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学祭準備

テスト休み中であっても、運動系サークルは、練習がある。

千鶴は、午後から大学へ行ったのだが、何故か未菜と遭遇した。

「あれ?テスト休み中ですよね?」

千鶴が未菜に聞いた。

「学祭の演劇の打ち合わせがあんのよ。」

「ああ、なるほど。」

千鶴たちの通う大学にも、ミスコンが、もちろんある。

ミスコンは、学祭の最後に開催され、1年~3年生の中から選ばれる。

4年生は、就活がある為、除外される。

ミスに選ばれると1年間、色々な行事に参加しないと

いけない為、4年生には、そもそも無理なわけで。

ミス大学の最後の仕事は、翌年の学祭の演劇となっている。


「未菜にお願いがあるんですが?」

「何、何何?」

千鶴からお願いなんて、殆どされることがないので、喜ぶ未菜。

「おばあ様の弱点と言うか、薙刀の弱点を教えてください。」

「・・・。」

「未菜なら中学まで、おばあ様に習ってましたよね?」

「き、基本をね。先生がレベル20を超えて一度も勝ってないの?」

「ええ。」

「まあ、考えてみるわ。」

「お願いします。」

お互い時間が無かったため、直ぐに別れた。


「こんにちわ。」

未菜は、演劇部が練習中のホールへ入り、挨拶をした。

「刈茅さん、いらっしゃい。」

4年の部長が招き入れてくれた。

「皆さん、知ってると思いますが、ミスK大の刈茅さんよ。百合な人

 なんで、一年生は、特に気を付ける事。」

殆ど女子ばかりの部員に、ヘラ顔の未菜。

「ちなみに彼女も演劇部員だからね。」

「「「ええええっ。」」」

一同が驚く。

同じ2年生ですら。

「未菜、いつ、うちに入ってたのよ?」

同級生が話しかけてきた。

「いや、わりと直ぐよ?」

女性が多いという理由で即入部した未菜。

が、例のベロチュー事件で、直ぐに出禁に。

「和美先輩が、本当に怒ってたからね。殆どの部が出禁状態よ。」

部長が説明した。

「でもね、私、初めてあなたを見た時から、こういう脚本書いてみたかった

 のよねえ。」

目がギラギラしている部長。

ミスK大の最後の仕事は、学祭の演劇だが、ある程度の要望は聞いてもらえる。

未菜が要望したのは、王子様役。

「今回は、眠れる森の美女をオマージュして私が作った力作よ。」

「眠れる森の美女・・・じゅるり。」

キスシーンを想像して、涎を垂らす未菜。


「すいません、遅れました。」

男性部員が遅れて入ってきた。

「剣持君こっちこっち。」

部長が手招きする。

「よー、未菜も居たのか?」

「てめっ、名前呼びすんじゃねえ。」

かなりのイケメンだが、未菜は容赦なかった。

「つれないなあ未菜は、これから一緒に劇をやるってのに。」

剣持と未菜は同級生だった。

「先輩、屑はほっといて、お姫様役は誰ですか?」

男は無視して、ワクワクの本題に入った。

「剣持君よ。」

「・・・。」

フリーズする未菜。

「ということだ、未菜。宜しくな。」

「お前・・・お姫様役やるのか?」

「ああ。」

「断れよ・・・。」

「俺、俳優志望で、外部の劇団に通ってるだろ?そこの先生がな、

 やってみろっていうんで。」

剣持が先生と呼ぶ相手は、劇団の主催者で俳優の大御所だった。

「俳優目指してる奴が、お姫様役なんてやるかーーーっ。」

未菜は絶叫した。

「一応キスシーンは無いんだけど、どうする?剣持君は入れても

 構わないっていうんだけど?」

「全力でお断りしますっ!台本見せて貰っていいですか?」

「どうぞ。」

未菜は、さらっと台本を読んだ。

眠れぬ森の美女と違って、オーロラ姫は眠っては居なかった。

感情を失い、人形のように座っているオーロラ姫に、

フィリップ王子が手の甲に口づけし、エスコートしてダンスをすると

いうクライマックスが書かれていた。

