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リアルの話

「い、一週間釣りが出来ないだと・・・。」

あまりのショックに次の週は、ゲームにONする事はなかった。

代わりにアパートの近くにある釣り堀に毎日通った。

「兄ちゃん、職探した方がええで。」

と常連のおじいさん達に、心配して貰うほどに。

「冷静になって考えれば、この一週間は痛かった・・」

終日5000円を5日間通ったため、見事2万五千円の出費に。

「月額9800円も取っておきながら、なんだクール期間って。」

完全に駄目人間の思考となっていた。

土曜日の夜、時野は、渋々ゲームにONした。

「遅いじゃないですか先輩っ!」

「たかがゲームだろ?」

「ゲーム内ですけど、対人間なんだから、普段のように

 時間を守って下さい。」

「はいはい。」

「はいは、一回って先輩が言ってた事でしょうっ!」

タイマーは、カラットが入ってるギルドへ連れて行かれた。

カラットは副GMということで、ゲストのギルドルーム入室許可権をもっている。

中に入ると、端の方で女性が二人ソファに座り会話をしていた。

「遅くなりました。パルコさん、ミラさん。

 こっちがリア知りのタイマーさんです。」

「どうも、タイマーです。」

そっけなく挨拶するタイマーに、カラットは首を傾げた

「あれ?先輩らしくないですね?」

「何が?」

「女性に対して、やけに素っ気ないなと。」

「ゲームだし、性別なんてわからんだろ?」

「VR機って性別変えれませんよ?

 脳波パターンで決まりますんで。」

「脳波って・・・性同一性障害とかその辺の人は

 どうなるんだよ?」

「恐らく女性として認識されるんじゃないかな?」

「まあ、キャラ特性として変わるのは胸くらいですけどね。」

そう言われ、自分の下半身を触ると、ある物がなかった

「無い・・・」

「ねえ、そんな事より、

 こっちも自己紹介したいんだけど?」

そいうって、短髪で活発そうなパルコが言ってきた。

もう一人の女性は、うつむき加減で大人しげであった。

「申し訳ない、女性を待たせるとは、この時野、

 男として失格ですね。」

そう言っていつの間にか女性の前に膝をおり、パルコの手を握ってた。

「何、リアルネームなんか言ってるんですかっ!」

「俺は女性に嘘をつかない。それがポリシーだ。

 お前も知ってんだろ。」

タイマーにそう言われ、カラットは頭を抱えた。

「え、えっと・・・。」

いつのまにか手を握られたパルコは、動揺していた。

「と、時野さんっ・・・。」

「私の事をご存じで?」

手を握ったまま、パルコの瞳を優しく見つめた。

『間違いないわっ。この天性の女ったらしぶりは・・』

「い、いえ。知り合いに同じ名前の人が居ただけで。」

「先輩いい加減にして下さいよ。

 パルコさんは学生さんなんだから。」

「ほう。」

そう言って、ずっと見つめるタイマー。

「そんなに見つめられると困りますよ。」

やんわりとかわし、パルコは手をしまった。

「ふむ、進の奴は元気ですか?」

「ああ、社長なら・・・」

「・・・」

「・・・」

【ど、どうしてわかるんですかっ!】

個人トークで、パルコは言った。

「なんだこれ?表示が変ですよ?春子さん。」

「ちょ、ちょっと!!!」

パルコはもの凄く慌てた。

その後、個人トークのやり方を教えてもらいながら、

タイマーはもの凄く怒られた。ずっと正座で。

幸い本体は、VR機をかぶったままベットに寝ているので足が痺れる事はない。

「まったく先輩は、アホ通り越して、どうしようもないですね。」

「タイマーさん、私の事これ以上言ったら、

 本当に許しませんよ?」

「申し訳ありませんでした。」

二人に土下座した。

「ごめんねミラちゃん。」

「う、ううん。大丈夫。」

「と、じゃなかったタイマーさん。

 こっちがミラちゃんね。」

「よろしく、ミラさん。時野と申します。」

いつのまにか正座してた場所から瞬間移動し、

ミラの前に跪き手を取っていた。

「全然懲りて無いじゃないですかっ!」

カラットに更に怒られた。

「く、こんな事ならキャラネームをトキノにしておけばよかった。」

「アホですかっ!」

タイマーは更に更に怒られた。

そうこうしてるうちに、ギルドのリーダーが入出してきた。

「しぁ・・・リーダー、こちらがカラット君の

 リアル知りのタイマーさんです。」

パルコがそう紹介する。

「お前、進か?」

タイマーが上から目線で、両手剣の剣士を睨み付ける。

「だ、誰だ、貴様は。」

「俺はタイマーっ!暗黒騎士だっ!」

「そんな職業ありませんよ・・・。」

カラットが突っ込む。

「お、お前・・・」

ギルドのリーダーは、上から目線のタイマーに

何か気が付いたようで、ガバッとチョークスリーパーをかました。

「このバカたれがっ!!!会社潰れたんなら俺の所に

 連絡しろっ!!」

怒ったようにタイマーを責める。

「う、うるさいわ。ボケっ!会社潰れたくらいで、どうともないわっ!」

てんやわんやした後、ギルド内のテーブルに全員が座った。

「ゲーム内でリアルの話をして申し訳ないのだが。」

とギルドリーダーのヴォルグは前置きした。

「仕事の方は大丈夫そうか?」

「問題無いっ!」

「大ありでしょっ。最初の3ヶ月しか就活してないでしょ。

その後はずっと、ゲーム内で釣り三昧じゃないですかっ。」

「こ、今週は釣り禁止になったから、

 ゲームしてないわいっ!」

「近所の釣り堀行ってたんでしょ?」

「・・・」

「本当に、行ってたんですね・・・先輩。」

「そういやお前、中学までは釣り三昧だったよなあ。」

「馬鹿をいうなっ! 大学でも釣り三昧だ。」

「威張って言う事じゃないと思うが・・・。」

「しぁ・・リーダー、タイマーさんにはリアルで会社に

 来て貰って、リアルの話は、もう辞めませんか? 

 ミラちゃんも困るでしょ?」

「そ、そうだな。」

「まあ、春子さんがそういうなら。」

ズコーーーン。パルコはテーブルの上にあった花瓶を

タイマーに投げつけ、見事ヒットさせた。

「パ、パルちゃん。学生さんじゃあなかったんだね。」

ボソッと言ったミラの一言に。

「あ、あはははは。」

と笑うしかなかった。

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