ゲーム過去編「ダンシングメイス」
「最初に確認しておきたいことがある、ミルミルさんは、
現在、クレリック見習いだよな。」
二人でパーティーを組んで道すがらベルラインが聞いた。
「はい、その通りです。」
「将来的には、ビショップになるつもりか?」
「まだ、決めてません。クレリックで止めてる人が殆ど
なんですよね?」
「クレリックとビショップの違いは知っているな?」
「はい。大体はネットで確認しました。」
「これは、あまり重要視されてない事だから、ネットにも載って
無いと思うんだが、ビショップになればメイスは装備できないぞ。」
「えっ・・・。」
「ビショップになるつもりなら、今のうちからスティックに変えた方が
いいだろう。」
「私は、メイスを使いたいです。だから、クレリックで止めようと
思います。」
「わかった。では、メイスについて一つだけ教えておこう。
実戦で見せたいので、回復に専念して貰ってもいいか?」
「はい、お願いします。」
1匹の雑魚キャラとの戦闘が始まった。
ベルライン一人でも、勝てる相手だ。
いつものように盾強化と扇動のスキルを発動させる。
扇動のスキルを発動させると、スキル発動者に対するヘイトを上昇させ
一定時間、敵を引き付けることが出来る。
ミルミルは、ベルラインがダメージを受けたのを確認して、回復魔法を
使った。
悠々と大きな盾を持ち、敵の攻撃に耐えるベルラインは勇ましかった。
ベルラインは、ゆっくりとメイスを持ち上げ、カウボーイが縄を回すような
素振りをする。
3回回したところで、一気にメイスを叩き落とした。
雑魚と言っても決して一撃で倒せる敵ではないが、ベルラインは一撃で
雑魚を粉砕した。
「す、すごい・・・。」
「今のが、メイスのスキル、ダンシングアタックだ。」
「3回回すことで、攻撃力がアップするんですね?」
「違うな。」
「へ・・・。」
「ダンシングアタックは、動作中に呪文が発動できる。
私は大した呪文は持ってないので、攻撃力アップの呪文を発動して
使ってるだけだ。」
「なるほど。」
「今のは、判りやすいように使用しただけだが、このダンシングアタックは、
攻撃しながらも呪文の発動が可能だ。」
「えっ・・・。」
「つまり回復しながら、攻撃が出来るかもしれないということだ。」
「かもしれないですか?」
「回復魔法を私は持ってないからな。確認が出来ない。補助魔法は間違いなく
使用できるけどな。」
「私がメイスを使っていくとしたら、重要なスキルになりますね。」
「そうだな。僧侶が装備を出来るというのは、私も知らなかったのだが、
もしかしたら、僧侶に適してる武器なのかもしれんな。」
「こんな大事なことを教えてもらってもいいんですか?」
「構わんよ。私はデュエルをやる訳でもないしな。」
「あ、あのベルラインさんっ!私、聖騎士団に正式に入団しますっ!」
「そうか、では、これからはミルミルと呼び捨てにするが、構わないか?」
「是非っ!よろしくお願いします。」
「ギルバルト、ミルミルが正式に入団したいそうだ。」
ギルドルームに戻った、ベルラインは、ギルバルトに報告した。
「そ、そうか。一応体験入団ということだからな。まずは一週間ギルドを
体験してもらって、その後正式ということで。」
「だ、そうだ。ミルミル。」
ベルラインがミルミルに聞いた。
「はい、皆さん宜しくお願いします。」
ミルミルは、ぺこりと頭を下げた。
ギルドルーム内にはちらほらと団員が居た。
3人以外が、男性で、男性たちは喜んだ。
「僧侶って初だよな。」
「可愛らしい女の子だな。」
「ま、待て、カルディナの例だってあるだろ・・・。」
「た、確かに・・・。」
聖騎士団の男子団員の心の中にカルディナショックは、今も爪跡を残していた。
「失礼な、屑どもね。最初は喜んで迎えてたくせに。」
最初は、丁寧で女らしいカルディナだが、慣れれば男を屑扱いする性格だった。
ギルバルトは、カルディナに目くばせをした。
【この一週間が勝負だからな】
【はいはい、わかってますって】
何故かこの時だけ、以心伝心の二人だった。




