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パラレルワールド案内人からのご挨拶

 皆様ごきげんよう。

わたくしはパラレルワールド案内人「Nine(ないん)」と申します。

えっ、皆様はパラレルワールド案内人をご存じありませんか?

それは大変失礼いたしました。

わたくしたちパラレルワールド案内人は、皆様が過ごしている世界とは全く違う世界の物語をお届けするものです。

今回わたくしがお伝えいたしますのは、魔道があってあたりまえの世界を生きるある女性の物語でございます。

ばりばりのキャリアウーマンである彼女の一般的な生活と、ある事故をきっかけに始まっていくアブノーマルな生活をお届けいたしましょう。

彼女と彼女の周りに溢れる個性豊かな人たちを感じていただければ幸いです。

ですが、そのためにはまずいろいろなことの最低限の説明を皆様にしなければなりませんね。

それでは、全く似ていないようで実は少ししか違わない彼女が生きる世界へご案内いたしましょう。


  この物語の世界

 ここは広い宇宙のどこかの銀河にある大きな大きな惑星「カナリエ」です。

この世界では魔法や魔道はあたりまえ。

人でも哺乳類でも魚類でも鳥類でも爬虫類でもない地球には決していないような生命体たちもたくさんいます。

普通の人間とこういった生命体たちの共存と両社の尊重をすると共に、魔道に対するルールの作成や魔道師の訓練、魔道が絡んだ案件の対応、新技術の開発などをするための組織として魔道良というものがこの星にはあります。

魔道良は一定の距離を置いて設置されていて、その数は数十万に上るそうです。

その魔道良には二つの呼び名があります。

一つ目は出来高や成果といったいくつかの指標を用いて総合的に判断する世界への貢献度ランキングです。

数字で1から数十万程度あり、毎年度年度初めに発表されます。

魔道良の中で自分たちが所属する魔道良のランキングを上げたいという意識が高ければ、その魔道良の社員たちは積極的に働き、評価を減点させてしまうような問題行動は慎むようになるでしょう。

二つ目は地域によってつけられた名前です。

これはE201のような感じです。

どの魔道良の付近で事件や事故が起こったのか、自分たちのいる魔道良から目的の魔道良までの距離はどのくらいかといったことを調べるときは地域名を使用します。

魔道良はこの二つの名前を持ち、任務の種類によって使われる名前が異なります。

魔道良にはいろいろな組織があって、たくさんの人が働いています。

魔道を主とする仕事をこなすのが魔道師職員。魔道を主とはせず一般業務のスペシャリストに当たるのが一般職員です。

学者や専門家は一般職員に当たります。

 さあ、そろそろこのお話の主人公のことを話しましょう。

あっ、言っているそばから今日も疲労困憊という顔で出勤してきましたよ。

「おはようございます。」

彼女の名前は「木漏れ日雫(こもれびしずく)」。

28歳の女性です。

誕生日は1月17日で地球にもいそうなばりばりのキャリアウーマンです。

彼女を一言で例えるなら「星」でしょうか。

雫は魔道師職員として魔道良で働いています。

その卓越したリーダーシップや仕事の勤勉さ、冷静な判断能力、なにより高い魔力を高評価され、28歳という若さで一つのグループのグループリーダーになりました。

グループリーダーになったのは22歳のころなのでかれこれ雫がリーダーをつとめるこのグループも6年目になりました。

雫が統括するのは魔道師のグループです。

正式名は魔道良2205室第37グループです。

仕事内容はさまざまですよ。

一般的に魔道良に所属する魔道師のグループは、グループメイトの魔道に対する得意不得意や性格、グループ内のワークライフバランスの考え方を考慮して仕事内容が決められます。

そんな中、雫のグループは幸か不幸かものすごく重宝されています。

奇数月は警察のような仕事をして、偶数月はイベントの警備や国賓の人の護衛、研究のためのフィールドワークなどに向かいます。

奇数月に行う警察官のような任務は対策室からの出動命令に従い、偶数月に行う任務は任務の割り振りを決める部署から降りてきた仕事を、スケジュール調整してこなしていくという感じです。

警察のような仕事をする月をポリス月間というのですが、勤務時間中、いつ呼び出されるか分からないため、グループメイトたちは基本的に魔道良の敷地内にいて、出動命令が出たら速やかに任務を行います。

