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サイド:短剣と探検

子供の頃から体が弱く、外へ出て遊ぶことが無かった。

夏になると周りの友達たちは蝉取りに出かけたり、

カブトムシやクワガタを採ったりしていた。

しかし、体が弱いサトシには、一緒に行く事も出来なかった。

幸い、デスクワークは、問題なく出来るため、大学を

卒業し、無事に就職する事ができた。

体が弱いのは、大人になってからも変わることはなく、

体を使って、遊ぶような事は一切できなかった。


そんなサトシがVFGXに出会ったのは、正式サービスが始まって

直ぐの頃だった。

テレビの特集で組まれていたのだが、体の不自由な人が、ゲーム内

では、自由気ままに動くごとが出来、現実で出来ない事が、可能に

なるというのを見て、購入を決めた。

会社に行って、仕事をして、家に帰って寝るだけ。

休みの日も、体に悪いので、近くを散歩するくらいの生活をしてる

為、お金には余裕があった。


テレビでは、まるで本当に違う世界があるかのように言っていたが、

サトシは、そこまでは信じてはいなかった。

テレビが大げさのは今に始まったことではない。

それでも、ゲームなりに少しでも楽しめればと、初めてログインした。


そこには、本当に違う世界があった。

いくら走っても、現実のように咳き込む事もなく。

飛んだり跳ねたりする事も出来る。

「テレビで言ってた事は、本当だったんだ。」

サトシは、VFGXに夢中になった。

武器を選ぶ基準は、素早さだった。

現実で動けない分、出来るだけ、素早く動けるように武器を選んだ。

一番、速く動けるのは、素手なのだが、さすがにプレイヤースキルに

自信がなく。ネットの情報を取り寄せて、人もそれなりにいる短剣に

決めた。

短剣を使える職は、いくつかある。代表的なのは、盗賊。

ありきたりの職業だが、盗賊人口はそれなりに多い。

サトシは、他の職業を見てみたが、一つだけ、ダジャレのような職業

があった。

それは、探検家だ。短剣と探検が掛かってるのだろうか?

とりあえず、内容をネットで検索してみたが、情報は殆どなかった。


探検家

その名の通り、短剣が装備できるらしい。なんでやねんっ!


「・・・。」

つまり、選ぶ人が少なく情報もないという事だろう。

お金は掛かるが、後からの転職も可能とあったので、サトシは、

探検家を選んだ。

探検家で、クエを進めていき、ある程度レベルも上がって来たので、

新しくスキルを取ることにした。

専門スキルが、採集と忍び足。忍び足は、盗賊や忍者にもあるスキルで

ネットの情報にもあがっていたが、採集だけは、載ってなかった。

「まあ、ここまで来たら、取ってみようか。」

サトシは、あえて採集を選んでみた。


採集

主に昆虫を採集します。


「昆虫採集かいっ!」

スキルを取得した後に出る短い説明に思わず突っ込んでしまった。

「で、どうするのこれ?」

特になんの説明もなかったので、とりあえず昆虫を探してみた。

が、採集が使える場所は何処にも無かった。

「説明くらいしてくれんのか・・・。」

結局、採集の使い方がわからないので、無視してスキル上げとレベル上げ

に専念した。

ある時、野良でこんな話を聞いた。

「知ってる?虫系の敵ってさ、煙玉を旨い事あてると気絶するらしいよ。」

「ああ、聞いた聞いた。でも当てるの難しいんだろ?」

「煙を当てないと駄目だからね、直接煙玉ぶつけても意味ないよ。」

「でもさ、気絶させても、そっから倒すだけらしいじゃん?」

「ああ、なんか意味ねえってネットに書いてあったな。」

そう、話を聞いたサトシは、さっそくネットを調べてみた。

「ふむ、弱い敵で試してみるか。」

サトシは、煙玉を購入し、一人で虫系の敵を倒しに行った。

ネットに書かれてた通り、虫系の敵に煙を吸わせるのは、物凄く難しかった。

基本、飛んでる系の敵ばかりなので。

「金がいくらあっても、足りねえ・・・。」

サトシは諦めた。


それから、しばらくした後、芋虫系の敵が出る場所をネットで見つけた。

さっそく、行ってみたが、煙が効かなかった。

「どういうこと?」

今度は、弱らせて、煙玉を使用してみた。

すると、芋虫は気絶した。

さっそくスキルを確認してみると。

「おっ!採集が使用できるっ!」

ついにサトシは、採集のスキルを実行する事が出来た。

実行すると、サトシの前に注射器セットが出てきた。

「何これ・・・。」

文房具店に売ってるのと同じ注射器セット。

薬品も丁寧に赤と緑が付いていた。

サトシは、子供の頃から、外で遊んだことが無い。

だから昆虫採集なんて、やったことがなかった。

「とりあえず緑の液体を打ち込んでみるか。」

サトシは、芋虫に緑の液体を打ち込んだ。

芋虫は起き上がった。

ベシっ!

