認定日
時野正は、4週間に一回の認定日の為、ハローワークを訪れていた。
まずは、通常受付でセミナーを予約する。
セミナーとは、3、40人が集まって、ビデオを見る事である。
通常40分のビデオをみることになる。
人数制限がある為に、朝一で予約した。
その後、認定日の受付に行く。
失業認定申告書を提出し、4週間の就職活動並びに就労の報告をする。
「時野さんは、丸印の日に働いたので、間違いないですか?」
「はい。」
「それでは、給与明細を見せて貰えますか?」
「はい。」
時野は、波多運輸サービスの給与明細とタウントカンパニーの手当明細を見せた。
「はい、間違いありませんね。現在の就職活動はどうなってますか?」
「まだ、探してる段階です。」
「わかりました。では次回の認定日は、4週間後のこの日になりますので、忘れずに来てくださいね。」
「はい。」
これだけで、28日分の失業保険が、入金される。
チョロイもんである。
時野の場合、失業給付はMAXで貰えるため、日当約7000円が支給される。
ただ、働いた日数は、先延ばしで貰う事になる為、28日分が貰えるわけではない。
次は、就職案内の窓口に行き、相談を受けた。
「何か気になる会社は、見つかりましたか?」
「いえ、年齢的な物もあって、なかなか見つかりません。」
「そうですねえ、時野さんの年齢だと厳しいかもしれませんね。
また定期的に来てください。」
「はい。」
東京の相談員だと、物凄い人数を相談しないといけない。
しかも、ある程度、相談員をやってると、コイツは失業保険目当てだなというものが、わかってくる。
いちいち、そういう人間を相手にしてられないので、流れ作業のように、終了する。
相談員が親身になるのは、必死に就職先を探してる人だけで十分なのだから。
その後、予約していたセミナーのビデオを見終わり、時野はハローワークを
後にした。
次は、4週間後の認定日まで、来る必要が無い。
通常、失業保険を貰うには、2回の就職活動実績が必要になる。
つまり、認定日に、相談を受け、もう一日、ハローワークに来なければ、ならない。
しかし、これを認定日に一気に終わらせる方法が、時野がとった行動だった。
認定日当日に、セミナーを受け、就職相談をすれば、たった一日で終わらせる事ができる。
都会の人間には、大人気の方法だが、田舎では、そんなに人気はない。
セミナー数が少ないのと、もう一日は、パソコン検索だけでOKなのだ。
ちょっと行って、パソコン検索すれば終了するので、気軽に行ける田舎では、一日で終わらせようとする人は、多くはない。
一か月の就活ノルマを達成した時野は、適当な場所で昼をとり、フォンデで、
お土産を買って波多運輸サービスに向かった。
「時野さん、いらっしゃい。今日は、認定日ですか?」
会社には、春子が一人で留守番をしていた。
「ええ、よかったらケーキ食べませんか?」
「頂きます。コーヒー入れますね。」
「そうだ、シフトを確認しておこう。」
時野は会社の壁に貼ってあるシフト表をチェックして、手帳に印を付けていった。
「肉体労働、どんなです?」
「最初は、体にきましたけど、そろそろ慣れましたよ。」
「失業保険、終わったらどうするんです?」
「まだ考えてませんね。」
「時野さんは、本当、呑気なんだから。」
「まあ独りもんですしね。それに45歳未満は、2ヶ月延長できるようで。」
「そんな制度まであるんですか?」
「ええ。」
「時野さんって、金食い虫なんですね。」
「いやいや、20年間、高い金、払って来ましたから・・・。」
時野がコーヒーとケーキを頂いていると、波田進が帰ってきた。
「社長もコーヒーでいいですか?」
「はい、お願いします。」
「先に頂いてるよ。」
「この時間に居るって事は、認定日か?」
「ああ。」
「そろそろ身の振り方を考えたらどうだ?」
「俺がか?」
「他に誰が居るんだよ。」
波田がそう言うと、時野は波田を指さした。
「は?」
「看護士さんかあ。」
ギクっ!!
「えっ、何何?」
春子は気になって、急いでコーヒーを持ってきた。
「知ってます?春子さん。コイツ、前のオフ会で連絡先交換してたみたいですよ。」
「えっ、いつのまにっ!!」
「い、いやその・・・。時野、お前見てたのか?」
「いや全然。カメリエーラ居たろ?未菜ちゃんって言うんだけどな。
その未菜ちゃんに教えて貰った。」
「・・・。」
「意外だなあ。社長がそんな人だったなんて・・・。」
「向こうから、らしいですよ。」
「ああ、それなら納得。」
「今は、俺の事よりだな・・・。」
何とか話を戻そうとしたが、無駄だった。
その後、春子と時野に根掘り葉掘り聞かれることとなってしまった。
現在は、休みの日に食事したりと、まだ付き合うとかの前の段階だった。