もしその日何もなければ、平和かつ暇な1日が過ぎていきます。

もちろんその時間の間にオフィスでデスクワークをしたり、勉強をしたり、魔道の訓練をすればいいのですが、時間が読めないというのは非常にストレスに感じるものです。

さまざまな仕事をこなす偶数月のことをノーマル月間と言います。

ノーマル月間のスケジュールはおおむね1か月前には決まっているので、美容室の予約もできますし、健康診断にも行けます。

有休をとって数日の連休を作ることも可能です。

もっとも連休なんてとれないほどに忙しいのですが・・・。

 では次に、雫が引っ張るグループについて少しお教えしましょう。

雫がリーダーをつとめるグループの人数は雫を含めた10人です。

まずはご存じ雫について。

このグループのグループリーダーで今は28歳、とにかく仕事がだいたい人並み以上にできるキャリアウーマンです。

グループリーダー以外にも15個ぐらい肩書を持っていて、名刺入れには16種類程度の名刺が入っています。

いろいろと生い立ちのややこしい過去を持っていて、グループでの活動もペアワークも1人の単独行動も一通り経験があります。

学者肌と魔道師としての現場での顔、一般業務などの事務仕事や細かな会計簿などをつけるといったOLの顔も持ち合わせています。

そのおかげで、いろいろな立場の人のことが分かるので、重宝されていて、いろいろな部署から高い評価を得ています。

頑張る一方でその分疲れもたまりますが、本人が言うには「こうやって日々あちこちから高い評価を得られるように頑張っておけば、こちらがわがままを言ったときに通りやすい。」そうです。

