ラストショットは突然に
【あわわわわ・・・、ついにアレを超えてしまったかも。】
カルディナは、内心でそう思った。
カルディナにSSを教えた聖騎士団の女性団員が、以前、カルディナに
こう言った。
「いいですか?プロっていうのはね、いついかなる時にチャンスが
来てもいいように、SSは常に常駐させとくものですよ。」
と。
って、何のプロだよ・・・。
パーティー解散後、興奮冷めやらぬカルディナは、自分のギルドへは
帰らず、ヨルムンガンドに直行した。
「あらカルディナさん、こんな夜遅くにどうしたの?」
カルディナは、ターヤが居てビックリした。
むしろ、主婦がこんな夜に居る方が問題あるんじゃと思ったが、
口には出さなかった。
「あのう、ミズたんは?」
「あの子は、お寝むの時間だからって、もう寝たわよ?」
【こ、子供かっ!】
カルディナは心の中で突っ込んだ。
「ちょっと、ターヤ、勝手な事言わないで!これからが私の時間
なのよ。主婦は、さっさと旦那の相手でもしてくれば?」
「はあ?」
物凄い形相で睨まれ、ビビりまくるミズガルド。
「カ、カ、カルディナは、何の用なの?」
震える声でミズガルドが聞いてきた。
「いや、まあ、ついに究極の一枚を撮ったんで見せに。」
「・・・。」
「・・・。」
沈黙するミズガルドとターヤ。
そして30秒後、ようやくミズガルドが口を開いた。
「あんた、まだやってたの・・・。」
「まあいいでしょう。落ちようと思ってましたが、カルディナさんの
一枚を見てからに。」
そう言って、腰を下ろすターヤ。
「しょうがないわね、見てあげるわよ。」
座ったまま、言うミズガルド。
「聞き捨てなりませんわね。私のギルドのアレを超えると?」
そう言って、ターヤの隣に腰を下ろすルビア。
「「「!!!」」」
驚くカルディナ、ミズガルド、ターヤ。
「ルビアさん、いつの間に?」
ターヤが聞いた。
「少し前に来て、瑠璃コガネを見てました。」
「そ、そうなのね。」
「カルディナさん、究極の一枚見せて頂きましょうか?」
ルビアが言う。
【あ、あっれー、なんかハードルが凄く上がったような・・・】
撮った時点では、自信があったのだが、3人の圧力を受けて、
段々と自信が無くなってきた。
怖いお姉さんが二人居て、手間取ると怒られそうなので、
諦めて、SSを表示させた。
カルディナの究極の一枚。
頭を撫でられたベルラインが、頬を染めて、照れ笑いしているシーン。
顔がアップで撮られており、撫でてる手しか写っていない。
「うごごごごっ・・・。」
ミズガルドが唸る。
ターヤとルビアは、言葉を失った。
「そ、そそそそそ即、送りなさい。」
どもるミズガルド。
「ミ、ミミミミミ、ミズガルド、直ぐにチーム一斉送信を。」
「タ、タタタタタ、ターヤさん、私にも送ってください。」
ヨルムンガンドのギルドルームが慌ただしくなってきた。
「すみませんが、今日は失礼します。カルディナさんSSありがとうね。」
そう言って、ルビアは足早に去って行った。
ヨルムンガンドのギルドルームでは、騒ぎが大きくなっている。
「誰、この手?」
「も、もしかして総受け?」
「でも女性っぽくない?」
「これ誰撮ったの?」
「カルディナさんみたいよ。」
そうして、ギルドルーム内に居た全員の視線がカルディナに集中する。
魔女たちの視線を浴びて、ご満悦のカルディナ。
「「「カ、カルディナさんっ!この手は誰の手?」」」
全員の質問がハモった。
「えーと、うちの新人のグランマさんです。」
カルディナが答える。
「女性ですよね?」
「え、ええ。」
一同が安心する。
「てか、ベル様も照れ笑いするのね。」
「ベル様だって女性だもの。」
「でも見た事ないわ。」
「ベル様、かわえええ。」
「ある意味、アレを超えましたが、ある意味じゃあ超えてませんね。」
サーラが恍惚の表情でSSを見ながら答えた。
「ある意味ですか?」
カルディナが聞いた。
「ええ、ベルファンにとっては、これが究極と言っても間違いないでしょう。」
「ああ、なるほど。」
カルディナは、納得した。
ベルサラにとっては、二人が写ってこその究極といえる。
「カルディナ。」
ミズガルドが名前を呼んだ。
「何?」
カルディナは、ミズガルドの方を向いた。
「グッジョブ!」
そう言って、ミズガルドは、親指を立てた。
それに対して、カルディナは満面の笑みで返した。
この時のカルディナは、今が幸福の頂上という事は知らず、
ましてや、これが大惨事の引き金になるとは、思いもしていなかった。




