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ミミズ狩りとは

ミミズ狩り。正式名称ではないが、プレイヤー達は、皆、

そう呼んでいる。

このクエストが実装されたのは、正式サービスが始まって1年位の時。

いわば初心者救済クエストと言える。

一日一回で、Lv19以下のキャラが受けることが出来る。

1週間、毎日やれば、あっという間にレベル20になれるという、

お手軽クエストである。


「おばあ様、カルディナを呼びましたので、暫くお待ち下さい。」

「カルディナさんていうのが、未菜さんなのね?」

「そうです。ゲームの中では、カルディナで通してください。」

「ええ、心得てますよ。」


それから暫くして、カルディナ達が待ち合わせ場所へやってきた。

「クレイン、一人連れてきたんだけど?」

「なっ!!ミ、ミズガルドさんっ!」

「やっほー。」

気軽に返事をするミズガルド。

「ちょ、ちょっとカルディナ。」

そう言って、クレインは、カルディナの額をがっちりキープしていた。

「い、いきなり、なんなのよ?」

「ミズガルドさんとどういう、知り合いですか?」

「うちのギルドとヨルムンガンドは、交流あるのよ。」

「そんな事は、百も承知です。でもあなたは別です。」

「ミ、ミズたん、助けて。」

「まあまあ、クレイン。その位にして。もう一人の方を紹介して下さる?」

「あっ、すみません。まさかミズガルドさんが来てくれるなんて、思っても

 みなかったんで。」

「ねえ、これよ?普通、この反応なのよ?」

ミズガルドは、カルディナを突っついた。

「紹介が遅れてすみません。こちらが私の祖母のグランマです。」

「グランマです。宜しくお願いします。」

「「そ、祖母?」」

「はい、私のおばあ様です。」

「ま、まてまてまて・・・。おばあ様って・・・先生?」

「お久しぶりね。カルディナさん。近くに居るんだったら、少しは顔を

 出しなさいね。」

「・・・。」

よくよくグランマを見てみると、その佇まいは、カルディナが知ってる先生

以外の何者でもなかった。

「も、申し訳ありません。」

カルディナは、その場に土下座した。

「い、色々、忙しくて、顔を出す暇もなく、本当に申し訳ありません。」

「ねえ、カルディナの奴どうしたの?」

ミズガルドは、個人トークではなく、小声でクレインに聞いた。

「祖母は、カルディナの薙刀の先生なんです。」

「ああ、なるほど。」

ミズガルドは、薙刀を持ってるグランマを見た。

「あんた、薙刀使わないの?」

ミズガルドは、カルディナに聞いた。

「いや、ほら。槍術士でしょ?薙刀は・・・。それに薙刀見たことないし。」

「そういや、私も初めてかも。」

ミズガルドが言った。

「先生。すみません。どうしても盾持ちをやりたくて、両手持ち武器は、

 選びませんでした。」

「全然気にしないわ。元気ならいいのよ。今度、ゆっくり遊びに来てね。」

「は、はい。必ず。」

カルディナは、土下座を辞めて、その場に立った。

「あ、私は、カルディナの友人のミズガルドと言います。」

まだ、名乗ってないのを思い出したミズガルドが自己紹介をした。

「ど、どういうことです?」

クレインが突っかかってきた。

「えっ、もしかして焼きもち?」

カルディナがちょっとニヤケながら言った。

クレインは、軽くカルディナを無視した。

「私が言うのもなんですが、カルディナは、ガチな女性なんで、ヨルムンガンド

 自体、関わらない方がいいと思います。」

クレインは、ミズガルドに助言した。

「いや、それはわかってるし。それにゲストキー渡しちゃってるからなあ。」

「なっ!」

キッとカルディナを睨むクレイン。

「どういうことですか?」

「い、いや、私に言われても・・・。」

「その件については、私の独断ね。」

「ヨルムンガンドってターヤさんが居ますよね?」

「ええ、うちの副GMよ。」

「万が一にもサポート協議会に目を付けられたらどうするんですか?」

「それに関しては、私が謝るわ。御免、とっくに目を付けられちゃった。」

「・・・。」

「ターヤはさ、なんやかんやいっても、うちの副GMだから何とでもなるん

 だけど。ルビアさんに見つかっちゃった。」

「ど、どどどど、どうするんですかっ!」

「もう、協議会も終わって、何とか無事に済んだみたいよ。クレインは、

 何も聞いてないの?」

ミズガルドが、クレインに聞いた。

「何も聞いてません。うちには副GMが居ないので、サポート協議会に加入して

 ませんし。最近は、聖騎士団に顔をだしてなかったので・・・。」

