お弁当です
ある、商店街に1人の男が高笑いをしていた。
その男は、タキシードを着て髪をオールバックに整えた紳士風な格好だ。
「ふはははは‼︎‼︎これが、この世界の人間‼︎なんと無力で愚かなる存在か!」
男は、厨二的発言をしていた。
周りの目を気にせずにそうたとえ通りすがりの親子に
「ねぇ、お母さんあのおじさん変なこと言ってるよ。」
「見てはいけません‼︎」
と、言われていようとも。この男にはこの世界の常識が通じないのだから。そして、この男には今絶対にバレたくない秘密があったのだ。
それは、この男は道に迷い。今自分がいったいどこにいるのか全く見当も付いていないのだ。
「おのれ、やるな安達ありか‼︎この私を道に迷わせるなどと‼︎」
そう言い、男は苦し紛れにまた、高笑いをするのだった。
※※※
「ふえっくしょん!」
俺は、どこか情けないようなくしゃみをする。
誰か、俺の噂でもしているのだろうか?
俺は今日も今日とて学校生活を送っている。アンジェリカはあれから少し家に馴染んできた。俺とハミエル、詩織が学校に行っている間家で留守番をするという形を取っている。
アンジェリカを家で1人にして何かしないか心配ではあるがまぁ、仕方ないだろう。
「ありかさん?風邪ですか?」
ハミエルが俺のくしゃみをきずかって、声をかけてくる。
俺は、心配させないように、笑顔で言う。
「ああ、大丈夫だ。」
「そうですか!では、もうお昼休みですし、ご飯を食べましょう。今日はお弁当、私が作ったんですよ!」
俺達は、家事当番を日によって分けることにした。ローテーションでぐるぐる回す感じだ。ちなみに、今日はハミエルの日のようだ。
「そういえば、お前の料理なんて、食べたことなかったな。」
「そりゃ、ありかさんに料理を作ったのは初めてですからね。どうぞお召し上がりください!」
そう言いながら、ハミエルが取り出した二段弁当の中には下の段にぎっしりと梅干しが敷き詰められ上の段には沢庵がこれでもかと言わんばかりに詰め込まれていた。
「これは、俺の幻かな?よし!今日は食堂で食べよう、な?」
俺は半ば放心状態でそれだけを、絞り出すかのように言うと席をたった。
「あ!ま、待ってください。ちょっとは食べてくださいよ!!せっかく作ったのに!」
「いや!これは料理じゃねぇよ!梅干しと沢庵入れただけじゃねぇーか!せめて、米を入れろ!」
「違います!この梅干しと沢庵は故郷の天界で作った手作りをこっちの世界に持ってきたものなんです。」
何か、論点がズレたことを言われた気がしたが、食べないとハミエルは引き下がろうとしないらしい。
俺は、意を決して沢庵を箸でつかみ1口食べた。
「うん。うまい!美味しよ。これまで、食べた沢庵の中でかなりうまい方だ!」
「そりゃ、そうですよ!なんせ、大根から丹精込めて作ってますからね。」
また、何か論点のズレていることを言っているが梅干しも食べる。梅干しも文句無しで美味かったのだが、俺はもうハミエルに料理はさせないと誓ったのだった。
※※※
ありか達がそんな事をしていた間
「な、何これ〜!!!」
詩織は弁当の中身を見て悲鳴を上げていたのを2人は知らない。
そして、アンジェリカに用意されたお昼ご飯も、同じものだったのをありかが知ることは無いのはまぁ、どうでもいい話だ。
※※※
「あの、ご老体ここの住所にはどうやって行けばいいので?」
「うーん?字が小さくて読めないねぇ。それにしても、お兄さんイケメンだね。私の孫にそっくりだよ。私の孫もねかっこよくて……………」
タキシードを来た男がありかの前に来るのももう少し先のことらしい。