レークと雫の三者面談(3)
3
(だからなんで俺が学校なんかに行かないといけないんだよ。)
8時から始まる2時間目が8時50分に終わったタイミングで、レークが教室に入った。
「今日は来たのか。」
「あー、うちのリーダーが授業は受けとけってうるさいんだよ。」
レークがオーバーに椅子を引いて、座った席の隣にいるのが「雅」だ。
レークとは対照的に雅は冷静沈着な青年で成績もいい。
「さっきの授業のノート送っておくからまた勉強しておけ。」
「めんどくせえ。」
「2時間目数学だったんだぞ。おまえ数学はあまり得意じゃないだろ。」
「おお。」
雅がレークにノートをぱらっと見せた。
「ほかにぬけてる分のノートも送ってやるから。」
「ありがとうよ。」
「どういたしまして。今日はどの時間いないんだ?」
「8時間目から後はいねえ。」
「はいはい、毎日そんなだな。」
「忙しいんだよ。それに1週間に1時間は出席しろっていう校則は守ってるんだ。」
「まあな。だが、あんまり今のような出席時間が続くようだと担任がうるさいぞ。」
「わかってる。あいつ本当にうるせえから。」
レークが机に次の授業の教科書を出していると、教室の入り口がぴしゃりと開いてクラス中が静かになった。
「アラバーさんはいますか?」
クラスに響く冷たい声が教室を一層ひんやりさせる。
「はい。」
レークがへにゃへにゃと席を立った。
「なんだよ。」
「ついてきなさい。」
「もうすぐあれだけ先生が出席しろと言っている授業が始まりますよ。」
「構いません。3時間目は出席していたことにしておきます。いいから早く来なさい。」
「なんだよ。」
動かないレークの背中を押して雅が呟いた。
「行って来い。事が大きくなる前に済ませろ。」
レークが一瞬ポケットのあたりを触って、ふらふらと教室を出て行った。
レークが廊下に出た後、舞薔薇先生が扉をしめた。
少しずつクラスに話し声が戻ってくる。
「ねえ、なんで「西道路」君は彼に優しくするの?」
レークの近くに座るクラスメイトの女子が雅を見た。
「彼が優秀でいいやつだからだよ。」
「あんなに態度が大きくて、目つきが悪くて、学業成績も良くない彼が?」
「君は彼のことを勘違いしているよ。根はまじめで優しいし、学業成績は良くないが、それは十分に勉強をする時間と精神的余裕がないからだ。その証拠に毎日魔道良で磨いている魔道の腕は目を見張るものがあるし、魔道実技テストの成績は彼がいつも一番だろ。」
「魔道実技は魔道良に就職してから磨けばいいって舞薔薇先生は言ってたよ。」
「考え方は人それぞれ違うものさ。魔道だってピアノやバレエと一緒で小さい時からやり続ければ、やり続けるだけ才能が開花しやすいという主張もあるしね。」
「ふーん。」
女子生徒が前を向いた。
(嫌な予感がする。舞薔薇先生がレークをわざわざ呼び出して何もしないわけがない。)
雅がすっと席を立った。
「西道路君どこ行くの?」
さっきとは別の生徒が雅に声をかけた。
「ちょっと頭痛がするんだ。保健室で保冷剤をもらってくるよ。」




