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いつもの居酒屋で

「先輩って運営に目をつけられてます?」

いつもの居酒屋で、常磐が言った。

「いやあ、そんな事はないと思うが・・・。

 大将、ビールとコーラおかわりね。」

時野は自分のビールと常磐のコーラを注文した。

「珍しいですよね?先輩が僕の奢りを受け入れるなんて?」

「そうだっけ?」

「そうですよ。一回も僕が払った事はないですよ?」

「前は、上司だったけど、今は無職だからなあ。」

「最後の方って僕の方が給料よくなかったです?」

「まあなあ。役職は、給料50%カットとかザラだったからなあ。」

「周りが潰れて行く中、結構頑張ってましたよね?」

「急成長で、一応一部上場したからなあ。」

「仕事も凄く減ったって感じも無かったですよ?」

「まあ、あれだ。2代目が暴走しちゃったからなあ。」

「そういや先輩、2代目には嫌われてましたよね。」

「そうかあ?それなりに旨くやれてたとは思うんだが。」

「先輩が2代目の愛人候補辞めらすからですよ。」

「へ?」

「先輩のせいで辞めた女性の中に2代目が狙ってた娘が

 居たの知らないんですか?」

「なにそれ?初耳なんだが・・・。」

「僕が入る前だと思うんで、噂で聞いただけですけど。」

「そもそも、俺のせいで辞めた女性は居ないぞ?」

「へー・・・。」

白々しい目で常磐は、時野を見た。

「なんだ、その目は・・・。」


未だかつて時野は女性を口説いた事がない。

結婚した時でさえ、理由は子供が出来たからだ。

基本的というかポリシーというか、時野は女性に嘘はつかない。

新人を時野が教えると8割の新人女性が時野に惚れるという。

速攻で、新人担当を外される目にもあっている。

男女問わず、部下には優しい&頼れる上司を実践しており、

リアル耕作とも言われていた。


2代目に狙われた女性の辞めた真相はこうだ。

あまりにも2代目の執拗な誘いに困り果てた女性は、時野に相談した。

時野は、即座に2代目に釘を刺した。

当時、専務だった2代目に、

「これ以上、彼女につきまとうなら、社長に報告します。」

と。

初代の元で、会社の為に尽くしてきた時野は、それなりに発言力があった。

2代目は、渋々、彼女を諦めた。

ここまでなら、ただの美談で終わっていたし、2代目も時野をそこまで、

嫌う事はなかっただろう。


問題は、その後だった。

男女関係の摂理なのか、定石なのか、当然、彼女は時野に惚れてしまった。

当時、時野には妻子が居た。

彼女は、何とか時野と結ばれたいと願ったが、成就する事は無かった。

それでも時野は、優しい&頼れる上司であった為、これ以上会社に

居る事が苦痛となってしまった。

彼女は、退職願を会社に提出し、最後に時野にお願いした。

「私の最後のお願いです。一晩だけ、私と付き合って下さい。」

泣きながら懇願する彼女の願いを、時野はあっさり受け入れた。

時野は、まったく浮気をしないというタイプではない。

自分に妻子があるのは、最初に相手には伝える。

その上で、後腐れがないような女性の願いは、受けいるという

半外道の行為を平然としていた。

(但し、本人には全く悪気がない。)


で、運悪く彼女とホテルから出て行く所を、やけ酒で朝帰りしてる2代目に

目撃されてしまった。

当時、課長補佐だった時野は、見事、主任への降格を果たしたのであった。


「大将、ビールおかわり。」

常磐のコーラは、半分残っており、時野は自分のだけを注文した。

「先輩、酔わない癖に飲んで美味しいんですか?」

「俺だって酔うフリというか、酔った感じで愚痴は言うだろ。」

「フリだったんですか・・・。まあ散々愚痴垂れて、飲み屋出たら、

 平然としてますよね。」

「女性の話を聞く時に酔ってたら失礼だろ?」

「意味がわかりません。」

「そういやあ聞いてなかったけど、何の会社で働いてるんだ?」

「ゲーム会社ですよ。」

「えっ・・・。なんでまた?お前なら、色んな会社がほっとかないと

 思うんだが。」

「ゲームは趣味だけと思ってたんですけどね。たまたま募集あって、

 興味本位で受けてみたら、あっさり受かっちゃったんで。」

「くっ・・・。うらやましくないっ」

「なんで、泣きそうなんですか・・・。」

「何のゲーム作ってるんだ?」

「ガンフィールドっていうゲームなんですけどね。先輩は知らないかと。」

「うーん、どっかで聞いたような・・・。」

「それより、先輩。コンパの件、考えてくれました?」

「マジで言ってたのか?アレ?」

「冗談でコンパなんて誘いませんよ。」

「4対3でいいんじゃね?」

常磐は、友人が主催するコンパに誘われていた。

4対4でやるはずが、1名の欠員が出てしまった。

幹事である友人は色々手を尽くしたが、その日は誰も捕まらなかった。

常磐の先輩が、無職でいつも暇してるというのを聞いた友人が、

常磐に頼んだのだった。

「こういうのは、4人揃えるのが常識なんです。

 女性側が1名減るのは許されますけどね。」

「後で、文句言うなよ?何故か昔から俺がコンパ行くと後から苦情が

 絶えないんだ。」

「そのうち、誘われなくなるんでしょ?」

「くっ・・・。」

「41歳無職のおっさんに、女性が興味持つとも思えませんしね。

 たまにはネタ要員ってのもいいんじゃないですか?」

「まあいいだろう。」

「それに職業は、適当でもいいですよ?」

「俺は、女性に嘘はつかないっ!」

「・・・。じゃあネタ要員お願いします。相手は看護士さんなんで、

 旨く行けば、ヒモ生活も夢じゃないかもですね。」

「看護士っ!」

「テンションあがりました?」

「少しだけな。」

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