元外道勇者の後日譚
最終話です。
主人公の性格がまた変化してます。
正直蛇足になった気がします。
世界再生宣言、なんて呼ばれるようになった俺の演説なんだが、本当にこっぱずかしい限りだ。
未だにあの話が出ると床を転げたくなる。
当時、何かのスイッチが入った俺は、用意していた原稿を壇上に上がった瞬間に破り去り、思いのまましゃべり始めたのだ。
馬鹿の極みである。
演説終了後、色々あり過ぎて仲間たちから弄られる事がなかったのだが、暇が出来始めたらもう、止まらなかった、うぎゃーーーーー!
まあ、俺が恥をかいた為に色々、良いも悪いも起きた。
それはもう本当に起きた。
だからそれらをある程度時系列に、国地域別に話して行こうと思う。
まずはファーラン王国からだな。
結果的に言えば滅亡しました。
あの演説の終盤でファーラン王のやらかした事をばらしちゃったから、王様がプッツンして狂乱の宴に突入しちゃったしな。
取り合えず王はレオンが取り押さえてくれて、王を助けようと動いた兵士たちはアンジェが指揮の元、解放軍が取り押さえた。
いやぁ、戦争を経験したとしないの差が大きい事大きい事。
もとは一般兵の新兵老兵だった彼らが、王を守る近衛兵を軽く押さえ込めるほどに成長してたしな。
ま、近衛は経験積む機会が少ないお飾りってのはテンプレだ。
一応やり手もいたんだが、そいつらはアンジェが担当したから問題ない、という状況だった。
そして演説が終了して騒然とした中、捕まえた王をはじめ近衛兵たちを王宮内へと連れ帰り、彼を交えてこれからどうするかを話し合った。
ファーラン王は俺を糾弾、大罪人として捕まえるよう命令を出していたが、聖女アナスタシアが認めた真実として民衆や他国に伝わった事で大罪なんてことに出来ない、と兵は動かなかった。
彼らは国に仕えているのであって、王に仕えている訳ではないからな。
動こうとしたのは近衛兵だけだが、かれらは解放軍に抑えられてて動けない、なのでハイ終了~、だった。
じゃ、どうしようか、というあたりで登場したのがリリアンヌ様だった。
ただし登場した時誰か分からなかったが。
あまりにもビフォーアフターに差があり過ぎてマジ分からなかったのだ。
ぽっちゃ、誤魔化さすのは良くないからすげぇ太ったオークスタイルが、目が離せなくなる細身で出るところはちゃんと出てるスーパー美少女に変身、そう変身と言えるぐらい変わっていたのだ。
あの魔術を解除した事により栄養過多が解消され、気絶して眠っていたこの三日の間で激ヤセ、そして美少女に開花しちゃったのだ。
流石に無理があるなぁ、これ、と思っていたのだが、後日女神と話す機会があり、聞いたところによれば前回の俺が願った報酬の余波で影響受けてこうなった、だそうな。
超ご都合主義である。
大変身しちゃったリリアンヌ様の登場で度肝を抜かれ、それはそれで本人確認で揉め、父である王が認めたのでこの場での発言権、王族としての参加を認められました。
でだ、そのリリアンヌ様が発言したのだが、ファーラン王には退位してもらって、彼女も王位継承権放棄、国家滅亡、少なくともファーランの名を消すしかない、という爆弾でした。
ダイエットしたら見た目だけじゃなく、性格まで変わってしまいましたよ、リリアンヌ様。
あ、元々そういう素養はあったんですか、そうですか。
その提案に色々なやつ、特に貴族連中が猛反発したのだが、娘からそう言われてしまって心が別方向に折れたファーラン王は承諾、はれてファーラン王国は滅亡しました。
で、その後の処理なのだが、貴族連中がこの機会にと王位を狙いはじめ、てかリリアンヌ様に手を出そうと動き出したから俺たち解放軍がそいつらを懲らしめた。
太ってた時は唯一の姫なのに近寄ろうともしなかったのに、麗しく変身したら手に入れようとか舐めてるのか、ああん?
