表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/38

友達と相談する


 午前中の授業が終わって昼休み。ミリエルはクラスメイトで仲の良い少女ネネと学食で食事をともにしていた。

 ネネはほんわかとした雰囲気を纏った気の優しい少女で、友達が出来ずこのまま誰とも付き合いのないままこの学校を卒業するんじゃないかと思われたミリエルに初めて出来た同じクラスの友達だった。

 今の学年になって近くの席になって話しかけてくれた。それ以来の付き合いだ。


 貴族の通う名門校の学食は落ち着きのあるシックな装いで立派な建物だ。味も一級品。

 ミリエルは初めてこの食堂を訪れて一口食べた時はその庶民とは格の違う美味しさに驚いた物だが、今となってはすっかり口に馴染んだ味になっていた。

 王都で名を知られた一流のコックの作った食事でも、今のミリエルの気分を払拭できるものではなかった。さっきの授業のことを思い出して唸ってしまう。


「この学校の授業って難しいよー。わたし来る学校を間違えたのかもしれない」

「ううん、ミリエルちゃんは凄いよ。さっきの問題あたしも全然分からなかったのに解いちゃったもん。先生は聖少女に期待してわざと難しい問題を当ててるんじゃないかな」

「聖少女ね」


 何度聞いても慣れない言葉だと思う。親は天から力を授かって魔王を倒したほどの選ばれた勇者でもミリエル自身は特別な才能なんて何も感じたことは無かった。

 親は魔王を倒した功績が称えられて王様から今の地位と名誉と土地を授かったらしい。その結果が今のミリエルの感じている疎外感だ。

 先祖代々の由緒正しい貴族子女の多く通うこの学園において、ちっぽけな平民が紛れ込んだようなそんな雰囲気を感じていた。


「ミリエルちゃん、才能あると思うけどなあ。勉強が出来てスポーツも出来るし。あこがれちゃうよ」

「そう?」


 ネネは友達としての優しさから励ましてくれているのは分かっているが。それでもちょっと嬉しい。照れてしまう。

 ミリエルは行儀よく紅茶をすすってから訊くことにした。相談するならやはり同じ現場にいた友達がいいだろう。


「さっき授業中に不思議な声が聞こえてきたの」

「まあ素敵。それってきっと神様の声だよ。さすがは聖少女だねー」

「…………」


 前言撤回。話す相手を間違えたかもしれない。でも、他に話す相手もいないので続けることにした。


「それにしては威厳が無かったような」

『この俺の声に威厳が無いとはな。そう言われたのは始めたぞ』

「また聞こえた。誰? 姿を見せなさい!」


 ミリエルは立ち上がって周囲を見るが、魔力を使っていたずらを仕掛けている様子の生徒の姿は見られなかった。

 いきなり立ち上がって声を上げたりして周囲の生徒達から何事かと注目を集める中、声が再び聞こえてくる。


『フフフ、ご期待に添えれば良かったのだがな。あいにくと今は見せることは出来ないようだ。騒ぎを起こして構わんのならいかにようにもやりようはあるがな』

「くっ」

「どうしたの?」


 ネネが不思議そうに見上げている。周囲の生徒達も何があったのかと見つめている。ミリエルは諦めて座ることにした。


「何でもない。誰かが魔法でいたずらを仕掛けてきてるの」


 ミリエルが座ったことで周囲の人々もそれぞれに自分達のやることに戻っていった。昼休みは貴重なのだ。他人の事で無駄にする時間は無かった。

 ミリエルは考える。きっとからかわれてる。戸惑っては相手の思う壺だ。今は気にしないように食事を進めることにした。

 そんな彼女にネネがある提案をしてきた。


「魔法のトラブルなら魔法研究部の先輩に見てもらわない? 先輩、噂の聖少女に会いたがっていたし、きっと喜ぶよ」


 そう言えばネネは魔法研究部に所属していると前に聞いたことがあった。

 ミリエルはこの学校自体に馴染めない物を感じているので、まだどこのクラブにも所属していなかったが。

 ネネの提案に乗るかどうしようか迷ったが、他に訊ねる相手はいないしせっかくの友達の勧めだ。

 放課後に付き合うことにして承諾することにしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