第三話
今回ようやく話が動きます
部活見学は意外と時間がかかるものだった、文化部だけでも24種類もあったのだ、勿論全て部活動な訳でわなく同好会等も幾つかあった。運動部も少しだけ見てみたが余り興味は沸かなかった。
数ある部活動や同好会の中でも競馬同好会は中々にパンチの聞いた同好会だった。よく同好会として通ったなと思ったが、実際に見てみるとか意外と真面目な同好会であった。詳しく話すと長いので割愛する。
時間も時間なので下校する、下駄箱で靴を履き替え外に出る
気づけば外は赤く染まっており、校舎の影が長く伸びていた。競馬同好会に少しだけ長居し過ぎたようだ。
『少しじゃねぇーよ!三時間も長居しといて馬鹿じゃねぇーのクソウタ!!!!』
馬鹿とは何だ馬鹿とは、温厚な俺でも怒るときは怒るぞ。
『逆ギレしてんじゃねぇよハゲ!お前本当にいい加減にしろよ!今朝気を付けろつったばかりだろうが‼』
久しぶり本気でシュウジに怒鳴られて少し落ち込む、、、俯き気味に歩きながら少し反省する。
『そんなに凹む事ないだろ、今回はガチでやべぇんだよ』
何か知っているのか、シュウジ。
『知っていてもお前には教えることが、、、』
どうしたんだシュウジ、急に黙って?
その瞬間気がついた、付近にに人がいない。日もだいぶお落ちてきたので辺りは薄暗い、しかし時間帯的に仕事終わりのサラリーマンや部活帰りの学生がいるはずなのに人っ子一人いないのである。
「どうなっているんだ!いくらなんでも人がいなさ過ぎる!?」
『クソが、だから早く帰れって言ったのに!』
イヤァァァァァァ!!!!
その時である、恐らくは路地の方から悲鳴が聞こえてきたのだ。
「な、誰か襲われているのか!?」
『おい!行くなソウタ、お前では絶対に相手にならん‼』
「何で分かるんだよ!それに見過ごせる状況じゃないだろ‼」
『そういう特典を持ってんだよ!転生者に体が優れているだけのお前が勝てる訳ないだろ!!!!』
シュウジが何時もの戯れ言を言い始めた、しかしそんなことで足を止める訳にもいかず路地の奥へと走りながらシュウジに聞く。
「特典?何だよそれ、何時もの妄言に付き合ってる暇は無いんだよ!」
シュウジに向かって苛立ちを込めて叩きつけるように怒鳴る。
『ああぁぁ!もういい加減にしろよ!!!!』
キィィィン!!
シュウジが叫ぶと不思議な事に自分は真っ暗な空間に移動していた。
そこは一切の光が存在せずにただただ暗闇が広がるばかりである、恐怖の余り思わず叫んでしまう。
『な、何だ此処は?』
『此処は俺様専用の世界だよ』
すると後ろからとても聞き慣れた声聞こえた。産まれた時から聞いてきた声だ、間違える筈もない。シュウジの声だ。
『よぅ相棒久しぶりだな』
『何が久しぶりだよ、そんで此処は何処なんだよ』
振り向くとそこには何処か懐かしい顔をした男がいた、短髪で背が高くかなり引き締まった体をしている。
俺は何故かは解らないが落ち着きを取り戻している事に気づく。
『だから言っただろ、俺専用の世界だって。まぁ体が無いから余り長くは使えないけどな』
シュウジの話によると此処はシュウジの転生特典と言う能力で作られたものらしい。と言うより幾つかある特典の一つなのだそうだ。
『昔言ってたあの妄言は全て本当の事だったのか』
『そうだな、まぁ殆ど使えないけどな』
シュウジの転生特典は俺の体を通して使わないと使えない物ばかりらしい。しかし幾つかは俺の体が無くても使える特典もあるそうだ、この空間もその一つなのだそうだ。
更に先程の悲鳴は転生者に襲われている人のものだと言う。って、
『こんなことしてる場合じゃないだろ!』
『安心しろよ此処は外より時間の流れを遅くしてある』
『そんなことも出来るのか、、、それより何で転生者が人を襲っているって解ったんだ?』
『んーそれは【鑑定眼】っつー特典を使ってんだよ』
『何それ』
『調べた対象の全てを知る事が出来んだよ』
『チートかよ』
『チートだよ』
今まで全く知らなかった事柄が出過ぎて頭が混乱する。すると一瞬で頭が冴える、何が起こったんだんだ?
『転生特典【鋼の肉体】の効果だよ、お前の肉体には2つの特典が入っている。【鋼の肉体】と【パーフェクトボディー】だ』
『本当に何だよそれ』
『この2つは肉体その物に付加される特典だ、【鋼の肉体】は防御力を跳ね上げあらゆる状態異常を無効化する、そして【パーフェクトボディー】はシンプルに肉体を完璧にする能力だ、身体能力や成長性、容姿を全て極上にする』
成る程、長年の謎が解けた気分だ。俺は産まれてこの方一度も病気や怪我をしたことが無い、それもコイツのせいだったのか。
『お前が持っている特典はこの2つだけ、しかもこの2つは特典の中でもかなりショボいほうだ、これだけでは絶対に転生者に勝てない』
『どうすれば良いんだ?』
シュウジはニヒルに笑って言った。
『此処で取引だ、ある条件と引き換えに転生特典を貸してやる』
『条件とは?』
一拍おいてからシュウジが返答する。
『一日体を俺に貸すこと』
意外に条件が楽で驚くが此処は元々断れる場面でもない。
『分かった、条件を飲もう』
俺が答えるとシュウジは笑みを深めた。
ここまでお読み頂きありがとうございました