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リアルコンパ

「初めまして、時野正41歳、無職です」

「やだ、時野さん、マジ受ける~」

時野の斜め前に座った看護士が笑いながら言った。

今日は4対4のコンパの日。

4人テーブルで2つに別れて座っていた。

時野の隣には、常盤亮一が。

「先輩は、逆玉狙ってるんで、注意してくださいね。」

常盤が女性に忠告した。

「マジぃ?なら先生は、尚更気を付けないと。」

そう言って看護士は、時野の正面に座ってる女性に声をかけた。

髪を若干染めていて、軽くウェーブもかかっており、

とても先生には見えない風貌だった。

「えっ、病院の先生なんですか?」

常盤が驚いて、聞いた。

「え、ええまあ、今日は人数合わせで連れてこられました。」

「奇遇ですね。自分もなんですよ。先生、自己紹介お願いします。」

すかさず時野が自己紹介を勧める。

「えっと、佐柄鏡子です。いちおう医師をやってます。」

「キョウコさんですか、いい名前ですね。」

そう言って、時野はいつの間にか手を握り相手の瞳を見つめる。

「ちょっと時野さん。」

隣の看護士が注意する。

「常盤君、時野さんってこういう人なの?」

「ええ、そういう人です。」

「じゃあ、しょうがないかっ。先生気を付けてくださいね。

 次、手を握られたら、叫んじゃってください。」

「だ、大丈夫よ。慣れっこだから。」

「さすがっ。先生は、美人でモテるから。」

「そ、そうでもないと思うんだけど。」

「時に、キョウコさん、キョウコさんのキョウの字は、鏡ですか?」

時野が聞いた。

「すっごい、中々でなくないですか?」

看護士が驚いて言った。

「そ、そうよね。キョウの字とか多いから。」

「鏡で、ミラー。それでミラちゃんなんですね。」

ガタっ。

突然、佐柄鏡子は立ち上がった。

「え、ミラさんなんですか?」

常盤が聞いた。

「ゆ、裕子ちゃん、ごめんなさい急用がっ。」

鏡子は、別のテーブルにいる幹事に声を掛けた。

「えっ、鏡子先生、4対4なんで抜けられると・・・。」

「だ、大丈夫、この人も連れていくから。」

「「「えっ」」」

時野のテーブルの3人が驚いた。

「えっ、先生?」

幹事が驚いてると、鏡子は時野の腕を引っ張り、店を出て行った。

「先輩がお持ち帰りされちゃった・・・。」

「「「先生がお持ち帰りした???」」」


「鏡子さん何処まで?」

店を出て、しばらくしてから、時野は声を掛けた。

「じゃあ、ここで解散で・・・。」

「えっ・・・。」

「時野さんも数合わせなんですよね?

 それとも、本気で逆玉を?」

「いえ、それはいいんですが、何も食べてないんですが・・・。」

最初の自己紹介で、引っ張り出されてしまい、空腹の時野。

「私は、お腹すいてませんので、これで。」

そう言って帰ろうとしたとき、


くぅ~


可愛らしいお腹の音が鳴った。

「減ってるんじゃないですか?」

「減ってません。」

「何処か、飯でも?」

「行きません!」

「警戒してます?」

「はい!」

「・・・。パルコさんですか?」

「ええ、時野さんのような男性には気を付けてと

 よく聞かされてますんで。」

「飯くらいよくないです?」

「良くないです!」

「・・・。」

「・・・」

「じゃあ、屋台なんかどうですか?」

「屋台?」

「ええ、行ったことありませんか?」

「ないですけど・・・。」

「屋台で軽くラーメン食って解散はどうでしょう?」

「うーん・・・、屋台ならいいかなあ・・・。」

屋台というものに、ムード的なものを感じない為、やむなく

鏡子は了承した。


「よくこういう所来るんですか?」

屋台でラーメンを食べながら鏡子は聞いた。

「前は、たまに。無職になってからは、初めてかな。」

「就職活動せずに、コンパってどうかと思いますよ?」

「夜に就活はしないでしょ?」

「まあ、そうですけど。」

「鏡子さんなら、モテそうですし、コンパなんて行かなくても?」

「私は、数合わせです。どうしても他に空いてる看護士が居なかったんで。」

「幹事に連れてこられたんですか?」

「はい。それより、どうして私が、ミラだってわかったんですか?」

「大概、わかりますよ?」

「普通はわからないと思うんですけど。」

「だって俺の事わかったでしょ?」

「時野さんは、ゲームで名前名乗ったじゃないですか。」

「ああ、なるほどw」

「カラットさんなんでしょ、常盤君が。」

「わかります?」

「そりゃあ、口調は、そのままだし、見た目も似てるし、先輩って、

 呼んでたら誰だってわかるかと。」

「まあ、あいつは、まったく気にしない人間なんで、マンマなんですよ。

 ゲームだと自分の中にキャラ作って、口調とかも変える人がいるでしょ?」

「ええ。」

「でもね、VR機って仕草というか雰囲気というか、実際の人と同じように人それぞれ違うんですよ。

その人特有の癖や仕草なんてついついでちゃうでしょ?」

「そうなんでしょうか?」

「脳波を拾ってるんで、体を介してませんからね、ダイレクトに出るんじゃないかなあと。」

「パルちゃんや、ヴォルグさんも直ぐわかりましたよね?」

「パルコさんは自滅したようなもんですけどね。」

「リアルネームなんか言うからですよ。」

「確かに。そうだ、今度オフ会やりませんか?」

「オフ会ですか?」

「ええ、昨日は、常盤をみんなに紹介して、ちょっとしたプチオフ会をしたんですよ。」

「パルちゃんが参加するなら行ってもいいですけど。」

「あれ、まだ警戒してます?」

「もちろんw」


二人は連絡先を交換して、何事もなく帰宅した。


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