VU作業終了
ギルバルトは、珍しくギルド「鋼の翼」に居た。
「どうして教えてくれなかったんですか?」
カラットは抗議の声をギルバルトに向けた。
「いや、リアルが忙しいって聞いてたんで。」
「今まではメールくれましたよね?」
【一度も返事を貰った事はないがな・・・。】
「レイドボス討伐に僕を呼ばないなんて。」
カラットは、ずっと忙しかったらしく、ゲーム自体に
ONしていなかった。
ギルバルトはカラットが忙しいというのを、パルコから聞いていた。
「酷いじゃないですか、仲間だと思ってたのに。」
色んな苦情が片付いて、一息ついてたところに、思わぬ
苦情が入ってきた。
「連絡しなかったのは悪かった。結局は、討伐できて
ないし、そもそもターゲットとは戦えなかったわけで。」
「で?」
「へ?」
「次はいつでしたっけ?」
「ら、来週だ。」
「もちろん、僕もメンバーに入ってるんですよね?」
「も、もちろんじゃないか。頼りにしてる。」
【や、やっべええええ、頭数に入れてなかった・・・。】
「ならいいです。詳細はメールでくださいね。」
「わ、わかった。」
ギルバルトは、大急ぎで討伐メンバーを見直す羽目に
なった。
「あら、カラット君、VUの調整は終わったの?」
ギルドルームに入ってきたパルコが、カラットに
話しかけた。
「ええ、何とか。臨時メンテの嵐で大忙しでした。」
カラットは、ガンフィールド21というゲームの
メーカーに勤務していた。
先日、大型VUが行われ、
その影響で大忙しだった。
パルコは、夫がそのゲームをやっている為、VUの状況を
知っていた。
「ギルバルトはどうしたの?珍しいじゃない。」
「レイドボスの打ち合わせだ。」
「ああ、なるほど。今度はカラット君も参加できるのね。」
「もちろんです。」
【ようやく、これで本当に一息つけそうだ。】
ギルバルトは、そう思いギルド鋼の翼を後にした。
自分のギルドで、新たな試練が待ち受けているとも
知らずに・・・。