任務で緊迫した空気にならなければ、温厚で穏やかで明るく、どんな年齢の人とも一通りのコミュニケーションは取れます。

雫のグループルームには10人一人一人に大きな机が準備されていて上から見ると菱形になるように配置されています。

雫の席は窓に一番近いところです。

そこから両サイドにひらけていって、出入り口に近いところが下の端といった感じです。

菱形の席にすると全員の顔を全員が見やすいということでこうなりました。

扉から窓のところに五つのしきを横切ることになります。

菱形の中の空間にはいつもふかふかのマットが敷いてあって、枕は常に置かれています。

季節によってタオルケット、毛布、掛け布団が変わるそうです。

疲れたグループメイトが横になっていることがよくあります。

 ではこの菱形の席順に沿ってグループメイトたちを説明しましょう。

上からこの菱形を見て一番上の頂点にいるのが雫です。

時計回りに10個の机を思い浮かべてくださいね。

時計回りにいきましょう。

雫の一つ右隣に座るのが、「チコチコリータ」です。

「おはよう雫。」

「おはようチコ。」

グループルームに入って、自分の席に雫が着くと、雫の後ろでチコがぴょんぴょん飛んでいます。

チコは生命魔法がとても上手な魔道師で年齢は確か二十歳です。

ふわーとした綿毛のような雰囲気がいっぱいで、グループの中では一番ピュアかもしれません。

今日の服装は白いワンピースにたくさんのギャザーやフリルが付いたものを纏って、靴は真っ白な5cmヒールです。

つま先の部分に金色の文字で何かが書かれています。

タンポポの綿毛のような、白い雲のようなふわふわとした白い長髪は、今日はおろして、顔にかからないようにカチューシャでとめていました。

「ねえねえ昨日雫が私に出したプリント書くの難しいよー。」

「えっと、どこが?」

「ここ。」

チコがパソコンのモニターを指差します。

「私がチコのところに行くのね。」

雫が席を立ってチコの指のところを見ます。

「漢字分かんない。」

「辞書で調べなさい。」

雫が語尾を上げて微笑むとチコがむうっと膨れました。

「分かんないから聞いてるのにー。」

「自分で調べないと勉強にならないわよ。」

「ふん、いいもんスマスに聞くモーン。」

チコが走っていったのはチコの隣に座るスマスです。

「スマススマス、この漢字教えて。」

「さっき雫に自分で調べろって言われただろう。」

「スマスのけち。」

「君のためだよ。」

ぷんぷん怒るチコを宥めながら微笑みを浮かべて紅茶を飲んでいるのが「スマスクオートマルロート」です。

うちのグループではもっとも年上の33歳の男性です。

緑の長髪が特徴で、かなりのイケメン。

おおらかさと安定の大人の対応でグループをサポートします。

雫が所属する魔道良2205室の中ではベストfiveに入るような風魔法のスペシャリストです

。自分が何を着たら美しく見えるかを熟知していて、今日は緑の長髪が美しく見えるコーデにしたそうです。

「おいスマス。」

スマスの隣に座るのが「レークアラバー」。

16歳の現役高校生です。

「この問題分かんねえ。」

「手伝ってって言ってるのかな。」

「そうだよ、早くしろ。」

年齢と性格が相まって元気で生意気でわんぱくな青年になりました。

右目が赤い瞳で左が青い瞳を持った青年で火と水といった2種類の対照的な分野の魔法を巧みに使いこなします。

雫のグループの中でも指折りの問題児で、もう少し丸くなれば、いろいろなことが今よりもスムーズにいくのにという青年です。

「僕がやったらレークの勉強にならないよ。」

「うるさい。」

レークが問題の冊子を机にたたきつけるとレークの隣から声がしました。

「あんたのその声と態度がうるさい。少し静かにして。」

レークの隣に座るのは「シーナマドレーヌ」。

15歳の中学3年生です。

植物魔法にたけていて、シーナの髪は綺麗なオレンジ色のお花のような色をしています。

明るくノリがいいため、つんけんしたレークやメーラとも同じようにはしゃぎながら仲良くなりました。

人当たりがいいため、グループのムードメーカーです。

「この問題私でもできるわよ。」

シーナがレークの問題集を覗き込んで、レークにウウィンクするとレークがまた舌打ちをします。

「おしゃべりするのはいいけど、手も動かさないと。」

シーナの隣に座るのが「南彩都(みなみあやと)」です。

25歳の黄色い髪が特徴的な青年です。

何かの魔法に秀でているというわけではなく、グループのピンチヒッターとしての役割を担うことが多く、広い視野で全体を見回すのが上手です。

扉に一番近いところにいるのが彩都なので、よくインターフォンの対応係になります。

「彩都の言う通りよ。ほんとにあんたたちうるさいんだから。」

彩都の隣に座るのが「メーラトリー」。

12歳の中学1年生です。

紫の髪の毛を頭頂部からの二つ分けにしています。

髪飾りを買い集めることが好きで、つけてくる髪飾りは毎日変わります。

毒魔法を専門とする魔法使いで本当に実力はあります。

ただ、昔からその高い実力から周りに甘やかされ、怒られるという経験をほとんどしていないため、なかなかに自己中心的で、強気な態度を取りがちなところが欠点です。

レークとは別の意味の問題児で、雫の手を煩わせています。

もっとも実はすごく優しくて素直で根が真面目だとグループメイトたちは分かっているので、誰もメーラにとやかく言いません。

「メーラ。」

「なに?」

「ほっぺに赤いの付いてるよ。」

「えっ!」

メーラの頬に付いたいちごジャムを指摘したのは「クシーマトリエ」です。

クシーは彩都と同じ25歳で戦闘に関連する魔法にたけています。

とても面倒見が良くシーナやメーラ、レークといった面倒くさがり屋たちの付けがクシーに回ってくるということは多々多々あります。

容量も良く、仕事はできる方なので、クシーが残業している時は、この子たちがクシーに仕事を押し付けた時ぐらいです。

「クシーすみませんが、この書類を見ていただいてもいいですか?」

「うん。」

クシーに話しかけたのはクシーの隣に座る「Mira rain(みられいん)」です。

Miraは雫の幼馴染で29歳、気候魔法のプロで事務的な仕事もさらさらとこなします。

金色の長髪が特徴で、瞳は薄茶色です。

いつも周りに敬語を使い、相手のことを慮り行動することが非常に

うまく、グループの潤滑剤の役割を担うことが多く、唯一雫を心の底から叱ることのできる存在でもあります。

今日の服はシンプルな白いワンピースの真ん中でベルトを締め、上から黒いカーディガンを羽織っています。

「雫、グループの薬剤箱のR301が切れてるよ。」

「あらほんと。」

Miraと雫の間に挟まれているのが「松葉糸奈(まつばいとな)」です。

薬剤魔法を使いこなす19歳の青年で、とても物静かで効率的な作業を好みます。

レークと非常に相性が悪くどちらかがけんかを吹っ掛ければ確実にもめます。

 さあグループメイトについて説明したところで、雫にとってもグループにとっても欠かすことのできない重要人物について説明しましょう。

「雫様。」

「なに?」

「さきほど統括局より連絡が入りました。できるだけ早く来てほしいとのことです。」

「春斗から?」

「はい。」

「そう、今から行きましょう。」

「畏まりました。」

雫が席を立ち部屋を出る後ろをついていく彼が「上手(かみて)」です。

本業は雫の秘書ですが、グループメイトたちのケアやグループ全体のスケジュール管理を行える実力の高い秘書です。

実は雫と同い年ですが、本人が敬語しか使わないため、雫より年下だと思われることが多くあります。

「失礼いたします。」

 雫がお世話になる上司はたくさんいますが、今回はその中でも特にお世話になる上司を二人紹介しましょう。

「来てもらってわるいな。」

「いいえ。」

雫の方に来る高身長で短髪の青年が雫が所属する魔道良2205室の室長「十六夜春斗(いざよいはると)」です。

室長ですが年齢は29歳で、雫との年の差は一つです。

非常に高い魔力と、感情に流されない的確な判断能力を買われて、室長になりました。

雫と春斗は昔からの付き合いで魔道師としての年数は雫の方が長いため、二人ともため口で話します。

お互い気の置けない親しい間柄です。

「雫ちゃんおはよう。」

「仄さんおはようございます。」

春斗の隣に並んで立っている茶色い髪が肩にかかった女性は「尊仄(みことほのか)」です。

魔道師ケア担当責任者で、雫を小さいころから知っています。

とても面倒見が良く、雫たちのお母さん的な存在です。

 そうそう、言い忘れそうになりました。

雫たちが住む世界の日にちのお話です。

基本的に皆さんが住んでいる世界とほとんど変わらないのですが、雫たちの世界では日にちと曜日が固定化されています。

一日が月曜日で始まり、28日が日曜日です。

29日、30日、31日は曜日に換算されず、休息日と言われています。

学校や会社がお休みになったり、公共交通機関のダイヤが祝日ダイヤになったりします。

積極的に休暇を作ることで、ストレスの解消やリラックス、購買意欲の向上を図っているそうです。

 さあ世界観も人物も照会できました。

ここから先の物語は皆様が聞いてみて感じてください。

それではまたどこかでお会いいたしましょう。

ごきげんよう。

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