火種
ベルラインは、パルコが鋼の翼のギルドルームに居るのを
個人トークで聞いて、ギルドルームに向かった。
鋼の翼のギルドルームは、いつもの通り、パルコとミラが、
円状に連なったソファーに座って話していた。
「こんばんわ、パルちゃん、ミラちゃん。」
「「こんばんわ」」
「なんだか、パルちゃんはご機嫌に見えるが?」
「わかる~、実はねえ。」
そう言って、パルコは、双剣のうちの一本を抜いて見せた。
「随分と凄そうな剣だね。」
「でしょ。シンゲンの伝手で職人さんに作ってもらっちゃった。」
「材料持ち込みで?」
「そう。」
「もしかして、ライトカーボンメタル?」
「よくわかったわね。」
「実は、クレインちゃんが気にしてて。」
「ん?」
ベルラインは、事情をパルコ達に説明した。
「なるほどねえ。時期が悪いっちゃあ、悪いわよね。」
「気にする必要はないと伝えたんだが・・・。」
「私のこれは、一部分けてもらっただけなの。」
「ほう。」
「これ言うと、ベルちゃんは怒っちゃうかもだけど・・・。」
「まさか・・・、ロッドの材料とか・・・。」
「当たり・・・。」
「・・・。」
むしろ、ベルラインは呆れてしまった。
ライトカーボンメタルなんて、簡単に手に入るものではなく、
採掘できる職人も限られている。
基本的に一般に出回ることが無く、ギルドの伝手をたどってとか、
ギルド単位で購入するとか、護衛して報酬で貰うとか、そういう物だった。
「また騒ぎになっちゃったら、ごめんね。」
パルコは先に謝った。
「いや、さすがにあのようなことは、もう無いし、
ライトカーボンメタルなんて、ギルドでも在庫は無いから心配はないよ。」
「そっか。」
「しかし、堅松樹の次は、ライトカーボンメタルと・・・。」
ベルラインは心底呆れた。
「ねえ。私たち女性にはわからない世界だわ。ああ、でも女性も何人か
いるわよね。」
「まあ、楽しみは人それぞれだから。」
「これで武者たんも安心してくれるかしら?」
「むしろ火に油を注ぎそうで、真実を伝えるのが怖いんだが・・・。」
「ご愁傷様ですw」
「あ、ごめん。個人トークが入った。」
ベルラインは、そう言って個人トークに切り替えた。
「何処にいますの?」
「パルちゃんとこのギルドルームだ。」
「今から行きますの。」
「サーラが来るみたいだ。」
「あら、何の用かしら?」
「さあ?」
二人が首をかしげてるとサーラントが鋼の翼のギルドルームにやってきた。
「いきなりで悪いんですが、これを見て欲しいんですの。」
そう言って、サーラントは一枚のSSを表示した。
「なっ・・・。」
「あら、まあ。」
「ベストカップル。」
最後に、ミラがボソっと爆弾発言をした。
「どういうことですの?」
サーラントがベルラインに詰め寄る。
「何がだ?」
「どうしてこういうSSがありますの?」
「それはだな。うちのギルドとシンゲンのギルドが、釣りレッスンを
受けてだな。その時のSSだ。」
「どうして、釣りレッスンでこういうSSになりますの?」
「うちの馬鹿どもが、世話になったので、お礼を言ったらSSを撮っても
いいかと聞かれてだな。」
「それで?」
「SS位、構わんだろ?」
「どうして、腕を組んでますの?」
「私が組んだんじゃない。見ればわかるだろ。」
「まんざらでもなさそうですの。」
「貴様は何を言っている?」
「ベルこそ、どういうつもりですの?」
「どうもこうも、SSを撮っただけだろ?」
「どうして、こういうことになってますの?」
「いや、説明したし・・・。」
段々と詰め寄られ、困ったベルラインは、パルコの方を見た。
【パルちゃん助けて】
【しょ、しょうがないわね・・・】
目と目で会話した。
「サーラちゃんは、自分の居場所がとられたから怒ってるの?」
「私の居場所ですの?」
「ベルちゃんの腕と隣かな。」
「ななな・・・・・。」
顔が真っ赤になった。
パルコは、ベルラインの方を見て、グーっのサインをした。
【パルちゃん、解決になってないよ・・・。】
ベルラインは、目で非難した。
「わ、私が言いたいのは、そんな事じゃないんですの。」
「じゃあ、何が言いたいんだ?」
「私とベルは、βからの付き合いですよね?」
「そうだな、パルちゃんもだけど。」
「私が抜けてるよね・・・。」
「私達のツーショットとか、ありませんよね?」
「パルちゃんともないだろ・・・。」
「私もないわよ・・・。」
「それなのに、いきなり出てきた人にこんなSSって、
おかしくないですか?」
「はああああ・・・。」
ベルラインは大きなため息をついた。
「あのなあ、サーラ。このSSは、どうやって手に入れた?」
「ギルメンの方に貰いましたの。」
「そんな事だとは思ったよ。じゃあギルメンの連中に聞いてみるんだな。
私とのツーショットがないかと。」
「そんなの撮ったことありませんの。」
「SSは、誰でも撮れるだろ。」
「でもツーショットなんて、記憶にございませんの。」
「とりあえず、ギルメンに聞いてこい。もしなかったら、気が済むまで、
SS撮りに付き合ってやるから・・・。」
「本当ですの?」
そう言って、サーラントは、自分のギルドルームに、帰って行った。
「ふううう・・・。つ、疲れる・・・。」
「もてる女は辛いわねえ。」
「やめてくれ、パルちゃん・・・。」
「夫婦みたい・・・。」
ミラがボソっと言った。
「ミラちゃんまで・・・。」




