そっち?
ギルバルトがギルドルームに戻ると、ギルメン以外に
クレインが待ち受けていた。
今回の事は、ギルバルトのせいでは、まったくない。
そもそも誰も予測できない事態だ。
ギルバルトは、思った以上にルビアから追撃が無かった
ので、まあクレインからの苦情くらいはいいかと
考えていた。
それよりもギルバルトにとっての一番の問題は、
ベルラインだった。
果たして、次回も参加してくれるのかと。
「会議はどうなった?」
一番に声を掛けてきたのは、ベルラインだった。
「人数を50名以下にして、再戦する事になった。」
「いつだ?」
「2週間後を予定している。」
「わかった。」
「え、えっと・・・。」
「なんだ?」
「参加して貰えるのか?」
「わかったと言ったろ。」
ギルバルトにとっての一番の問題があっさり解消した。
「ギルバルトさんお話があります。」
次はクレインが声を掛けてきた。
もはや、一番の問題点が解決したギルバルトは晴れ晴れ
としていた。
『さあ、クレイン、いくらでも苦情を言ってくれ!』
そんな心境だった。
「今回の件は、申し訳なかったな、クレイン。」
「なるほど、反省はしているようですね。」
「ああ。」
「では、次の戦闘では、私が部隊長という事で。」
「え?」
「私が部隊長じゃなかったのを反省しているのでは?」
「いやいやいやいや、今回の敗戦を怒ってるんじゃ?」
「何ですかそれは?あんなの出てくるなんて、誰も
予測できないでしょう?」
「そ、そうだな・・・。」
「何を謝ったんですか?」
「・・・。」
『め、面倒くせえ・・・。』
ギルバルトとしては、敗戦について文句を言って
くれる方が、よっぽど気楽だった。
「クレイン、ギルバルトさんを困らせるんじゃ
ありません。」
グランマの助け舟が入った。
「おばあ様、部外者は黙ってて貰えますか?」
「あら、ここは聖騎士団のギルドですよ。
部外者は、クレイン、あなたでは?」
「ぐぬぬぬぬ。」
ここに来て、クレインは、グランマが聖騎士団に入った
事を酷く後悔した。
「クレインちゃん、私が総指揮をとっても、部隊長は
グランマさんに頼むぞ。
だからギルバルトをそう責めないでくれ。」
まさかのベルラインからの助け舟が出た。
「ベルさんまでっ!おばあ様の方が強いからですか?」
「部隊長に強い、弱いは関係ないよ。戦闘中に自分以外
の周りが見えているかだけだよ。じゃないと指示も
出せない。」
ベルラインは優しく諭すように言った。
「・・・。」
実際、強い弱いにしても、グランマの方が強いのだが。
「悪いな、クレイン。次回もグランマさんに部隊長を
頼むつもりだ。」
ギルバルトはそう答えた。
「し、仕方ありません。」
クレインは、しょうがなく折れた。
一方、ヨルムンガンドのギルドルームでは、
敗戦会議後に直でルビアが訪れていた。
「ターヤさん、どうして来てくれなかったんですか?」
「え?うちは、ほら、GMが必要ないって・・・。」
「ミズガルドさん、どうして必要ないんですか?」
こっちでも面倒くさい事になっていた。
カルディナは、ミズガルドの横で、
来るんじゃなかったと後悔してた。
元は自分のギルドに居たのだが、酷くクレインの機嫌が
悪かったので、ヨルムンガンドに避難していた。
「だって敗戦したのだってしょうがないでしょ?」
「責任の所在はちゃんとするべきです。」
「そういうのは、会議で言ってよ。」
「・・・。」
会議中に、言う事は出来なかった。
あの辛口スザンナまで、ギルバルトを責めないのに、
ルビアがあれ以上、責めれる訳がなかった。
「何で、誰もかもが総受けに優しいんですか?」
「別にアレに優しいって訳じゃないでしょ?
責任って言ってもねえ。むしろ魚リストに
アシカたんが載って喜んでる人のが多いんじゃない?」
事実、参加者の多くは、その事で喜んでた。
「ターヤさんなら私の気持ちわかってくれますよね?」
不意に同意を求められ困るターヤ。
「そ、それよりルビアさん、会議の報告はいいの?」
旨い事ターヤは話の筋を変えた。
「あっ。」
ふっと我に返る。
サーラントの居る教会で不満を漏らすわけにはいかず、
ここへ愚痴りに来たわけだが。
「すみません。私、サーラさんに報告しないと。」
そう言って、嵐は去っていった。
「疲れるわね。」
ミズガルドが言った。
「全く。」
ターヤが、ボソっと言った。
珍しく、ミズガルドと意見があった。




