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邂逅

「そういえば春子さん、カラット=常磐には、

 リアルであった事ないんですよね?」

「ええ。」

「進の奴は、あるのかなあ?」

「社長も無いと思いますよ。」

「なるほど。」


時野はスマホを取り出し、LINEを立ち上げた。

「今から抜けれるか?」

「無理です」

ついでに怒りのスタンプがついてきた。

「今日定時か?」

「残業に決まってるでしょ。」

怒りのスタンプが激怒プンプンになってた。


「春子さんは、今日は早番ですか?」

「ううん。旦那が遅いから、今日は特に。」

「春子さんって従業員にならないんですね?」

「社長からも言われてるんだけど、時間が色々と変えれるパートの方が楽なのよねえ。」

「旦那さんは何と?」

「そもそも働かなくていいって。」

「いい旦那さんですねえ。」

「でしょう?だから時野さん誘惑しないで下さいね。」

「俺は、人妻を誘惑なんてしませんよ?」

「そういうことにしときましょう。」


時野は、LINEに波田運輸サービスのマップのURLを貼り付けた。

「定時にて、ここで待つ。」

もの凄い怒りのスタンプが・・・。

無視してラインを切り、スマホをポケットに仕舞い込んだ。


「ただいま」

波田進が、帰ってきた。

女子高生を連れて。

神速の速さで、時野は女子高生の目の前に立った。

「美緒ちゃんかあ。大きくなったなあ。」

そういって、頭を撫で始めた。

「なっ、・・・なっ。」

突然の事で、美緒は言葉にならなかった。

しかも、頭を撫でられて、フニャっと力が抜けていく。

「お、おっさん。勝手に触んなっ。」

ようやく言葉に出来て、時野の手を振り払った。

が、

「あれ?俺の事覚えてない?」

そう言ってニッコリと笑って、再び頭を撫で始める。

「お、おじさんっ。」

美緒は、困って波田に助けを求めた。

「時野いい加減にしとけよ。宇品にいいつけるぞ?」

「何て?」

「娘にセクハラしてたと。」

「何処がセクハラなんだよ?」

「時野さん、女子高生の頭をむやみに触るのは、十分セクハラですよ。」

春子に突っ込まれ、ようやく撫でるのを辞めた。

「美緒ちゃん、本当に俺の事覚えてない?」

「知らねえよっ。あんたみたいな、おっさん。」

「ん~。じゃあ康平の事は覚えてるかな?小さい頃一緒に遊んだ男の子。」

「知らねえよっ。」

「時野、随分昔だろ、美緒ちゃんも覚えてないよ。」

「もしかして、康平君ってのが、時野さんの息子さん?」

「ええ、俺も随分あってないからなあ・・・。」

「あんたも、親父の昔の仲間なのか?」

「ん?暴走族の?」

コクリと美緒は頷いた。

「いやいや、全然、単なる高校の同級生だよ。」

「美緒ちゃんのお父さん、暴走族だったの?」

春子が美緒に聞いた。

「まさか春子さん、進が暴走族のリーダーやってたの知らなかったり?」

「えっ・・・。」

驚いて春子は、波田の方を見た。

「む、昔の事ですよ、春子さん。」

「ちなみに権造がそのずーっと後のリーダーだったりします。」

「えっ、権造君もっ・・・。」

「春子さんもその筋の人じゃないの?」

美緒が聞いた。

小学校の頃から、波田運輸サービスには、顔を出していたので、

春子とは仲がいい。

「私は、普通の主婦です。」

春子が言い切る。

「その筋って・・・。美緒ちゃん俺は暴走族集めて会社やってるわけじゃあ・・・。」

「違うのか?」

真顔で時野が聞いた。

「あのなあ・・・、まあいい、取りあえず宇品に電話しとくか。」

「いいよっ。別に!どうせ仕事で、来やしないんだからっ。」

「家には俺が送ってくけど、一応は知らせとかないとね。」

波田は、美緒に説明した。


「美緒ちゃん、髪染めてるの?」

そう言いながら、時野は、美緒の髪を手に取った。

「なっなっ・・・。」

「ん?」

「か、勝手に触るなっ!」

「髪痛むよ?」

「みんなやってるっつーの。」


「あ、宇品か、仕事中に悪いな。」

「どうした?」

「美緒ちゃんなんだが、今うちの会社に居るんだが。」

「すまん。今日も残業で・・・。」

「ああ、わかってる。俺が送っていくから。」

「いつもすまんな。」

「そういや、時野なんだが。」

「は?なんであの女ったらしの名前が出てくるっ!」

「い、いや、いまうちの会社に居てだな。」

「ま、まさか美緒と・・・。」

「仲良く話してるぞ?」

ガチャンっ!

