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テーブルマナー

タイマーは、いつものようにいつもの場所で釣りをしていた。

規則正しく、朝から釣りに勤しんでいた。

「すみません、伯爵、ちょっとお聞きしたいことが。」

声を掛けられたタイマーは、当たりを見回す。

ポツポツと釣りをする連中は居るが、すぐ近くに人は居ない。

「俺の事?」

念の為、確認してみる。

「はい。」

【俺、いつから伯爵に?てか仙人から伯爵って降格なんだろか?】

「実は、今度、彼女とフランス料理を食べに行くことになりまして。」

【何の相談だ・・・。】

「自分も彼女もそういった店に行ったことなくて・・・。」

「ほう。」

「できれば、注意点とかテーブルマナーを教えて頂けたらなと。」

「お、俺が?」

「はい、伯爵ならそういうの詳しいかと思いまして。」

「・・・。」

あまりの突拍子もない申し出に、離れた所で釣りをしてた連中も

寄ってきた。

「釣り仙人に、なんてこと聞いてるんだ、あんた・・・。」

一人の釣り人が言った。

「そういうのって、ネットとかでも探せばあるんじゃね?」

他の釣り人が言った。

「そうなんですが、練習というかそういうのが必要かなって。」

「確かに知識だけじゃあ難しいかもな。」

大概の男性は、女性の前でいい恰好しようとして失敗する。

そもそも、普段やらないような事をするのが間違ってるんだが、

男とは悲しい生き物である。

「あのさ、彼女も初めてなんだよね?」

タイマーが聞いた。

「はい。」

「それなら二人で練習した方が良くない?」

「そうですかね?」

「誰か、椅子とかテーブル持ってないか?」

タイマーが周りの釣り人に聞いたところ、持ってる人間が居た。

ゲームだからこそ、ありえる事で、リアルでテーブルと椅子を持ち

歩いている人間は、まず居ない。

「俺が、案内係するから、とりあえず座ってみて。」

「はい。」

タイマーは男を案内した。

「座るときも立つ時も、左側からね。」

「はい。」

タイマーが椅子を引いて、男がぎこちない動きで椅子に座る。

男が座る前に立っていた場所が悪く、テーブルと体の間のスペースが

広く空いてしまった。

「最初に、十分体をテーブルに着けるようにして立つといいよ。」

「はい。」

周りの釣り人達も食い入るように見ていた。


「面白い事してるのね。」

ローラがやってきた。

普段では、ローラがONするような時間帯じゃないのだが。

「ちょうどいい、ローラ、お手本見せてくれるかな?」

「いいけど、タイマーにちゃんと案内係できるのかしら?」

「精一杯頑張らせてもらうよ。」


「こちらへどうぞ。」

ピンと背筋をはったタイマーがローラを案内する。

席を引いた所で、ローラが座る。

「ありがとう。」

何の違和感もなく、水が自然と流れるような動作で。


「う、美しい・・・。」

「ただ座っただけなのに・・・。」

周りにいた人、全員が呆然とする。


「まあ、こんな感じでね。彼女と練習するのが一番だと思うよ?」

タイマーが言った。

「そうね。女性の方が、マナーに関しては気を付けることが多いから。」

ローラが言った。

「バッグの置き場所とか?」

タイマーが聞いた。

「そうね。てかタイマーは、詳しすぎじゃない?」

「そ、そうかな?」

「よっぽどの女ったらしなのね。きっと。」

「そんな事はないよ・・・。」


「もう少し、情報収集して彼女と一緒に練習してみます。」

「それがいいわ。」

「色々、堅苦しい事はあるけど、食事を楽しむのが一番だからね。」

タイマーが言った。

「はい。」

男は満足したように去って行った。


「さすが伯爵は違うな。」

「伯爵だからな。」

周りの釣り人が言う。

「一つ聞きたいんだが、伯爵と仙人って格は、どうなるんだ?」

タイマーが聞いた。


「「「うーん・・・。」」」

全員が頭を悩ませた。


「いいんじゃない?好きな方で呼んで貰えば?」

ローラが適当に言った。


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