「心配させたくなくて、何も言わなかったのかもね。」

「そうですか。」

キッと再び、カルディナを睨む。

「リアルでゆっくり話しましょう。」

クレインの作り笑いの顔が、カルディナはとても怖かった。

「ちょっと、いいかしら?」

そう言って、グランマは、見た感じ魔法使いそのものの格好をしている

ミズガルドの横に立った。

「若干背筋が曲がってるわね?」

そう言って、手を添えて、ミズガルドの背筋を伸ばす。

「苦しい?」

「い、いえゲーム内なんで、特には。」

「この方がカッコいいわよ。苦しくないんだったら癖つけるといいわ。

 イメージトレーニングみたいなものだから、リアルもきっと姿勢が良くなる

 はずよ。」

「は、はあ。」

「あなたからみて、カルディナさんの姿勢はどう?」

「いつもシャキッとしてるなあと思いました。」

「でしょ?姿勢一つ変わるだけで、色々と変わってくるものよ。

 カルディナさん。ミズガルドさんとお友達なんでしょ?」

「え、ええ。」

「じゃあ定期的に姿勢を見てあげて。」

「は、はい。」

このままでは、礼儀と姿勢教室が始まってしまう勢いだったが、救世主が

現れた。

「クレイン、すまない。少し遅れてしまった。」

ビショップが合流した。

「むっ、カルディナ・・・。」

ビショップはカルディナを見つけ、何か言ってやろうと思ったが、

もう済んだことなので、飲み込んだ。

ビショップが遅れた理由は、5人の副GMに延々とお小言を頂いていたからだ。

現在、ビショップは、教会内で裏切り者扱いされている。

もちろんサーラントは、知らない事だが。

「ビショップさん、こちらが新人のグランマさんです。」

クレインが紹介した。

「どうも初めまして。ビショップです。」

「初めまして、グランマです。ビショップさんには、初めて会った気が

 しませんね。」

「私もです。」

「おばあ様、ビショップさんは、千夏さんの旦那さんです。」

「お、おばあ様っ?」

「あら、そうなの?」

「ちょ、ちょっと待て、クレイン。グランマさんは、おばあ様なのか?」

「ええ。そうです。」

「誠に申し訳ありませんっ!」

そう言って、ビショップは土下座した。

「ねえ、何かさっき見なかった?」

ミズガルドが、カルディナに小声で聞いた。

「き、気のせいよ。」

「おじい様の13回忌にも行けず、ご無沙汰しており、本当に申し訳ありません。」

カルディナの土下座より、本気度3倍増しだった。

「それは、電話でも何度も聞いてます。顔をあげなさい。千夏は元気してるの?」

「は、はい。」

「あの子も色々と忙しいでしょ。千夏もこのゲームやってるの?」

「い、いえ自分だけです。」

「あら、残念ね。あの子とも戦ってみたかったわ。」

そう言って、グランマは悪戯っぽく笑った。

「ねえ、ビショップ。あんた先生とどういう関係よ?」

カルディナが、ビショップに近づいて聞いた。

「おばあ様だ。」

「は?」

「だから、おばあ様だ。正確には千夏のおばあ様だがな。」

「???」

「だから、うちの奥さんがグランマさんの孫になる。」

「へ?」

「クレインとうちの奥さんが従姉って知らなかったのか?」

「な、なんですってええええ。」

「あれ?カルディナ。知りませんでしたっけ?」

「知らないわよ。初耳よっ!」

「カルディナは、盆正月は海外行ってましたから、入れ違いだったのかも。」

「くっ・・・。私が親について海外旅行に行ってなければ、千夏さんもこんな

 ぐうたらに引っかかる事はなかったのに・・・。」

カルディナは心底悔やんだ。

「何、その千夏って人、美人なの?」

一人蚊帳の外のミズガルドが、カルディナに聞いた。

「鮫島化粧品のCM出てる人よ。」

「あー、あの剣道の人?」

「そうよ。」

「むちゃくちゃ美人じゃないっ! えっ!!!ビショップの奥さん?」

「ま、まあ一応。」

「何で、こんな冴えない男とっ!!!」

「ちょっ、ミズガルド。俺のリアル知らないだろ。」

「知りたくないわよっ!世の中間違ってる。」

「ミズたんも、わかってくれるのね。」

「まあ、それに関しては、私も同感です。」

クレインも同意した。

「ちょっ・・・クレインまで・・・。」

「まだまだ、皆若いのね。3人ともこういう旦那さんを見つけなさい。」

「私より弱い男に興味ありません。」

クレインが言った。

「頼りがいがない男は、パスかなあ。」

ミズガルドが言った。

「そもそも男はパスっ!」

最後にカルディナがズバッと言った。

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