「なんだ、いきなり電話切りやがった・・・。」


「剥げるよ?」

「剥げるかーーーーっ。」

「宇品も薄くなってない?」

「男と一緒にするなっ!」

「知らないかな?宣伝もやってるでしょ、女性用カツラ?」

「えっ。」

美緒はやや不安になってきた。

そういえば以前、親戚のおばさんがカツラがどうのと言ってたような。

美緒は、心配になって春子の方を見た。

「ま、まだ若いから大丈夫よ。」

美緒は更に不安になった。


「そういえば、昔、美緒ちゃんのおしめを替えた事が。」

「お、お、お、おっさんが替えたのか・・・。」

顔を真っ赤にして美緒は言った。

「いや、俺が替えようとしたらさ、」

「俺の娘に触るなあああああっ!」

「そうそう、こう言って止められ・・・」

「はあはあはあ・・・。」

息を切らして、宇品が入って来た。

「おおー、宇品久しぶりだな。」

「俺の娘に手をだすなっ!」

「何言ってんだ、お前?」

「美緒帰るぞ。」

そう言って、座ってる娘を立たせ連れて行こうとする宇品。

「い、いたっ。何すんだよ親父っ!」

「いいから。」

無理に引っ張って立たせようとしてる宇品に、

バコっ!!

時野は空手チョップを食らわした。

「落ち着けっ!」

美緒を元の位置に座らせ、隣に宇品を座らせた。

「春子さん、この馬鹿にもコーヒーを。」

「はい。」

「おい、宇品。会社は大丈夫か?」

波田が、心配そうに聞いた。

「ああ、部下に任せてきたから。」

宇品は中小企業の部長だった。

「ふんっ、普段はこんなに早く帰ってこない癖に。」

「それだけ美緒ちゃんの事が心配だったのよ。」

春子がコーヒーを出しながら言った。

「まったく、時野の名前出しただけで飛んでくるなんて。」

「当たり前だろ、こいつは鬼畜天然女ったらしだぞ。」

「凄い長い名前ですね、先輩。」

そう言って、常磐が入って来た。

「定時で帰れるんじゃねえか。」

「無理矢理ですよ。無職の人みたいに無限に時間なんてないんですからっ。」

「お、お前っ!」

美緒が入って来た常磐を指さした。

「僕、JKにお前呼ばわりされる事しましたっけ?」

「き、君は、」

「何だ進。知り合いか?そいつが俺の後輩でカラットだ。」

「君が・・・。」

「ゲーム内と雰囲気まったく一緒ね。」

春子が言った。

「カ、カラット・・・?」

美緒が言った。

「ああ、俺たちがやってるゲームの中の名前だよ。美緒ちゃん。」

時野が説明した。

「春子さんって、ゲーム内と変わらず美人さんですね。」

「もうカラット君って、お上手ね。」

「常磐って呼んで下さいね。」

「おい、常磐。春子さんは人妻なんだからな。」

「先輩じゃないんだから、大丈夫ですよ。」

「くっ・・・。」

「常磐君、今日は本当にありがとう。」

「いえ、僕何もしてませんし。波田さんがヴォルグさんですか?」

「ああ。そうだ宇品、こちらの常磐君が昼に美緒ちゃんを助けてくれたんだ。」

「娘がご迷惑お掛けして申し訳ない。」

宇品は深々と頭を下げた。

「迷惑なんて、掛けてないっ!」

「ほら、お前もお礼をしないか。」

「だから迷惑なんて掛けてないって言ってんだろっ。」

「いいんです。お気になさらずに。」

「に、してもだ。美緒ちゃんは、どうしてグレちゃったんだ?」

「「グレてないっ!」」

親子がハモった。


帰り際に、宇品は念を押すように言った。

「いいか、時野。今後一切うちの娘に近づくなっ!いいな。」

「近づいてねえよ。なあ美緒ちゃん?」

「ふんっ!」

「美緒もこいつには近づかないように。」

「言われなくても近づかないっ。」

そうして、親子仲良く(?)帰ろうとして、宇品は振り向いた。

「そういや、時野、お前会社が潰れたんだってな。」

「それがどうした?」

「ざまあああああっw」


「あの野郎、ぜってえ許さねえ、覚えときやがれ。」

「せっかく集まったんだし、飲みにでも行くか?」

波田が言った。

「俺は構わんが、春子さんは不味いだろ?」

「春子さん、山中さんも呼んで一緒にどうですか?」

「ちょっと聞いてみますね。」

「僕飲めないんで、居酒屋なら屑串の所がいいです。」

「常磐、どんだけ屑串が好きなんだよ・・・。」

「そこで構わんよ。」

「やったあ!」

こうして、春子の旦那をあわせた5人でプチオフ会が、

急遽開催される事になった。

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