魔法とは
VFGXの魔法は、ターゲットを決め、呪文を詠唱し発動する。
スキル等で魔法時間短縮と言うのがあるが、これは詠唱後の
発動時間が短縮される。
呪文の詠唱とは、魔法を使うときに決まったキーワードを唱えること。
例えば、簡単な魔法で、キーワードが、火、水、弱いであれば、
「火、水、弱い」
と唱えれば呪文が発動する。
もちろんその魔法自体を覚えてないと発動はされない。
例えばこれを覚えやすいように、
「火は、水に弱い」
と意味を持たせて唱えても、発動するようになっている。
強い魔法になると、このキーワードは、何十にも数が増えてしまう。
意味を持たせて、覚えてる人もいるが、一番一般的なのは、
ウィンドウにメモ帳を常駐させておき、詠唱は、それを読むという
方法だ。
欠点とすれば、読むのに集中して、周りが見えないという事だ。
しかし、ミズガルドは、呪文を空で覚えている。
戦闘中も、あらゆる事態を想定している為、後方から全体を見回して
いる。
そのおかげで、呪文詠唱時間を自由に変更できる。
ミミズ狩りの時を言えば、クレインがスキルが終わって、逃げれる時間が
取れるように、呪文をゆっくりと唱えていた。
グランマが気が付いたのは、この呪文を唱えるスピードが遅くなったからだ。
アタッカーと魔術師で、よく議論になるのが、速く魔法を打つ方がいいのか、
アタッカーがスキルをキッチリ使った方がいいのか、である。
攻略組は、無用な争いを避けるため、どっちでもいいとしている。
戦闘なんて、ケースバイケースであり、連携をとるには、どちらかが調整を
すれば済む事なんで。
今回はミズガルドが、調整が可能なハイスペックなプレイヤースキルを
持ってるので、ギルバルトも特にどっちでもいいと思っている。
並の魔術師だったら、例え初心者クエストと言えども、ギルバルトは、
念密な打ち合わせを行っていただろう。
当初の予定通り、難なく終わったミミズ狩りではあったが、クレインと
カルディナは、何か納得がいかない結果となってしまった。
「ギルバルトさん、お願いがあるのですが?」
グランマが言った。
「何でしょうか?」
「私をあなたのギルドに入れて貰えませんか?」
「「えっ!」」
クレインとカルディナが驚いた。
「そ、それは何故でしょう?今のままでもクレインの身内の方ですし、
我々も協力は惜しみませんが・・・。」
【てか、お祖母さんなんて年齢の人とゲームで知り合った事ないし、
どう扱っていいのかわからん・・・。】
これが、本音だった。
「当面の目的は、レベル20ですが、私の目標は、もっと先にあります。」
「というと、もっとレベルを上げたいと?」
「ええ、レベル50にしたいと思います。」
「「「!!!」」」
ギルバルト、カルディナ、ビショップの3人が驚いた。
「そ、それはまた・・・。」
さすがにレベル50になるには、リアルを犠牲にして引き籠るか、ギルドに
加入するかという事になる。
1日2時間だけONした場合、野良募集にしても、冒険に出かけるまでに、
時間がとられてしまう。
引き籠りなら、そんな時間は、大したことはないのだが、普通の人にとっては
その分、冒険時間が減ってしまう。
美味しいと言われる稼ぎ場であれば、どうしても職業分担が必要になってくる。
そのせいで、募集も職業が限定される。
そうなると更に募集時間が長くなるわけだが、人が集まらず終了なんて
日常茶飯事だ。
こういった事は、昔からMMORPGでは、当たり前の状態だった。
「一応、うちのギルドは、女性に関しては、副GMが管理してますので、
相談してから、お返事でも宜しいでしょうか?」
実際は、男性であってもベルラインを無視して入隊させれば、後で大目玉を
食らう事になるのだが、どっちがGMかわかったもんじゃない。
「はい、よろしくお願いします。」
「お、おばあ様。レベル50は、ギルドに入ったとしても直ぐにあがるもんじゃ
ないですよ?」
ビショップが言った。
「ええ。レベル20までは特別なんでしょ?クレインに聞いてます。」
「は、はあ・・・。」
「あ、そうそう。ゲームの事、千夏には秘密にしといてね。」
「えっ・・・。」
「なんだか恥ずかしいでしょ?いい年して、ね。」
「わかりました。」
まあ、バレるわけないし、例えバレても、被害はないだろうとビショップは、
考えた。
【せ、先生がうちのギルドに入ったら、たまったもんじゃないわ・・・】
カルディナは、そう考えたが、何の対策も思い浮かばなかった。
それどころか、動いた方が事態はわるくなるだろうと予想できた。
ミミズ狩りも無事に終わり、パーティーは解散され、ギルバルトは自分の
ギルドルームへと戻った。
カルディナも、ヨルムンガンドには行かず、ギルバルトについて戻ってきた。
「ベル、ちょっといいか?」
ギルバルトはベルニウム補充し隊から、戻ってきていたベルラインに声をかけた。
「何だ?」
「実はな・・・。」
「貴様は何をソワソワしてるっ!」
ギルバルトの話の途中で、ベルラインは、カルディナに声を掛けた。
「えっ・・・、いや・・・何でも・・・。お気にせずに・・・。」
「何かあったのか?」
ベルラインはギルバルトに聞いた。
「あ、ああ、実はな、カルディナの先生が、うちのギルドに入隊したいそうだ。」
「な、何の先生だ・・・。また変な奴じゃないだろうな。」
「いや・・・。クレインのお祖母さんでもある。」
「クレインちゃんの?貴様は何を習ってた?」
ベルラインは、カルディナに聞いた。
「えっと・・・、薙刀と礼儀作法を少々・・・。」
「ほう、で、カルディナは入って欲しくないと?」
「い、いえ、そんな事は無いです。」
入って欲しくないと言えば、速攻で入隊が決まりそうなので、カルディナは、
言葉を濁した。
「で、ギルバルトはどうなんだ?」
「礼儀正しい方だし、カルディナが大人しくなるなら、これほどいい事は、
ないんだが・・・。」
「だが?」
「ゲームで、年配の方と接したことないんで、対応をどうしたらいいかと・・・。」
「別に普通に年配の方に接するようにすればいいだろうに。まあいい、
私が一度会ってから決めるという事でいいか?」
「ああ、頼む。」
その後、ギルバルトは、ベルラインの要望通り、二人きりで会えるように手配した。




