く。
「はい、魔道良2205室スカイガーデン着陸カウンターです。」
「こちら魔道良2205室第37グループグループリーダー木漏れ日です。」
「暗証番号をお願いします。」
「182-345-229-0021226。」
「暗証番号の確認及び声紋認証を完了しました。現在地をおかけのスマートフォンから確認します。しばらくお待ちください。」
しばらくの保留音の後再び声が聞こえてきた。
「お待たせいたしました。木漏れ日雫様の現在地を確認いたしました。着陸を申請される形態をお教えください。」
「15人乗り空飛ぶジュータンです。」
「畏まりました。着陸スペースの確認をいたします。ご希望のスカイガーデンはございますでしょうか。」
「いいえ。」
「それではしばらくお待ちください。」
また保留音が流れる。
雫は一瞬スマホを耳から離し、腕時計を見た。
(17時36分か。あと20分ぐらいで着くけど。)
「お待たせいたしました。17時50分から18時5分の枠で南棟スカイガーデンに着陸いただけますでしょうか。」
(ちょっと急がないとだめだけどまあいっか。)
「了解しました。南棟スカイガーデンに17時50分から18時5分の間で着陸します。」
「よろしくお願いいたします。」
雫が電話を切る。
「あと15分で着かないといけなくなったから、少し飛ばすわね。」
「はーい。」
17時49分、魔道良のスカイガーデンが見えてきた。
「よかった、間に合った。」
「片づけに時間がかかるからね。」
「そうなのよ、できるだけ時間通りに着かないと15分で片づけ終われないから。」
雫が、緑のランプを左右に振る人に気づく。
「あそこでいいのかな。」
雫が左右を見て他の魔道士とぶつからないかを確認しながらスカイガーデンに近づいて行く。
「クシー。」
「なに。」
雫が辺りに神経を張り巡らせながらクシーに声をかけた。
「たしかに私は着陸が得意だと言ったわ。」
「うん。」
「でも昨日の着陸と今日の着陸じゃ難易度が全然違うのよ。」
「どういう意味で。」
「昨日は周りに魔道士も障害物になりそうな建物や電線もなかったじゃない。でも今日はそれらが全部ある。」
「でもフライトアドバイザーがいるだろ。難易度の調整はされていると思うけどな。」
「ええでも。」
雫が反論しようとして口を閉じる。
(さすがに話しながらじゃ無理か。)
どんどんスカイガーデンが近づいてくる。
(あっ野音ちゃんだ。)
雫が左手で手を振ると、野音が振替してくれた。
「着陸するわよ、一応揺れに気を付けて。」