と、外道勇者が復活しそうなぐらいに機嫌悪くなった俺は、率先して貴族たちを潰して回った、物理的、精神的、経済的に。
いやぁ、久しぶりに容赦なく動くって超気持ちいい。
もう、俺勇者じゃないから行動に制約ないしな、ひゃっほい!
演説でのこっぱずしさを吹き飛ばす意味でもはっちゃけてたら、主だった貴族連中が全滅、本当の意味でファーラン王国が滅亡してしまいました。
だって運営管理する人材がいなくなったんだもの。
流石にこの時点でやり過ぎた、と気が付いたのだが時すでに遅し、一緒になってはっちゃけたレオン、アンジェ、ユーリは揃ってアナスタシアに説教された。
普段おっとりお姉さん聖女さまを怒らせるとマジ怖かった。
その時に気が付いたのだが、俺は勇者じゃなくなってました、加護消失って意味で。
ブレイブハートもどきの加護、奮い立つ気持ちが発動しないという事で気が付けたのだ。
それにしては身体能力とかに変化を感じないなぁ、と不思議に思っていたのだが、後日女神に聞いたら前回と合わせて四年も勇者やってれば体が改造されている、と。
聞くんじゃなかった、改造人間になってた事実なんて。
真実は本当にうれしさと悲しさを同時に連れてくる劇薬です、あふん。
さておき、その滅亡寸前のこの国なのだが、まずは新しい名前でも決めましょうってことで一般公募しました。
すると圧倒的多数で出てきた国名が、再生の意味を持つリバイバルでした。
うん、別に良いんじゃないかな、彼らの国なんだし、と俺が適当に賛成したら、仲間たちとリリアンヌ様がそれで行こうと決定しました。
再生の国、民が主の国リバイバル王国、それが新しい国名です。
じゃあ、次は王様きめようぜー、って王様ゲームのノリで提案したら、満場一致で決まりました。
おほん、吾輩がリバイバル王国国王ユウジ一世であーる。
なんでやねん!
と、思わず使った事のない関西弁がでるほど急展開、と思っていたのは俺だけで、元々他のメンバーは俺に王をやらせるつもりだったようだ、何故?
俺、日本では単なるスチューデントだぞ?
などと言い訳をしようが、十九歳はこの世界では立派な大人であり、解放軍を運用した時の様々な改革に期待できるとの声。
勇者なんだから当然でしょ、勇者なんだから出来るでしょ、勇者なんだから、がいっぱい続いたので勇者ではなくなった件を告白。
これで勝てる、と思ったのもつかの間、アナスタシアが聖女として俺を勇者認定しやがりました、ついでにレオンを剣聖に。
これが噂の、残念だな、魔王(の娘)からは逃げられない、なのだろうか。
と、セレスティアの顔を見つつつまらない事を考えていたら微笑み返された、何故に?
その意味なのだが、王様決まったし、王様なんだし、王妃決めなきゃね、妻が一人と誰が言った、責任取りなさいよ、五人分。
と、アンジェ、アナスタシア、ユーリは以前に了承というか約束してたから理解できた。
が、リリアンヌ様やセレスティアまで一緒とはどういうことだ?
あれ、そういえば以前そんな事を誰かから聞いたような?
と、思ってアンジェを見たらにっこりされた。
犯人はお前だ!
と、いう事で、後日即位式と結婚式を同時に行うという前代未聞でリバイバル王国の国家初行事が行われる事となりしました。
序だからとレオンをはじめ、結婚予定だった解放軍の仲間たちも式を挙げる事になったよ。
即位式は俺だけだが全員参加してるし、結婚式には全員参加の上、複数の門出が、とか何でしょうね、と思いました。
なお、リリアンヌ様、もう敬称はいいよな、リリアンヌから聞いたけど、やっぱり前回の記憶があって、思い出した切っ掛けは激ヤセの睡眠中らしい。
んで、あの頃から好意、というか好きだったそうで、思わず悶絶しちまったよ、カムバックブレイブハート!
