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プロローグ
陽の光が差し込み、水面にキラキラと青空が覗き込む。昨夜に降った雨の雫が草木を伝い、下に小さな波紋を作る。そよ風と共に高らかな声が空を仰ぎ、青と緑が覗き込む鏡の上を軽やかに小さな体が舞う。
――子どもは風の子、元気な子。
小さな水しぶきが上がり、柔らかな髪がなびく。人々はそんな姿を見てそう呟く。しかし当の子どもは大きな瞳を瞬かせて、首を傾げた。
そこに小さな頬を撫でるように風が吹いた。子どもはその風を追うように視線を横へと向ける。その視線の先にあったここを囲う木々は、笑うようにカサカサと揺れた。
子どもは不思議そうにじっとそこを見つめる。しかしそこにはいつものように光と影が混ざり合う木々しかなく、子どもは何事もなかったかのように走っていった。
そこで笑う子どもの姿など誰にも見ることはできない。そこに風の子がいることなど、誰も知らないのだから。
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