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リーチという武器

「リーチ!」

「早いわァ安牌ないよ」

数巡したら「ツモ!跳ねスリー」の声が聞こえてきた。

(今日も山形さんノリノリやなぁ)

山形さんは普段から楽しそうに遊んでくれるお客さんなのだが、勝っている日は輪をかけてテンションが高くなる。



リーチ


普通の麻雀においてもそれは武器だが、ここではより顕著だ。三人打ちでは一発と裏ドラの他に、1枚だけ入っている金牌に2枚のチップをつける店が多いのだが、うちは金牌を採用しない代わりに2枚ずつ入っている赤牌に祝儀をつけている。

ただし、これはリーチ取りだ。役満(と4花)を除けばよそと違ってリーチをかけないと一切チップが入ってこないルールになっている。

1チップは3000点相当。「ツモ、満貫」今宮川さんがあがり返したが、赤2枚の嵌張を曲げれないようじゃうちで勝つのは厳しかろう。


「ゆーき、俺今何本目や?」

「ちょっと待ってくださいね。えーと、これが八本目ですね」

「そんじゃ次ラス半ね」

山形さんは大概勝ってても負けてても6ないし9半荘でお帰りになる。勝っている時にもだらだらと打ち続けずに帰れるのは簡単なようでなかなか出来ることじゃない。


「メンバー入りますよろしくお願いします」

山形さんが抜けた後に打ち子として入る。

配牌から赤が3枚。こんな時は孤立している端牌のドラも 「ポン」 8順目にして配牌から微動だにしない役牌の対子も 「ポン」 必要ない。

「ちょっとゆーき、鳴かせすぎとちゃうの」

「ハハ、まぁ僕も降りてられないですよね。リーチです」

「なんと」

両面が先に埋まって嵌張が残ったが、入り目は4枚目の赤。親は混一と仮定して跳満、トイトイがつけば倍満まであるが、迷うことなくリーチだ。

「さて、即はあるかな……っと。ツモ。リー即ツモ、断幺一盃口ドラ4」

「嵌張で親に向かって行ったんかいな」

ハハ、と苦笑いしながら、宮川さんなら曲げないんでしょうねと心の中て毒づく。だからあなたは勝てないんだと。

「ん、失礼裏が2つですね。三倍満の7枚です」

この祝儀だけで4200円、軽くトップ1回分だ。

その半荘はそのままトップで終わった。もっとも、収支だけ見ればトップ3回分に相当するだろうか。宮川さんと石部さんという組み合わせは、チップを抜くことはあっても抜き返されることはほとんどないから。


「ゆーき今日も勝ったんかいな」

帰り際、宮川さんが声をかけてきた。

「ええ、まぁ」

「強いなぁ、どうやったらそんな勝てんねん」

リーチって言えばいいじゃないですか、とは言わなかった。宮川さんには宮川さんのままいてもらった方が都合がいい。

「そうですねぇ、誰よりも早く、多く聴牌して2回に1回はトップ取れれば勝てますよ」

嘘は言ってない。というか宮川さんの打ち方で勝とうと思ったらそれ以外ないのに宮川さんの牌効率には無駄が多すぎる。

そんなん無理やわぁと言って、宮川さんは帰っていった。

リーツモ赤々。親跳ねよりよっぽど現実的な2000円の勝ち方に宮川さんが気づくのはいつになるのだろうか。

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