ダンスをするうちに、感情を取り戻していく。

姫役も難しそうな内容だった。

「お前、出来るのか、これ?」

「まあ、出来ると思うよ?」

未菜の質問に簡単に答える剣持。

未菜は、ガックリした。

未菜が要望したのは、王子役。

まさか、お姫様役を男がやるなんて思いもしなかった。

ただでさえ、演劇部の男は少ないのに。

「これが成功したら、2年連続のミスK大も間違いないわっ。」

部長が未菜に言った。

「そもそも、私、ミスコンに興味がないんですが・・・。」

大学のミスコンと言えば、数十年前には、水着審査だの、芸能界への

登竜門だので、華やかであったが、その分暗躍する者も多かった。

しかし、最近では、ミス大学には教養が求められる。

昔と違いミス大学は、大学の顔となり1年間、様々な行事が義務付けられる。

エントリー制ではなく、完全な学生の投票で行われる。

不正が発覚すれば即退学となるので、近年では、お金だ枕だといったものは

皆無となっている。

K大のように大きい大学になると、学祭参加者は、3割も居ればいい方で、

殆どの人間が、興味なかったりする。

その為、ミスコンの投票率も例年2割程度なのだが、昨年は違った。

新入生に、百合姫がいるとの噂は、速攻で広まり、ミスコンの投票率は、

過去最高の4割まで達した。

面白そうだからと選ばれたのが、刈茅未菜だった。

何年かに一度、こういったノリで、ミスコンが選ばれるのだが、

2年連続でとった試しはない。

1年間の行事活動は、他大学との行事や地域の行事も含まれている。

ノリで選ばれた者は、必ずと言っていいほど失敗し、K大の面汚しとなって

しまう。

もちろん選んだのは自分たちであるから、何も言えた義理じゃない。

そうして、反省し、暫くは、まともな女性を選ぶのだが、5年も経てば、

失敗を経験した生徒は居なくなるので、また同じ過ちを繰り返す。

若いうちは、よくあることである。


しかし、悪しき前例は覆されるためにあるとは、よく言ったもので。

未菜の評判は、すこぶるいい。

何せ外面はいいし、礼儀作法は、やればできるので、

「さすがミスK大。」

とまで、言われる始末。


「先輩、これは喜劇ですか?」

未菜が聞いた。

「いえ、真剣にやるわよ?」

「こいつのお姫様役じゃあ、笑われるんでは?」

「そう?剣持君、着替えて来てくれる。その間に刈茅さんとは、色々

 打ち合わせしておくから。」

「わかりました。」


1時間後、どっからどうみても、お姫様にしか見えない美女が現れた。

「「「おーーーっ」」」

部員たちから感嘆の息が漏れる。

「気持ちわるっ!」

未菜は、鳥肌が立った。

「お前に言われたかないわっ!」

剣持が言い返した。

「声はどうするんです?」

未菜は部長にきいた。

「私の事、舐めてます?」

剣持が女声を発した。

「う、うわっ、き、気持ちわるっ!!!」

更に鳥肌が立った。

「未菜の方こそ、ちゃんとエスコートできるの?」

女声で言う剣持。

「先輩、こいつ殴っていいですか?」

心底、腹が立った未菜。

「まあまあ、刈茅さんはダンスは大丈夫よね?」

「そこそこには。」

「あら、男性役なんて出来るのかしら?」

お姫様が挑発したように上から目線で言う。

「てめえ・・・。そっちこそ女役でダンス出来るのかよ?」

「出来るわよ。役者たるものどっちでも出来なくちゃ話にならない

 でしょ?」

完璧な女声の剣持に、殴りかかりそうになった未菜は、部長に

止められ、何とか事なきを得た。

「未菜ってば、乱暴さんなんだから。」

「コレの手の甲にキスしろと?」

「つける振りで構わないから。」

「はあ・・・。」

最後の最後に、とんでもない仕事が待っていた。

朝のルンルン気分は何処へやら。

まあ、日頃の行いが・・・(以下ry

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