サトシは、ダメージを受けた。

「くっ・・・。」

サトシは、もう一度煙玉を投げた。

芋虫は、再び気絶した。

「今度は、赤を。」

赤い液体を注射すると、芋虫がアイテムに変わった。


芋虫の死体


「よし、赤いのを打てばいいんだな。緑は復活薬なのか。」

とりあえず、煙玉を全部使って、芋虫の死体を大量に獲得した。


次の日、サトシがONしてみると、芋虫の死体が、全て腐った死骸に

変わっていた。


腐った死骸

捨てるしかない価値が無い物


「なんじゃこりゃっ・・・。」

煙玉200ゴールドを10個使用したので、しめて2000ゴールドの

損失だった。

とりあえず、サトシは昆虫採集で、検索してみた。

すると、緑の液体は、防腐剤であることがわかった。

「ゲームの情報じゃあないけど、多分、これだろ。」

再び芋虫にチャレンジ。

芋虫の死体を手に入れ、今度は、緑の液体を打ち込んでみた。


ただの死骸

捨てるしかない価値が無い物


「あれ?」

何が失敗したのか、わからなかったので、もう一度チャレンジしてみた。


防腐された芋虫の死体

防腐された死体は、標本にする事が出来ます。


「おおーっ!打つ場所重要なんだな・・・。」

先ほどとは、打つ場所を変えてみたところ成功した。

「しかし、標本ってなんだ・・・。」

サトシは、更なる壁にぶち当たった。

採集は、これ以上の事は出来ないし、標本に使えるようなアイテムも

お店には売ってない。

「という事は、スキルかあ。」

サトシは、再びレベル上げとスキル上げに勤しんだ。

本当は、武器のナイフにスキルを振りたかったサトシだが、ナイフ分は、

ナイフで稼いだ専用スキルポイントだけで我慢した。

採集には、振れども何の変化もなかった。

たまに野良で、

「ナイフの技少なくないです?」

と聞かれることがあった。

「すみまえせん。探検家なんで・・・。」

「ああ、ネタ職の方でしたが、頑張って。」

と、励まされるのは、まだいい方だった。

そんな、苦労もあいまって、採集にスキルを振り続けた結果、ようやく

新たなスキルが表示された。


標本

標本にする事が出来ます。


さっそく防腐された芋虫の死体を倉庫から取り出した。

すると標本が使えるようになったので、使ってみた。

綺麗な標本箱に入れられた標本された芋虫になった。

スキル取りで苦労した分、どうやら、材料等は、要らないようで。

「せっかくの標本箱なのに、芋虫って・・・。」

どう見ても不恰好だった。

「しかし、問題は芋虫以外だよなあ。飛んでる奴どうしよう。」

新たな壁がサトシに待ち受けていた。

悩んでてもしょうがないので、サトシは、レベル上げに勤しんだ。

標本にスキルを振り、技の為、ナイフにも少し回した。

ギルドに入ってなかったので、Lv上限解放クエとかは非常に苦労した。

普通のレベル上げ等だと、職業差別は、少ないのだが、クエストとなると

話は別だった。

他の人の募集に乗ることは出来なかったので、サトシは仕方なく野良で、

募集に立った。

「ナイフ使い レベル35解放 支援お願いします。」

と野良に立ち続ける事、一週間。

なんとか猛者が集まってくれて、無事、レベル35を解放する事が出来た。

これでレベル40まで上げる事が出来る。

その猛者たちに聞くことが出来たのだが、虫系は、急所に攻撃が当たると

気絶する事があるらしいと。

さっそく、サトシは、バタフライ系に挑んだ。

蝶のように舞いというのは、よく言ったもので、そもそも攻撃が当たらない。

スキルを使えば当たるが、攻撃力がそこそこあるので、一撃で倒してしまう。

気絶させるには、ナイフでなく、殴る必要があるようなのだが。

こればっかりに掛かってるわけにはいかないので、レベル上げの合間に

来る日も来る日も、挑戦し続けた。

その甲斐、あって、蝶系どころか、トンボ系まで標本にする事が出来た。

大満足のサトシだったが、ふと思う所があった。

「あれ?俺、このゲームで何してんだ?」

疑問を持ちつつ、レベル40の解放が終わった頃、陰鬱な森という場所が

実装された。

どうやら、殆どの敵が虫系らしい。

サトシは燃えた。

しかし、一匹も気絶させる事なく、毎日死を繰り返した。

「てか、速すぎて無理じゃね?」

ネットでは、ソロで抜けれるなんて情報もチラホラあったが、サトシは、

単なる都市伝説だろと思っていた。

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