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主役は〇△□

「わざわざ、ご足労いただいて、申し訳ありません。」

チーフは、丁寧に挨拶をした。

今日は、タウントカンパニーで行われるモニターの報告日。

丁寧に挨拶した相手は、時野ではなく、隣に座っている千勢に

対してだった。

「いいえ、全然気にしないでください。いつも楽しく遊ばせて

 頂いてますから。」

「さっそくなんですが、是非、井伊さんにも、モニターになって頂き

 たく。条件の方は時野さんから聞いておられますか?」

「ええ、一応。」

「簡単な健康診断と脳波検査を受けて頂きたいと思ってます。」

「そうねえ。私も若くはないし。」

「VFGXは、どうですか?」

「正直に言いますと、怖いです。」

「怖い?」

「私は、ずっと薙刀をやってきましたが、今ではゲーム内の方が強いです。

 若い人は、そうでもないでしょうが、私達のような年寄りだと、ゲーム

 内の方が動きがいいですからね。」

「そう言った意味で怖いと?」

「ええ。御社は医療機器メーカーですよね?」

「ええ、その通りです。」

「足の不自由な方が、VR機をやられたりはしますか?」

「ええ。病院関係にVR機を無償提供してましたから。」

「そういった方が、現実を捨てVR機の中にずっと居たいと思ったりは?」

「そういう人も居ないとは言い切れませんね。歩けない人の気持ちは、

 本当に歩けない人にしかわかりませんから。」

「私達年寄りからすると、年齢や、体といった全てのハンデが無い世界と

 いうのは、とても魅力的で、そしてとても怖いです。」

「ゲームの世界にのめり込み過ぎると?」

「そうですね。ゲームが終わった後、現実世界で、自分の動きの悪さに、

 幻滅する事がたまにあります。」

「確かに井伊さんの言われることは、よくわかります。でも大半の人は、

 そうですよ。」

「みたいですね。孫にも聞きましたが、ゲームをする人は、運動しない人が

 多いとか。」

「ええ。なので、VR機には色々と制約があります。時間制限とか。

 まあ中には、ゲーム内で冒険もせずに時間制限くらう輩も居ますけどね。」

チーフは、そう言って、チラッと時野の方を見た。

「自分は、きっと現実世界でも千勢さんには敵わないと思いますが?」

時野が言った。

「武道をやってない人はそうかもですね。私は、孫が剣道をやってるんですが、

 とても現実世界では、勝てません。でも先日、ゲーム内では勝つことが、

 出来ました。」

「私どもと致しましては、願ったり叶ったりです。」

「え?」

「年齢、体、性別、そういった差を全てリセットし、誰もが公平な世界を

 作るのが目標の一つです。」

「誰もが?」

「ええ、現実でそういう世界があったら、気持ち悪いですし、ゲームの世界

 だからこそ、そういう世界があっていいかと。」

「なるほど、よくわかりました。私もゲームをゲームとして、今後も楽しみたい

 と思います。」

「是非、楽しんでください。」

「ええ。」

「それから、時野さん。」

「はい?」

「レベルくらいあがりましたか?」

知ってて聞くチーフ。

「釣りのですか?」

「とっくにマックスでしょっ!」

「なっ、何故それを・・・。」

「鯉の記録更新もほどほどにしてくださいね。」

「もしかして、監視されてます?」

「データを見ればわかるでしょ・・・。」

頻繁に鯉の記録が更新されており、運営でなくても、誰もがわかる事だった。

「えーと、善処します。」


時野と千勢は、健康診断を終えて、タウントカンパニーをあとにした。

「千鶴ちゃんに勝っちゃったんですか?」

「え、ええ。」

道すがら時野は千勢に聞いた。

「それは、また・・・。千鶴ちゃん、荒れそうですね。」

「そうでもないわ。あの子には剣道の方をしっかりしなさいと言っておいたから。」

「学生NO1なんでしょ?」

「ええ。私としては、日本一を目指して欲しいんだけど。」

「厳しいですねえ。」

「祖母の勝手な願望なのよ。」

「何か教えてあげれないんですか?」

「無理よ。現実ではあの子の方が、全然強いもの。」

「ゲーム内で教えてあげれば?」

「!!!」

まったくの盲点だった。

何人かの女性キャラには、イメージトレーニングになるからと姿勢は教えてた

ものの、武道の方で、そういう考えは無かった。

「あ、でも薙刀と剣道じゃあ、技が違いますよね。」

「いえ、時野さん。教えれるものもありますよ。」

「ほう。」

「直ぐには教えませんけどね。」

「時期があるんですか?」

「次の大会には、私が出たいじゃない。」

そう言って、悪戯っぽく笑う千勢だった。

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