なぜ僕はバンパイアになったのだろう
処女作です。
いたらぬ点は多々有りますがよろしければお付き合いください。
12月16日日曜日
3時8分大阪某図書館
急などしゃ降りのせいか、雨宿りも兼ねて、時計をチラチラ気にしている人が結構いた。
この中の多くは、雨が止まない内に出ていくのだろうが、僕は図書館自体に用があるため、雨など関係ない。
目の前にあるのは、古新聞とインターネットそして、持ち込んだ資料である。
周りからは完全に調べ物をしに来た学生にしか見えないことに満足した僕は、ほくそ笑み目の前のインターネットに集中した。
画面には数々の競技の世界記録が並んでいた。
それと手元の資料とを見比べた僕は小さく呟く。
「やっぱりもう人間じゃ無くなっちゃたか…。」
資料に書いてあるのは、自分の記録。自分で計測したため、誤差はかなりあるだろうが、それでもほとんどが、世界記録を上回っていた……。
僕はこの事態に、一つの仮定を立てた。
僕は他の生物になったのではないか。
この思考に至ったのには理由がある。
一つは身体能力の向上以外にもいくつか変化があったからだ。
大きな変化から言えば皮膚の硬質化。 これに関しては実験してみたのだが、包丁で余程強く切りつけなければ、怪我をしなかった。
流石に銃なんか持って無いため実験出来なかったが、普通よりはダメージは薄いだろう。
次に回復能力だ。これは包丁で付いた二センチ程の傷が一時間もしない内に傷跡がなくなってしまった。
更に視力、動体視力の向上これは眼鏡屋に行って簡易の視力検査をしてみたのだが余裕で2,0を越えた。伊達眼鏡を買わされたが元は取った。エアガンの発射速度程度なら楽々視認出来たし、恐らくマサイ族並みにはあるだろう。 他の小さい変化で言うなら、金属アレルギーだ。と言ってもそこまで酷くない。ほとんどの金属は大丈夫だし、出たとしてもかぶれ程度でしかない。
最後に紫外線に弱くなったようだ。と言っても、一日中閉めきって過ごさなくてはならないという訳では無いし、単に日焼けしやすくなった位のものだ。
ここまで言えば分かるだろう。
僕のなった他の生物。それは―――――
バンパイアである。
種分化、それ自体は決して珍しい事ではない。
しかし僕の場合、完全に異常だ。
生物は進化、退化する場合同じ生物の中で遺伝子異常により同じ生物でありながら、元の生物とは違う生物が出来上がる。 その出来上がった生物と元の生物が、自然環境の中で生き残った方の遺伝子が伝えられていき、その遺伝子の違いが大きくなり種分化する。
例で言えばオリンギートだ。
オリンゴと言う生物が高所に生息地を伸ばし、遺伝子異常により毛の長いものができ、それが自然界に適応した事で、オリンギートと言う生物に種分化した。要するに進化とは、トライアンドエラーの繰返しなのだ。
しかし僕は、トライアンドエラーどころかほんの数日前まで人間だった。 遺伝子異常どころか、そもそも父である森沢健はアスリートですらない。体重増加に怯える日々である。
僕はこの変化は偶然ではなく、作為的に引き起こされた物だと考えている。
根拠はいくつかあるが、他のバンパイアが居る可能性が一番に挙げられる。
先日、強姦未遂事件が起きたのだが、その時の女性の証言として、やたらと噛み付いて来た。というのがあったのだ。
僕はまだ血を求める欲求等は来ていないが、いずれ来るのではないかと思っている。
他の根拠として、このような事件が無いか目の前の古新聞で、10年位遡って探してみたのだが、類似した事件や、バンパイアでなければ出来ない事件はなかった。
この事から自然発生の可能性は低く、そのような中で2体以上のバンパイアが現れるのはあり得ないと考えている。
この図書館に来た3つの目的の内2つの目的が終わったことに安堵し、ため息をつく。
「さて、最後のメインイベント行きますか。」
口調から判る通り、僕は大阪の人ではない。
生まれも育ちも東京で、現在は都内の中高一貫校のため授業ね先取り真っ最中である。
それが何故たまの休みの日曜日に、こんな大阪くんだりまで来ているかというと、全てがあるサイトを見つけてしまったからだ。
それなら別に――取り上げられているが――家のインターネットで見れば良いのだが、そのサイトが位置情報が必要だったために近くのネットカフェという選択肢もやめた。
何故なら東京に他のバンパイアが居なかった場合その周辺に居ると教えてしまうと思ったからだ。 まぁ、ぶっちゃけ僕はこのサイトを作為的的に僕をバンパイアにした者の罠だと考えている。
実際、突然バンパイアになったのだ。それを探しているのはまず間違いないだろう。
問題は探している者が、害意があるかどうかということだ。
流石に即誘拐という訳ではないだろうが楽観視して足下すくわれるのはごめん被りたい。
血売ります。なんてふざけたサイトだが現時点では、バンパイアに繋がる情報はこれだけだ。
癪だが罠にかかってやるしかないだろう。
まぁ、そうする以前に、安全な罠か数日張る必要があるだろうが。
そうと決まればもうここに用はない。さっさと住所、電話番号控えて出るとするか。
時間を見るために携帯を見ると母からメールが届いていた。
作業に集中するために電源を切っていたのだが、それが激しくお気に召さなかったようだ
にしても、13通はやりすぎだろう。
これは確実にお説教コースだな。
「傘、買うか…。」
雨と相まって、加速的に遅くなる彼の足は、奇しくも周りの憂鬱そうなサラリーマンの姿に酷似しているのだった。
有り難うございました