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熱き戦い(女性)

「タイマーさん、本当に見境ないですね。」

何度も何度も言われるタイマー。

「いやあ、ほらパルコさんも彼女を知ってると思いますよ?」

「へ?」

「ほら、イタリアンのカメリエーラの。」

「前に皆で行った所ですか?」

「ええ、彼女は、クレインちゃんの友人なんですよ。」

「へえ、あの娘が。」

そう言ってパルコは、後ろを振り返りカルディナを見た。


「ねえ、タイマー。女性を口説くなら挨拶終わってからにしてくれない?」

タイマーとパルコが戻るとローラが一言突っ込んだ。

「いやいや、口説いてるわけじゃないよ。知り合いが居たから挨拶しただけだよ。」

「ごめんなさいね、ギルバルトさん。こういう人で。」

ローラがギルバルトに謝った。

「い、いや・・・。お構いなく。しかし、さすが伯爵ですね。カルディナを手玉に

 とるなんて・・・。」

ギルバルトは遠目にやり取りを見て驚いていた。

「え?あの娘が問題児の?」

パルコがギルバルトに聞いた。

「ああ、そうだ。パルコは会った事なかったな。そう言えば。」

「へえ。」

先ほどまでは、それ程興味が無かったパルコだが、俄然興味が沸いてきた。

「あの子がカルディナさんかあ。」

ローラも遠目にカルディナの方を見た。

「私、ちょっと挨拶してくるわ。」

「ああ。」

パルコが挨拶に行くと言ったので、ギルバルトは軽く返事をした。

「私も挨拶してきます。」

ローラが言った。

「ちょっ、ローラさん。それは不味いですよ。あいつはガチなんで・・・。」

ギルバルトは焦って止めた。

「ちょっとギルバルト。どういう事かしら?」

自分との対応の差にパルコは苦情を言った。

「い、いや別に・・・他意はないんだが・・・。」

「ご心配なく、パルコさんが一緒ですから。」

「そ、そうですね。」

そう言って、女二人でカルディナの方へ向かっていった。

「そう言えば挨拶がまだでしたね。始めましてタイマーと言います。」

そう言ってタイマーは、ギルバルトに握手を求めた。

「あっ、ギルバルトと言います。この度は、釣りの件、宜しくお願いします。」

ギルバルトは丁寧に挨拶し、握手を交わした。


「ねえ、狂乱と人気No1がこっち向かって来てない?」

ミズガルドは、カルディナに言った。

「・・・。」

カルディナは、ビビってた。

「なんだ、カルディナ。パルコが怖いのか?」

「うっさいハゲっ。」

「ハゲてねーよっ!」

「ガルフは随分余裕みたいだけど、狂乱の事知ってるの?」

ミズガルドは、ガルフに聞いた。

「そりゃあな。何度かクエ一緒してるし。」

「へえ、どんな人?狂乱って呼び名と違って優しい人?」

「いや・・・。まあ・・・。」

言葉に詰まるガルフ。


パルコとローラ。

しばし無言のまま歩く。

ただ、二人が醸し出してる空気は尋常なものではなかった。

前を歩いていたパルコは、足を止めローラの方へ振り向いた。

「何か言いたいことでも?」

「何もありませんよ。」

ニッコリと笑い答えるローラ。

男から見れば、純真無垢な笑い。

しかし、女性から見ると底知れぬ何かを含んだ笑いに見える。

「怒ってるの?」

「私が?パルコさんに怒るような事はありませんよ?」

「ほら、やっぱり怒ってる。」

「あのねえ、パルコさん・・・。」

「やっぱり、何も言わず居なくなったのがいけなかったのかしら?」

「はあ?」

何の事かわからない風にローラは声を荒らげた。

「私も余裕なかったのよねえ。あの頃は。」

「パルコさん、誰かと勘違いされてませんか?」

「ねえ。」

「何です?」

「私もタイマーさんみたいに、ローラって呼び捨てにしてもいいかしら?」

「駄目に決まってるでしょ。」

ローラはバッサリと切って捨てた。

「ほら、怒ってる。」

「怒ってませんよ。」

「じゃあローラちゃんって呼ぼうかな。」

「お断りします。」

「私って女性は、だいたいチャンづけなのよね。だから今決めたわ。」

「随分勝手なんですね。」

「私って昔からこうでしょ?」

「だから・・・。」

ローラは呆れて言った。

すると突然、パルコはローラをギュッと抱きしめた。


ギルドルーム内がざわつくっ!

ざわっ、ざわっ、ざわざわざわざわっ!!


ここは、ギルド「バラサン」のギルドルーム。

言わずと知れたローラファンクラブのようなもの。


「SSチャーンスっ!!」

「狂乱のお姉さまもありだなっ!」

「大ありだろっ!」

急いでSSを撮り始めるギルメン達。

彼らは、釣り仙人の釣る所を見に来てた野次馬だった。


「急に消えてごめんなさいね。」

パルコは耳元でローラにそっと囁いた。

ローラはパルコを押しのけた。

「正気ですかパルコさん。SS撮られてますよ、今の。」

ローラの頬は少し赤みがかっていた。

VR機は、脳の信号を直で読み取るゲーム機である。

感情が、出やすい作りになっている。

「ああ、私、そういうの全然気にしないから。」

「そういうのも全然変わらないですね、本当に。いつから気が付いてました?」

「デュエル大会の観戦の時かしら?確信したのは今日だけど。」

「勝手に消えて、勝手に謝って、本当、自分勝手ですよね。」

「ええ、自覚してるつもりよ。」

「謝ったって、私は許しませんから。」

そう言ったローラの顔は、少し朗らかだった。

昔の自分を覚えていてくれた、それだけでローラの心は解れていった。

「それにしてもねえ。随分と変わったわね。」

「パルコさんが変わらなすぎでしょ?」

「シンゲンは知ってるの?」

「まさか、知らないと思いますよ。」

「そうよね。あいつローラファンだもんね。」


遠巻きに見てる男連中は、二人が何を言ってるのかまではわからないが、

女子が二人仲良く戯れている、そんなイメージを抱いていた。

一方、女性陣は、二人の女の熱い戦いを戦々恐々の思いで見ていた。

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