Vなんちゃら
正確には時野正の姿ではなかった。
草むらに寝ているのは、30代ぐらいの荒々しい男。
海賊や空賊を想像して貰えるとわかりやすい。
普段の時野正は、すましたサラリーマンだが、
VRMMOの中では、荒々しい男になっていた。
「なんだ、このVなんちゃらってゲーム機は、
まるで本物のようじゃないか・・・。」
3ヶ月かけた就活は、時野のやる気をめっきり失わすに十分だった。
もう就活は、月2回の職安通いだけ。
決して就職しようという活動ではなく、失業保険を貰う儀式のようなもの。
借りてるアパートの一室で、死んだようになってる時野を心配し、常磐が購入を奨めたものだが・・・。
本体12万と消費税20%、月額課金制9800円
(消費税込み)
決して安い物では、ないのだが、価格以上の世界がそこにはあった。
時野は、決してゲーム好きでは無い。
むしろやらない方、特に、チマチマ経験値とかを稼ぐRPGが大嫌いだった
このバーチャルファンタジーGXは、VRMMORPGを代表するゲームなのだが。
「すげえなあ。時代の進化って、空や川が本物に見えるし、触った感じもする。恐ろしい・・・」
やや起き上がって、川を見る。
「釣りとかって出来るんだろうか?」
そうやって目の前の空間に説明書を浮かびあがらせ読んでいると、釣りが出来るらしい。
簡単なクエストを消化して、釣りを始めた。
これが、嵌った。
もはや本物の釣りと遜色ない。
これが月額9800円で出来るなら、釣り好きには安いもの。
但し、バーチャルファンタジーGXは、一日8時間の接続制限があり、2時間連続でONすると15分の休憩をとらされる。
これは、ほかのVR機も全て当てはまる。
そうして1週間が経過した時、時野の目の前に警告表示が出た。
1週間の釣り禁止が表示された。
これは、1週間56時間を全て同じ事に費やしたプレイヤーに警告されるもので、こんなのを食らう人間は中々居ない。
しかも、公式にキャラ名が表示されるというオマケまでついてくる。
「何やってるんですかっ!先輩っ。」
その日の夜、時野は、カラットという中性的なキャラに怒られていた。
常磐亮一は、リアルも中性的であり、キャラの見た目も似たようになっている。
「何が?」
「公式にキャラ名載っちゃってますよ。」
そう言って、ゲーム内で表示した公式ページを時野に見せた。
そこには、クールタイム対象者とかかれ、
1.戦闘 マルス
2.釣り タイマー
と表示されていた。