理由らしきものは、あの体系で好意的に接してくれる人がほとんどおらず、あったとしても哀れみとか同情とかからくる優しさだった中、俺だけが普通に接してくれたのがうれしかったのがはじまりだそうな。
まあ、何を思っても態度に出さないのが俺クオリティだもんなぁ。
あ、確かにオークはなぁ、とか思っていたけど食指が沸かないというだけで、人としては外道時代でも好ましく思っていたんだから普通に接してたのは自然だったな。
うん、まあ、あれです。
性格良し、変身して容姿大変好し(誤字にあらず)な美少女とご一緒できるなら問題ない、どころか嬉しいに決まってるので、ありがたいと素直に思っておきます。
後、セレスティアなのだが何でもあの演説で感動したそうだ、むぎゃー。
それに最後の謝罪のカッコ良さに惚れたそうだ、うぎゃー。
さ、流石十歳程度のちびっこ、神族とはいえ精神年齢は年数通りのようでした、ちょろいん!
その後無事に即位式、結婚式を終えたのだが、領地に籠っていた一部の貴族が謀反、内戦が勃発し、解放軍が鎮圧しました。
そうそう、すでに解放軍を解散宣言してもよいのだが、この国だけではなく、他国でも似たような内乱が起きているようで、まだまだ真の解放はされてない、だから解散はまだ、となってます。
そういう事が一年近く続くものだから各国が荒れに荒れまくり、これやばいって事にはなりませんでした。
なぜならば、我らが解放軍ネットワークを使って情報共有し、かつて補給拠点だった場所、そのノウハウ、その他もろもろを活用して経済を回し、物資を供給してたからだ。
文化、技術、経済の発展の元には軍事技術がある、ってのはテンプレだったようだ。
こうして各国も不穏分子があらかた一層された辺りで次は女神教の大改革だ。
これ聖女の仕事じゃん、と思ったのだが、聖女からは逃げられない、俺の妻だから、で大いに関わった。
一年経ってもほとんど進んでいなかった理由だが、汚染物質である教皇を含めた老害トップ陣が駄々をこねていたからだ。
聖女が言ったからって本当かどうか怪しいし、だって百年以上女神様の声聞いてないもん。
と、若者ぽく言い直したが、聖職者特有の言い回しだったからとても分かりにくかった。
まあ、彼らを排除する事から始めないとどうしようもないな、と判断した俺たちの取った行動は、いきなり最終兵器を投入する事だった。
女神様爆誕!
教皇たちトップ陣が揃う枢機卿会に乱入、その場で女神に出張を依頼して姿を現してもらった。
流石に彼らでも女神を目の前にして駄々をこねれなかったようで、素直にあの演説内容が真実と認めた。
認めたのだが従うかは別で、教皇たちの女神教は今まで通りの教えで行く、とか言っちゃいました。
あちゃー、と思ったのもつかの間、気が付けば教皇をはじめほとんどのトップ陣が消えました、物理的に。
し、神罰で人が塩になるってこういう事なんだぁ、というのが感想です。
唯一残った高位司祭の爺様なのだが、新しい教え、というか真実の教えは理解できたのだが、自分が信じてきた信仰心が崩れ、聖職者として生きる意義を失ったので女神教を去るそうだ。
なんと、女神教もトップ陣が全員いなくなった、という各国と似たような状況になりました、わろりん。
そういう状況だが、もうこういうのは馴れっこだったので、とりあえず教皇や枢機卿なんどの階位を制度廃止して、高位司祭だけを地域毎に配置して、魔法による遠距離通信会議でやり取りすると決定しました。
なので高位司祭を選別、とか実力者って解放軍に参加してた治療魔法兵部隊の神官たちしかいないじゃないか。
と、いう事で、参加当時は聖女様親衛とやる気だけある、という下級神官たちだったのに、今では高位司祭クラスの神聖魔法をバンバン使えるレベルアップが彼らを出世させました。
これで彼らとの繋がりはなくなるかなぁ、とちょっと寂しく思っていましたが、そうなりませんでした。
なぜなら通信魔法って魔導士が使うので、高位司祭になっても解放軍と行動を共にするようです。
うん、これでとりあえずは女神教も大丈夫かな?
