序文 自己紹介に代えて
近年ファンタジーはハイローの区別がなされる程に隆盛をきわめ、VRMMOを取り扱った作品も珍しくなくなってきた。僕自身、一読者として楽しませてもらっているが、サァ、いざ自分が書くとなった時に人様に見せられるようなものを書けるはずもない。
じゃあお前は何なら書けるんだときかれれば僕に書けるのは等身大の人間しかなく、幸運なことに僕という人間は、もとい僕のような人間は、日常生活を書き綴っただけのものであってもそれなりに読めるものになるらしい。僕のような人間というのはつまり麻雀を生業とする者であるのだが、名だたる漫画家の皆さんが描くようなカリスマ性を持った主人公は僕の物語には登場しない。僕という人間が体験したことを虚実ないまぜに書くくらいのものであることをここに記しておこう。
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雀荘
馴染みのない人間には何のことかと思うだろうが、ようは麻雀をするための施設だ。まぁパチンコ屋みたいなものだと思って貰えばいい。俺は片田舎の雀荘でメンバーをやっている。雀荘ではスタッフや店員のことをメンバーと呼ぶのだ。
うちの店は関西圏ではメジャーな三人打ち専門店である。
レートはピン、つまり1000点100円。ここいらの店の中では高めだということは否めない。学生の街から5キロ程離れた立地。向こうには0.5の四人打ちの店があったりして、まぁ棲み分けが出来ているのだろう。
メンバーの仕事というのは大きく分けてある。打ち子と立ち番(ホール業務)だ。
どちらかだけを選ぶことも出来る。けど、打ち子をしないメンバーはほとんどいない。メンバーの醍醐味だということもあるが、時給に打ち子手当として200円増されるのがたまらなく大きい。月に二、三万は普通に変わる。
もしあなたがメンバーになりたいと思ったら、方法は簡単だ。近くの雀荘に行って「バイトしたいのですが」と言ってみればいい。大概どこの雀荘もメンバー不足で悩んでいるから喜んで受け入れてくれるだろう。
一つだけ上げるなら、大型チェーン店よりも個人経営の店の方がいいかもしれない。店長やオーナーとメンバー、客の距離感が近く、いろいろと融通もきかせやすいからだ。きっとそこには、ただの麻雀好きだった頃とは違った景色が待っている、