採掘
「さて無事についたし、ヨサク達はどうする?」
「採掘見ててもいいですか?」
「ああ、構わんが、面白みもなんもないぜ?」
「話とかすると、邪魔になります?」
「いや、全然大丈夫だ。」
「じゃあ見学させてください。」
「わかった、ヨサクは、堅松樹でも伐採するのか?」
「いや・・・、当分いいわ。俺も見学しとく。」
三人は、閉ざされた門の近くにある坑道へ移動した。
入口付近には、モンスターは居らず絶好の採掘場所だ。
が、もちろん、誰も居ない。
そもそも、ここで採掘するには、採掘スキルLvが30以上は、
必須になる。
採掘スキルがLv30を超えている人間は数えるくらいしかいない。
生産組合に所属しているヨサクが知っているのは、ゲンくらいだ。
生産組合は、ギルドではない。
数少ない生産者同士、頑張っていこうという事でギルドの枠を超えた組織となっている。
ソロ行動が多いヨサクとゲンも組合に所属していた。
「そういや、特に聞いてなかったんだが、ライトカーボンメタルは、
今度のデュエル大会で、使用するのか?」
カン、カンっ。
ツルハシを振り下ろしながら、ゲンは聞いた。
「いえ、今度の大会は限定になってまして、防具にも使えないんですよ。」
「ああ、ランク2以下の防具だったな、そういや。」
「僕は、魔拳士なんで、武器もありませんし。」
「じゃあ、知り合いが?」
「ええ、リアルの先輩がやってるんですが、その人が使いたいと。」
「ほー。」
「カンピオーネの先輩というと、攻略組か?」
ヨサクが聞いた。
「いえ、冒険は、まったくしてないかと。」
「そいつは、また凄いな。俺やヨサクでさえ、合間に冒険してるのにな。」
「まあな、空いたスキルに戦闘系を入れてなけりゃあ、いくら逃げでも陰鬱な森なんて、抜けれないからな。」
「だな。」
「ふむ、まったく冒険してないっていうとアレかっ!仙人だな。」
ゲンが言った。
「ああ、速攻でクールタイム食らった、釣り馬鹿か?」
「ええ。」
「すげえな、ライトカーボンメタルを使おうってのか。」
「何でも実際の釣り具屋のメーカーの方と知り合いになったらしく。」
「ああ、ロッドメーカーさんだろ。アップライスだな。」
「ヨサク知ってんのか?」
「ああ、釣竿の老舗メーカーで、VFGXのロッドのレシピをサイトに載せてる。」
「ほう。レシピって中々公開しないもんだがな。」
「向こうは、宣伝兼ねてるからな。ロッドメーカーさんも組合に所属してて、
レシピ公開の前には、組合の許可をとってたぞ。」
「まあ、組合で釣竿作ってる奴なんて、あんまり聞いたことねえからな。」
「やっぱり、競合する人が居たら、問題になるんですかね?」
「まあな、下手にレシピ公開してしまうと、物が売れなくなるからなあ。」
ヨサクが言った。
「爆発的に素材が枯渇してしまう原因にもなるからな。」
ゲンがとある事件の事を突っ込んだ。
「うっ・・・。」
「誰かさんみたいに、女に全部貢ぐとかなw」
「アホぬかせっ!ローラたんは、そんな女じゃねえ。
ちゃんと相場通りに買ってくれてたわっ!」
「うーん・・・。」
「どうした、カラット?」
「ローラさんの時も、元は先輩が原因なんですが、
カーボンライトメタルも・・・」
「な、何っ!?」
「そりゃいいこと聞いた。俺がデートしてやろうかな。」
ゲンがからかい口調で言った。
「ふ、ふざけるなっ!!」
「さすがにカーボンライトメタルは、攻略組でも在庫はあまりないだろう。」
「くっ・・・。ゲ、ゲン・・・在庫全部売ってくれ・・・。」
「売るか、ボケッ。安心しろ、ローラとかいうのにも売らないから。」
「ほ、本当だな!」
ヨサクは念を押して聞いた。
「組合でも問題になったし、攻略ギルドから苦情も出たらしいから。
あんなことはもうねえよ。」
「ううう・・・。」
「ヨサクさん、釣りデートなら、先輩に頼んでみましょうか?」
「!!!」
「ゲンさんを紹介して貰ったし、それ位なら先輩にさせますよ?」
「た、頼みますっ!カンピオーネさんっ。」
「まったく、こいつのは病気だな・・・。
俺はロッドが完成したら、仙人の釣りが見てみてえ。」
「それも言っときますね。」
「ああ、頼むよ。」
VFGXは、連続ログイン時間は2時間となっている。
ログアウトすれば、登録地点に戻される。
その為、採掘出来る時間は、2時間から到達までの時間を引いた時間となる。
この日、採掘したカーボンライトメタルは、半分をカラットに無償で手渡した。
カラットは、相場の金を払うと言ったが、ゲンは受け取らなかった。
お互い名刺交換し、三人は、リミットの5分前にログアウトした。