と、安心して次なる問題に着手しました。
などと忙しく働いて数年の月日が流れました。
その間の大きな出来事と言ったらやっぱり出産になるのかな。
まず生まれたのが俺とアンジェの子で、未来の王である長男だ。
王位継承のシステムは生まれ順や男女に差がないように、王密院という王位継承者を監督する部門を作ったので、そこに判断させます、継承順位。
完全実力主義で行くように命じてあるし、実力と言っても能力だけではなく性格や思想にまで関わるようにしている徹底ぶり。
まあ、そんな機関の判断がどうなるか不明だが、長男にはアンジと名付けました。
これ前回の長男と同じ名前でアンジェと相談した結果決めました。
ちなみに二子の長女はユリカだ。
後、子が生まれたのはアナスタシア、ユーリ、リリアンヌの三人で、セレスティアはまだ成人を迎えていない年齢なのでそういう行為をしてない。
前回散々喰ったじゃん、と言われそうだが、もう俺は外道じゃないんだから人の道は外したくない、だから我慢する。
来年までの我慢で済むからな!
なお、三人はそれぞれ一子ずつ生まれており、それなりに行為はしてるんだけど、もう少し子供が大きくなってからと考えているようで避妊魔法を掛けて抑制してます。
アンジェとはそれしないのか?
いあ、まあ、前回の記憶があるしなぁ、いっぱい子供が欲しいのだ、アンジェとは。
何というか大家族を築きたい、と思っているのだ。
嫁が五人だからすでにそうなってるなんて言葉は聞こえなーい。
あ、レオンのところも子が生まれて次代の剣聖にするんだと、親馬鹿ぶりを発揮してるぞ。
まあ、俺とレオンの関係性を考えたら、たぶんお互いの子が結婚する事になるんだろうが、その場合は俺たちが結婚したくば俺たちを倒せ、的なのをするのかね?
勇者と剣聖相手に立ち向かうとか、無理ゲー過ぎて、俺なら諦めるな。
・・・そんな相手に挑んでアンジェと結婚したんだから、いけるよな、俺たちの子なら。
蛇足だが、アレンくんのハーレムは子沢山過ぎて、給料アップを催促されてるというオチがある。
でも、残念。
大蔵省は君自身だからそれ以上の賃上げはやりません。
だって上の給料上がると下も上げないとだし、そんな理由で給料アップしてたら制度がおかしくなるからな。
・・・いや、待てよ。
子供手当、育休などの制度は取り入れてないな。
と、いう事でおめでとうアレンくん、給料アップだ。
序に制度改革で仕事が大幅に上がって残業代も入ってウハウハだ!
人員が足りない?
そんなの優秀な解放軍所属の嫁に手伝って、じゃなく、所属させろよ。
と、ベビーラッシュにあやかって何気に内政の質も向上して、リバイバル王国はさらなる発展を遂げたのでした。
さて、これ以降の出来事になるとあまり話すことがない。
何故なら先の大戦以前にやっていた世界的な祭典が復活しただの、辺境の神族、聖獣、獣人族が落ち着いてきただの、女神がたまに遊びに来るだの細かく言ってたら限がない。
なのでもう語る事もないし、って事で締めようと思う。
俺の外道勇者として始まった異世界生活もそろそろ終わりを迎えようとしている。
様々な出会いと別れを経験出来たこの生活はとても充実したものだった。
だからこそ、今でも思う。
―――――この世界の全ての人々に幸あれ!
と。
こうして俺の物語は終わったのだが、この世界はまだまだ続くし、もしかしたら誰か別の日本人が勇者召喚されるかもな。
その時は絶対に外道にはなるなよ。
やっぱり世の中ラブアンドピースの方が良いと思うぞ。
じゃあ、そろそろ俺も終わるよ。
勇者家業をな。
グッドラック、って感じでどうかな?
なお、勇者の加護を失ってから口調が完全に若者過ぎた理由だが、俺に溜まっていた瘴気が加護消失の時の特典できれいさっぱり消えたかららしい。
本来の俺はこういう軽いノリの性格だったんだなぁ、と女神から聞いた時は思ったものだ。
お読みくださってありがとうございました。
これで最終、終わり方が何というか尻切れ感が半端ない(