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ダンスダンスざんす

未菜は以前の約束通りに、千勢の道場へと足を踏み入れた。

入口で、千勢は出迎えてくれ、久々の再会に喜んだ。

「未菜ちゃんたら、こんなに綺麗になって。」

そういって、頭を撫で撫でする千勢。

最後に会ったのは、中学の時だった。

「あ、あの、先生、私もう二十歳なんですけど。」

未菜にしては珍しく、顔を赤らめ、照れていた。

「私にとっては、いつまでたっても孫みたいなものよ。」

そう言って、撫で撫でしながら千勢は笑った。

【これは、本当に恥ずかしい・・・。今ならベル様の気持ちが・・・。】

未菜がそう思った時。


チロリ~ン♪


写メを撮った音がした。

「ちょ、ちょ・・・、何してるんですかっ!」

写メを撮った人間の方を睨む未菜。

「いやあ、未菜ちゃんの意外な一面が見れて、俺は嬉しいよ。」

「というか、何でここにいるんですかっ!」

「どうも、特別講師の時野です。」

そう言って、片膝を折り、未菜の手を取る時野。

「せ、先生、時野さんが講師なんですか?」

「ピッタリな講師でしょ?幸い時野さんには無限の時間があるらしいから。」

「先生、こいつは、単なる無職ですっ!」

「酷いなあ未菜ちゃん・・・。」

「時野さん、今撮った写メ見せて頂ける?」

千勢に言われ、写メを見せた。

「本当、未菜ちゃん、可愛いわ。後で私にメールくださいね。」

「わかりました。」

「ちょっ、無断で撮った写メを勝手に送らないでください。」

人の事を言えた義理ではないが・・・。

「まあまあ、可愛いから、いいじゃない。」

「あのねえ・・・。」

「さあ、そんな事より、中へ入ってダンスの練習をしましょう。」

千勢に言われ、うやむやになった。


台本の最後のシーンを千勢と時野は、さらっと読んだ。

「面白そうだね。是非、見に行くよ。」

「来なくていいです。」

「私は、なぎなた部の子たちに誘われてるから、見に行くから安心してね。」

「・・・。」

何を安心するんだろうと思う未菜。


「私がお姫様をやりますんで、時野さん王子役をお願いね。」

何故かノリノリな千勢。

「わかりました。千勢さんは、人形のように座ってください。後は俺が、

 リードしますんで。」

「宜しくね。ダンスなんて何年ぶりかしら。」

凄く嬉しそうだ。


人形のように座る千勢。

そして時野の伝家の宝刀、片膝付きの甲にキス。

普段からやりなれてる為、まったくの違和感がない。

普通、日本人がやれば、違和感ありありで、見てる方もむずがゆくなるものだが、

時野には、それがまったくない。

完全なナチュラル。


そして、ゆっくり、ゆっくりと千勢をリードし、ダンスを始める。

スロー、スロー、スロー。

徐々に徐々に、テンポを速めていき、完全に表情を取り戻した千勢とダンスを

踊りきった。

音楽もないのに。

見ていた未菜の耳には音楽が鳴っていたように感じた。


「どう?未菜ちゃん。」

時野が聞いた。

「す、素晴らしかったです。」

「よし、今度は未菜ちゃんがやってみようか。」

「できるかーーーーっ!」

思いっきり突っ込む未菜。

「未菜ちゃんなら、出来るよ。」

「何の根拠が・・・。」

「ほら、よく俺の娘みたいって言われるじゃん?」

一部常連客から言われてるが、それは女ったらし同士という意味合いで。

「それとこれとは違うと思いますが・・・。」

「あら、未菜ちゃんは時野さんの娘さんだったの?」

「全然違いますっ!てか先生は、うちの両親知ってるでしょ。」

「そうでしたね。」

ふふふと笑う千勢。

「まあ、何事も練習だよ。」

そうして、時野による、エスコート講座が始まった。

やはり、長年積み重ねてきた、片膝づきは、直ぐに身につくものではなく。

簡単にはいかなかった。

ダンスの方は、元より女性側が踊れるために、そんなに苦にすることは、

無かった。

「よし、今日だけじゃあ無理なんで、時間がある時に練習だね。」

「えーーーっ。」

「未菜ちゃんが、また来てくれると思うと、私も嬉しいわ。」

とても、断れそうにない雰囲気の為、定期的に時野のエスコート講座が

続くことになってしまった。

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