ゲーム過去編「ミルミルのスキル上げ」
「すいません、団長。ちょっといいですか?」
ある日、体験入団中のミルミルは、ギルバルトに声を掛けた。
「な、なんだっ?」
頭の中で、どんな仕打ちを受けているのかが気が気でない
ギルバルトは、身構えながら聞いた。
「メイスのスキル上げに連れてってくれませんか?」
「ベルはどうした?」
「他の方の手伝いに行っておられます。」
「そうか、ちょっと待ってろ。」
「はい。」
そうして、ギルバルトは、個人トークでカルディナと、
話し出した。
「カルディナか?出番だぞ。」
「ごめん無理。」
「ちょっ・・・。」
「リアカノがさ、VFGX始めちゃって、暫くは付きっきりなのよ。
今度紹介するね。じゃーねー。」
と一方的に、個人トークを切られてしまった。
【カ、カルディナあああああああああああああああああ】
心の中で悲痛な叫びをあげるギルバルト。
【そもそも俺は、どうして一番信頼出来ない奴に頼ろうとしてたんだ。
おっと、それよりスキル上げか・・・。】
とりあえず、ギルバルトは、教会に僧侶の派遣を依頼した。
「ミルミル、最初の洞窟で待ち合わせしてるから行くぞ。」
「はいっ!もしかしてシンゲンさんですかっ!」
目を輝かせながら聞いてくる。
「お前は、スキル上げをしたいんじゃないのか・・・。」
「そ、そうですけど。」
「呼んであるのは僧侶だ。アタッカーやらないとメイスのスキル上げに
ならんだろ。」
「そ、そうでした。」
【とりあえず、教会に男キャラが居ないので助かった。
初心者僧侶と依頼には書いてあるから、中級者以上の人間がきてくれる
だろう。】
ギルバルト的には、女同士で話しでもしてもらって、自分は壁に徹しようと
そういう腹積もりだった。
余計な気は使いたくないという。
「おまたせしましたの。」
まさかの教会トップが登場した。
ギルバルトは、顔から地面に倒れた。
リアルであれば、確実に鼻が折れてたところだ。
「あなたがミルミルさんですか?私はサーラントと申します。」
ニッコリと笑顔で挨拶するサーラント。
「は、初めまして、ミルミルです。」
【なんて綺麗な・・・太陽のように輝いてる・・・。】
ミルミルは、唖然とした。
「何故、わざわざサーラントが来る。」
うつぶせに倒れたまま、ギルバルトが聞いた。
酷く滑稽な格好だ。
「僧侶の新人さんと聞きましたので、是非お会いしたく。」
【そ、そこまで、考えつかなかった・・・】
己の浅はかな思慮に、ギルバルトは呆れてしまった。
「す、すいません。私、色んな方に教会へ行った方がいいって言われて
たんですけど。」
畏まって言うミルミル。
「いえ、聖騎士団でしたら、僧侶が不遇を受ける事はありませんの。
それに、何か判らないことがあれば、いつでも教会に来てください。
ゲストキーを渡しておきますね。」
そういって、あっさりとギルドルームのゲストキーを渡した。
「あ、ありがとうございます。」
「とりあえず、俺が敵を引き付けるから、ミルミルがメイスで敵を
倒してくれ。」
「はいっ。」
「それと、ミルミル。余裕があったらサーラントの動きを見るといい。」
「はいっ。」
スキル上げは、スキルを使用しないとスキルレベルが上がらない。
レベルアップで獲得できるスキルポイントは、全てのスキルに
振ることが出来る。
しかしスキルLvで手に入るスキルポイントは専用スキルポイントであり、
そのスキルにしか振ることが出来ない。
大概の場合、武器スキルを振るには武器のスキルLvを上げるのが一般的に
なっている。
ミルミルも僧侶の端くれなので、回復の手順はわかっている。
壁役がダメージを負ったら回復という基本を。
しかし、サーラントの場合は、先読みがありえないくらい正確で、
ミルミルが攻撃を忘れる程だった。
【こ、これが、教会のトップ・・・。】
「どうした、ミルミル。スキルレベルをあげるんじゃないのか?」
ギルバルトに声を掛けられ、我に返って、攻撃を開始した。
結局この日は、1時間近くもスキル上げに付き合ってもらった。
サーラントは、回復や補助の事を、惜しげもなくミルミルに教えてくれた。
「わざわざ、サーラントが来る事じゃ、なかったんだがな。」
「とんでもありまえせんの。とても有意義でしたわ。」
「今日はありがとうございました。」
ミルミルは、丁寧におじきした。
「ミルミルさん、メイスも僧侶も頑張ってくださいね。」
「はいっ。」
サーラントと別れた後、ミルミルは、ギルバルトに聞いた。
「太陽のように優しい方ですよね?」
「・・・。」
【昔は、氷のようだったがな・・・。】
「太陽のプリエステスって呼ばれてるんでしたっけ?」
「・・・。」
【昔は、氷の女王ってよばれてたがな・・・。】
「団長ってやっぱり、女性嫌いなんですか?」
「どうして、そうなるっ!」
「だって、あんなに素敵な人なのに、そっけないじゃないですか?」
「別にいいんだよ。昔からの仲間だし。」
「やっぱり、シンゲンさんの事が?」
「どうして、シンゲンが出てくるっ・・・。」
「素敵な人だったなあ。サーラントさん。」
「別に教会に行きたいなら行っても構わんぞ。」
「いえ、出来れば聖騎士団にお世話になりたいです。」
「そうか、じゃあ、今日から正式に団員だな。」
「いいんですか?」
「ああ。」
カルディナが、投げ出した時点で、ギルバルトは諦めていた。
それに教会に行ったとしても、よくよく考えたら、あまり変わらない
だろうと・・・。
下手にBL信者を増やしてくれるよりはいいのかもしれない。




