Phase:6
「「出来た・・・」」
あれから(ゲーム内時間で)半月、機体の基本的なコンセプトは「汎用機」、攻撃、防御、機動性はもちろんのこと、機体や装備にはかなりの改造を施し、換装が手早く行えるように各装備は溶接するのではなくアーム同士をかみ合わせるようにして固定する等、かなりこだわって作成した。
スペックはBM型の骨組みをベースにBS型のシールドを改造したものを装備、各所の装甲は厚めの積層装甲となっており、小型ビームならば直撃でもある程度は耐えられるようになっている、武装は改造したBS型のシールドに搭載されている中型のビームライフルと、シールド内側に格納されているガンビットだ、AIを搭載することでガンビットの操作はある程度まかせっきりにも出来るし、機体や、装備の各所にはアルタイルについていた高解像度のカメラアイ(工房にてコピーしたもの)が付いており、コクピットに座った状態でも殆どの死角をなくせている、機体後部とシールドにはスラスターが搭載されているので機動力も高い。
球体にシールドが六枚付いているような見た目で、遠めにみればミニサイズのプラントのようにも見える、
固体識別のため僕の方は白とスカイブルーの塗装を、マシロ君のほうは白とスカーレッドの塗装をしてある
『ラズール様、マシロ様、本機体の名称はいかが致しましょう』
「どうしましょうか・・・」
「アイデアの元になった双子からとってジェミナスなんてのはどうかな」
「あっ、なんかいいですねそれ、タッグって感じがしますし、かっこいいです」
『では、機体名は《ジェミナス》で登録致します』
『固体名はいかがなさいますか?』
「僕のはジェミナスブルーで」
「じゃあ僕のはジェミナスレッドでお願いします」
『固体名の登録、完了致しました』
「じゃあ早速動かしてみようか」
「ですね!うわー!楽しみ!」
ちなみに機体の操作方法は僕のとマシロ君のでは結構違う、AIを搭載している(コクピット内にアルタイルやベガをセットすることで擬似的なAIのようにしている)のは同じだが、僕の方はフットペダルやレバー、コクピット内に搭載されているスイッチなどによる操作だが、マシロ君のほうはそれに加えタッチパネル兼キーボードによる操作も加わっている。(まぁ僕のほうにもタッチパネル兼キーボードは搭載されているのだが・・・)
どう違うのかと言えば、僕はAIに任せている部分は任せっぱなし(ガンビットの操作なんかがそう)なのだが、マシロ君は機体の操作を一時的にAIに任せて、タッチパネル兼キーボードによるガンビットの操作をしたり、各部のスラスターの出力を手動で調節するなど、その時々でAIと操作を入れ替えたりすることで、互いの操作の補助をしあったりしているのだ。
当然だが、マシロ君の方法だと必要な操作量や情報量が飛躍的に上昇するため、難易度も跳ね上がるのだが、マシロ君とベガはしっかりと出来ているようだ。
凄いな、これ実際のパイロットだとしたらエース級なんじゃないだろうか・・・
ちなみに僕もある程度の操作までは出来るが、マシロ君と同じレベルの操作技術は持ち合わせていない(マシロ君の機体操作の様子をコクピット内部のカメラで見せてもらったのだが手と指の速度が尋常じゃなかった、あれで操作ミスが無いのだから人間やめてるんじゃないだろうか・・・)
互いに試運転をしてみての意見なども交換しつつ、各種装備の使い方や、表示される情報などの見方などを覚えていく・・・
「マシロ君のほうはどうだった?」
「はい、大体覚えたと思います」
「よし!じゃあ実際に戦ってみようか、アルタイル、一番近くでタッグマッチが出来るところは?」
アルタイルが宙域図とともに座標を表示する
『はい、ラズール様、現在こちらの大型プラントにてタッグマッチトーナメントが予定されています』
「え!?いきなりトーナメントですか!?」
「いいんじゃないか?アルタイル、僕らとジェミナスの勝率は?」
「現状一般公開されている機体との対戦による勝率期待値は96.8%です」
「ほら、というか現状機体性能も操作技術もうちはトップクラスだと思うよ、あの双子だって動力炉の開発まではしてなかったみたいだし」
「そうなんですかね、まぁ実際戦ってみないと分からないこともあるかもしれませんし、やってみます」
「なら早速向かおう、アルタイル、会場まで跳んでくれ」
『了解致しました』
会場になっている大型プラントが港町だとすると、僕らの旧式プラントはまるで小船のような大きさだった、この大型プラントでは毎日のようにマキナティクスの大会が開かれているそうで、マキナティクスのために様々な環境が整えられている、僕らの出場する大会はプラント内にある宇宙対戦用フィールドで行われる、大会の様子はネットワークに接続しているユーザーなら誰でも視聴することが出来るため、対戦結果を予想しての賭け事なども行われており、プラント内はかなり賑わっている。
アルタイルによると僕らが出場する予定の大会は3時間後に受付が開始されるようだ、それまでの時間が空いてしまったため、ふたりで他の大会の様子を観戦することに・・・
「どう思います?」
「まぁ大方予想通りではあるかな?」
他のプレイヤーが出場するマキナティクスの様子をみるに、どうやら他のプレイヤー達は既存の装備の組み合わせや独自に改修した装備を使っている人はいるものの、アルタイルの分析によればどのプレイヤーも動力炉の開発まではしていないようだ、まぁ普通に考えれば設計図もなしに一から動力炉の開発なんてしているヤツはそうそういないだろう、これは今回の大会は優勝も夢じゃないな。
『ラズール様そろそろ受付開始のお時間です』
「了解、マシロ君、そろそろだって、受付だけでも済ませておこう」
「はい、そうですね」
受付での登録を済ませる、大会開始はゲーム内時間で5時間後とのことだったので、一度ログアウトを挟むことに・・・、
お互いに40分ほど休憩して再度ログイン、大会までは一時間と少し、他の対戦者の試合をみつつ機体のチェックを行う、
試合会場にはすでに沢山の観戦者が観客席を賑わせている。
トーナメント表をみると参加者はA~Hブロックまで別れ、それぞれを勝ち残ったもの同士が隣のブロックの勝者と戦うようで、僕らの試合はDブロックの第3試合のようだ。
試合は長くても1時間までで、時間切れになると損傷率の高いほうが負けになるというルールらしいが、大体は撃墜か燃料切れによる負けになるようだまぁフィールドは広いけど当て逃げとかの戦法は嫌われるし、大抵は正面からぶつかるか奇襲されるからしい、解説の人は頑張ってるなぁ。
それはそうと僕らの初戦の相手はゲスヤン&ゴリゾーというらしい、名前はもうちょっとなんとかならなかったのだろうか・・・、
まぁ初めてのマキナティクスだ!気合入れていこう!