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Phase:19

 戦況は膠着していた。



 マシロ君のジェミナスやガンビットから放たれるビームは相手機体の高い機動力で回避され、相手のビームはそもそも射撃範囲に入らないように立ち回ることで回避している。


 こちらは対称的にどちらも被弾はしているがお互い装甲の暑い部分やシールドで受けることで致命的ダメージを回避しているため、損傷しているものの戦闘に支障はない。



 一瞬でも気を抜けば即座に撃墜されるであろう暗黒の戦場で、4機のマキナが自らの勝利を勝ち取るために互いに光を煌めかせて戦っている。


 4機は崩壊したプラントをはさんで2機づつに別れ、戦っていた、どちらかの1機が撃墜されれば余った1機が援護に回り、勝負は一気に傾く。



 戦況が動くとすればそれはほんの瞬きの瞬間、この戦いを見る観客の誰もが瞬きすら惜しいと食い入る様に4つの光を見つめている。


 「アルタイル!シールド損傷率は!」


 『1番シールドが86%、2番シールドが21%、3番シールドが7%です』


 「クソッ、このままだとマズい!てかあんだけ撃ってればエネルギーもつきそうなもんなんだがなッ!」


 『マシロ様のほうは変わらず回避し合っているようですね』


 「こっちが決めないとってことか・・・アレが気づかずに成功すればいいんだがなッ!」


 『サポートは万全に致しますよ』


 「マシロ君・・・ベガ・・・頼んだぞ!」



 「了解ッ!」

 『お任せ下さい』





――――――――――――――――――――――――――――――――――――





 撃ち、回避し、防ぎ、一瞬が永遠にも思えるであろう時間の中で、その檻を打ち壊したのは一条の光。


 極限の集中を強いられ続け、ほんの一瞬、その緊張の糸が切れた瞬間、


 その一瞬の隙を彼女は見逃さなかった



 「ここよッ!!!」


 

 2段式のライフルから放たれたビームはラズールの乗るジェミナスのシールドを支えるアームパーツを喰い散らす。



 相手のシールドを吹き飛ばしたと同時、苦し紛れに撃たれたであろう、恐らく全力の射撃をすんでのところで回避する。


 

 ビームは背後にあったプラントのほうへ流れ、残ったのは余力を残した自機と損傷した敵機。



 (  勝った! )


 彼女は勝利を確信した、あとは目の前の機体を出来るだけ早く撃墜し、味方の援護に行けばいいと、


 


 彼女は気がつかなかった、あの時生まれたほんの一瞬の隙、


 それこそが彼女を追い詰める罠だったことに





―――――――――――――― マシロ 視点 ―――――――――――――――




 相手は強敵だった、当たると思った自分の射撃はことごとく回避され、ほんの僅かな隙でもあれば容赦なく強力なビームが飛んでくる、


 相手の装甲は薄く、一撃当たれば撃墜とまではいかないものの相当なダメージを与えられるはずではあったが、その一撃が当たらない。


 自分も相手の攻撃を受けてはいないがこのままでは遠からぬうちにどちらかが墜ちることは間違いないだろう、


 持久戦というには苛烈すぎる戦い、おじさんの作戦を成功させるにはまさに針の穴に糸を通すが如き操作が必要になる、互いの息をぴったり合わせ、相手に悟られずに目的を遂行せねばならない。


 そしてチャンスは一度、失敗すれば後がない。



 だが自信はあった、誰にも負けぬ想いがあった、必ずやってみせるという強い意志があった。



 こちらの射撃が避けられることは織り込み済みだ、


 

 だからこそそれを利用する、これまでの相手の回避パターンや狙い方、自機すら囮に使ってその場所へ誘い込む、


 決して相手に気取られぬように





 どれだけ待っただろうか、


 周囲に張り巡らせたガンビット、

 

 自機の位置、


 射線、


 相手の位置、


 回避先、



 ここで決める!



 ジェミナスに搭載された18のガンビットの全てとジェミナスのライフルによる全力の連鎖射撃、


 相手は次々に迫り来るビームを踊るように回避していくが、その行動範囲は次第に狭まっていく、


 撃ちだされるビームは光の檻となって敵を閉じ込め、ジェミナス自身の射撃が相手に迫る


 しかし、相手は檻の中でも決して諦めなかった、僅かな、ほんの僅かな檻の隙間、


 その光の監獄から全力を振り絞り脱出したのだ、


 だが、彼女もまた気がつかなかった、


 一筋の光明に見えたその僅かな道筋、


 それこそが彼女を追い込むがための策だったことに、



 「撃てーーーッ!」


 「当たれェーーーーーーーーーーッ!」



 彼女の遥か後方、プラントの向こう側、蒼きジェミナスから放たれた光の奔流が崩壊したプラントの隙間を潜り抜けて彼女の機体に喰らいついた。


 狙っていたのだ、油断を、隙を、一瞬の機会を、


 赤き迷彩の機体の薄い装甲はビームの力に耐えられずにその命を散らした。


 そして、程なく加勢した紅きジェミナスとの連携によりブルーグレーの迷彩機も撃墜される。






 初出場で初優勝という快挙を達成した謎の二人組みの登場や、

 

その機体の性能、パイロット自身の操作技術は、


観客や解説、スレの住人達を大いに賑わせた。



 後に語られる「伝説」とまでいわれたふたりのプレイヤーの活躍


 その最初の1歩はこうして記憶されたのであった。

 

 

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