バレた
「今日来れば?」
ミズガルドは、個人トークで、カルディナに話しかけた。
「怖い人は?」
「もう落ちたから大丈夫よ。」
「んじゃ、行く、行く~♪」
まったく懲りてなかった。
「あのターヤさんって怖すぎでしょ?」
「そうでもないわよ。」
「あんた怯えてたじゃん。」
「昔ね、教会との交渉に私が出向いて、取引が無事始まった
んだけどね。その時のやり取りが、ターヤにばれてさあ・・・。」
「めっちゃ怒られたとか?」
「2時間説教食らったわ。説教で強制落ちよ・・・。」
「・・・。」
「で、疲れて寝ようとしたら、スマホに電話掛かってきて、更に
1時間の説教よ。」
「ひいいいいいっ。」
「いいわね、聖騎士団は。怖そうな人居ないでしょ?」
「何言ってんのよ。女性だけでしょ?ここ。パラダイスじゃない。」
「女だけってのは、遠慮が無いから、キツイもんよ・・・。」
「贅沢なっ!」
「じゃあ、いつも来ればいいじゃない?ターヤ居るけど。」
「それは・・・遠慮します・・・。」
「こんにちわ、ミズガルドさん。ターヤは、もう落ちたからしら?」
「え、ええ、今日はもう、落ちてONしないと思うわ。」
眠れぬ教会の副GMルビアがヨルムンガンドのギルドルームを訪れた。
「協議会の事で話があったんだけど、またにします。あら、そちらは、
新人さんって訳じゃあ、なさそうね。魔術師には見えないし。」
「わ、私の知り合いだから。」
「そうですか。」
ジーッとカルディナの瞳を見つめるルビア。
カルディナは、直ぐに感じ取った。
ああ、この人も歴戦の主婦だと。
「初めまして、眠れぬ教会の副GMやってますルビアと言います。」
「は、初めまして、カルディナです。」
「ギルドには、入ってないんですか?」
「は、はい。」
「そう。」
軽く挨拶も終わり、ルビアが去ろうとした時、新たな人間が、
ヨルムンガンドのギルドルームに入ってきた。
「こんばんは、ミズガルドさん。あっ、ルビアさんもこんばんわ。」
「「こんばんわ。」」
聖騎士団の女性団員である。
「あっ、カルディナさん。またこんな所へ。団長にバレたら、怒られ
ますよ。」
カルディナを見つけ、そう話してきた。
「あら、このカルディナさんは、聖騎士団の方なの?」
「ええ、そうですよ。」
「新人さんかしら?私は、聖騎士団のギルメンなら全員知ってるつもり
だったんだけど?」
聖騎士団と眠れぬ教会は、同盟ギルドである。
副GMで、あれば、相手のメンバー全員を知っていてもおかしくはない。
「いえ、ベルさんの次に古株ですよ。」
「へえ、そうなのね。」
薄ら笑いを浮かべるルビア。
「少し、お話をしてもいいかしら?」
「ルビアさん。ここは、ヨルムンガンドで、カルディナは、GMである私の
友人よ。弁えてもらえるかしら?」
「それは、失礼しました。ひとまずはミズガルドさんの顔を立てて、私は
退散しますわ。」
そう言って、ルビアは、大人しく帰って行った。
「こ、こわっ!」
カルディナが、言った。
「あれが、ターヤが言ってた怖いお姉さんよ。あんた気を付けた方が
いいわよ。」
「ギルドばれたから、ベル様に迷惑かかっちゃうかな?」
「それは、大丈夫よ。彼女もベルサラだから、ベルさんに何か言えるわけ
ないでしょ。まあGMの方には、何か言っていくかもだけど。」
「ああ、団長ならいいや。」
「何がいいのかしら?」
まさかのターヤが、ONしてきた。
「あなたっ!今日はONしないって言ってたでしょっ!」
ミズガルドが逆切れした。
「あら?時間が出来たから、少しONしただけだけど。それがあなたに
咎められる事なの?」
あっさり、言い負かされるミズガルド。
「やっぱり、来てたのね。カルディナさん。」
「す、すみません。お邪魔してます・・・。」
「ゲストキー渡してるから、そんな事じゃないかと。」
ゲストキーは、ギルドの大きさによって、数に限りがある。
副GMであれば、ゲストキーを渡した名簿が見れる仕組みになっている。
「くっ・・・。」
まさか、バレてるとは思わなかったミズガルド。
「来週には協議会が開かれるのよ?運悪くルビアさんに出会ったらどうする
つもり?」
ターヤは、ミズガルドに強く言った。
「ハハハハハ・・・。さっき会っちゃった・・・。」
「なっ・・・。ギルドはバレてないでしょうね?」
「それが・・・、ばっちりと・・・・。」
「あなた、ギルドを名乗ったの?」
ターヤは、カルディナに聞いた。
「偶然、うちのギルメンが来て、ばれちゃいました。」
素直に答えるカルディナ。
「はあ・・・、最悪の事態ね。今は、ギルバルトさんはONしてるかしら?」
カルディナは、ギルメンリストを確認した。
「ONしてます。」
「そう、今から伺うから、アポ取ってくれる?」
「私も行った方がいいかな?」
ミズガルドが聞いた。
「あなたは、お留守番よ。」
「ちぇっ・・・。」
聖騎士団に行けば、ベルラインに会えるかもと淡い期待を持ってたのだが。
「あのー、今から時間大丈夫かな?」
いつもの如く、いきなり個人トークでカルディナが話しかけてきた。
ただ、いつもより、口調が柔らかい感じがした。
「今、ギルドルームだが、お前は何処にいる?」
「ヨルムンガンドのギルドルームに・・・。」
「なっ!!! 何してんだお前はっ!」
「それでさ、ターヤさんが今から会いたいそうで。」
「・・・。」
ギルバルトは死刑宣告を受けたような気分になった。
「な、何をした・・・。」
「私は、何もしてないよ?本当に・・・。」
「とりあえずギルドルームに居ると伝えてくれ。」
「りょ、了解。」
「どうかしたのか?ギルバルト。」
聖騎士団のギルドルームで、ギルバルトにベルラインが話しかけた。
「今から、ヨルムンガンドのターヤが来るそうだ。」
「タ、ターヤさんが・・・。」
「何故か知らんが、カルディナが、ヨルムンガンドのギルドルームに
いるらしい。」
「・・・。」
「最悪の事態だな。ついにカルディナの存在が協議会の会長にバレて
しまった。」
「しかし、ターヤさんなら、まだ大丈夫だと思うぞ。」
「そうか?」
「サーラント至上主義の協議会副会長より、話は通じるはずだ。」
「確かにな。まだマシというべきか。」
「私も同席する。」
「すまん、助かる。」
既に、協議会副会長ルビアと出会ってるとは、思いもしなかった
ベルラインとギルバルトだった。




