そして門は開かれた
「「「や、やったあああああああああ。」」」
歓喜の叫び声がギルドルーム内にこだまする。
大勢で成し遂げた喜びは何事にも代えがたいものである。
例えそれがゲームだったとしても。
「いつも、バーチャルファンタジーGXをご利用いただき、ありがとうございます。
ただいま、閉ざされし門の解放条件が達成されました。」
ゲーム内にアナウンスが流れる。
「おおおおおー。」
「まじかっ。」
「やっとだな。」
「新マップへ急げっ!」
歓喜の渦は、ゲーム内にも広がった。
「解放に関わった全員の方に、称号「開拓者」がもれなく付与されます。
途中リタイヤされた方にも付与されますので、途中リタイヤされた方々にもお伝えください。」
「いいなあ。」
「ユニーク称号だろうな。」
「うらやましい。」
一部の者たちは、羨ましがっていたが、その他の大勢は、陰鬱な森へ特攻していた。
「今後、閉ざされた門は、名前を替え、試練の門へと変更されます。
新マップへの扉は開かれました。
皆様の新たなるチャレンジをお祈りしています。」
「「「は?」」」
その他、大勢の足が止まる。
「試練っていいました?」
「何か試されるん?」
「マジでか・・・。」
「一難去ってまた一難か?」
ついさっきまで、大騒ぎだったバラサンのギルドルームだったが、試練と聞いた瞬間、シーンと静かになった。
「何考えてるんだろうね、本当。」
エイトが呆れかえって、ギルバルトに話しかけた。
「まあ、そのうち情報があがるだろう。」
「おや、行かないのかい?」
「今日は、疲れたんでな。大人しくしとくよ。
そっちは別動隊が組まれるんだろう?」
「まあね。こっちに参加出来なかった連中が行くだろうね。」
既に連合では、レイドボス討伐戦に参加出来なかった副GMが試練の門へ行くためのパーティー編成を始めていた。
「ギルバルト、話がある。」
ベルラインがサーラントを引き連れて、話しかけてきた。
3日後、試練の門を目指した一行は、難なく陰鬱な森を抜けた。
「この6人で冒険も本当に久しぶりだな。」
ギルバルトが感慨深く言った。
「ギルバルトが、どうしてもって言うから仕方なくね。」
パルコが答えた。
「お、俺が言い出しっぺか?」
実際、言い出しっぺは、ベルラインとサーラントだった。
「そんな事より、試練の門の情報はあるんだろうな?」
ベルラインが聞いた。
「タイマン勝負らしいぞ。」
「他には?」
「調べてない。」
キッパリと答えるギルバルト。
「はあ・・・。」
呆れるベルライン。
「タイマンなら、情報ない方が楽しいでしょ。」
パルコがそう言った。
試練の門は、門番との1対1のバトルだった。
最初の10分間が、通常モードで、残り5分が、怒りモードになる。
最初の10分で倒しきるのが、楽にクリアする方法だ。
攻撃力のない職は、15分間の攻撃を耐えきれば、クリアとなる。
アイテム使用禁止の為、ポーションがぶ飲み戦法は使えない。
15分後、怒りモードの攻撃を耐えきり門を抜けたギルバルトは、他のメンバーが居ないのに驚いた。
「まあ、カラットは新マップを見て回ってるんだろう。」
次に出てきたのは、ベルラインだった。
「うちのギルドの人間なら、全員なんとかなるな。」
「そうだな。」
ギルバルトが答えた。
ベルラインとギルバルトであれば、15分も攻撃を耐え抜く必要はない。
「うちのメンバーは怒りモードは、関係ないな。」
そう言って、出てきたのはシンゲンだった。
「そう思うなら15分も耐えるなよ。」
ギルバルトが呆れたように言った。
「なかなか面白いわね、怒りモードは。」
そう言ってパルコが出てきた。
「パルコなら5、6分で、かたが付くだろうに。」
「あら、皆15分耐えきるんじゃないの?」
ギルバルトの言葉に、パルコがそう答えた。
「うちの僧侶でも何とかなりそうですの。」
サーラントが、そう言いながら出てきた。
「そうか回復は怒りでも問題ないか?」
「ええ、ギルメン全員大丈夫かと。」
「それなら陰鬱な森の護衛は任せてくれ。」
「お願いしますの。」
「うちも協力する。」
「ありがとうございます。」
シンゲンの申し出に、ありがたく礼を言った。
「生産系が10分は厳しそうですね。」
そう言って、最後に門から出てきたのは、まさかのカラットだった。
「カ、カラット、怒りモードをやってたのか?」
驚いたようにギルバルトが言った。
「ええ、生産系の友人も居ますし。」
「まあ、うちのギルドは、全員は無理そうね。」
パルコが言った。
鋼の翼には、あまり冒険しないミラがいる。
そして何より、まったく冒険しない人間が一人・・・。
「そうも、言ってられませんよ?」
そう言って、カラットはある場所を指さした。
試練の門は、小高い丘の頂上にあり、マップ全体が見渡せる。
カラットが、指さしたその先には、大きな大きな湖があった。
「頭痛くなってきたわ。」
そう言って、パルコは、頭を抱えた。
新マップにレイドボスが実装される。
それはもう、半年以上前に出回った情報。
「主が居そうだな。」
ボソッとシンゲンが呟いた。
「せ、仙人のレベルいくつだ?」
ギルバルトが聞いた。
「レベルも何も戦闘したことないと思いますが。」
カラットの回答に全員が絶句した。