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フラグは立っていた

トントン山の頂上に3匹のブラックオークが住み着いている。

とても凶悪なモンスターで、普通の冒険者では太刀打ちできない。

この3匹のブラックオークを討伐したものだけに、更なる高みを

目指す資格を与えよう。


これがレベル50の解放クエストである。

トントン山は、それほど険しい山道ではないが、雑魚モンスが、

うざい。

それほど強くもないのだが、逃げるほどでもない。

6人で移動していたら、誰かがポップに当たってしまう。

なので、殆どのプレイヤーは殲滅しながら、登っていく。


6人バーティーでポップに当たった場合は、6~8匹のモンスと

戦闘になる。なまじ数が多いから、面倒くさいのだ。

「なんなの、このミニカブトって、弱いくせに当たってきますよ?」

カルディナが誰にともなし、文句を言った。

ミニと言っても、人の顔くらいの大きさで、カブトムシが鎧兜を

被っている。

はっきり言って、雑魚中の雑魚で、標本の人気もない。

他には、鳥系なんかも出て来るが、とにかく弱い。


しかしまあ、最低でも6匹出て来るので、強い敵が出て来ても

困りものだとは思うのだが。

6匹の雑魚が出て来ても、カルディナは特に何かをしてるわけでは、

ない。

3匹は、サトシのスキル、トリプルダガーでやっつけ、

もう3匹は、カラットがやっつけている。


どのRPGも、多くの物が短剣は、範囲武器として扱われている。

そういう意味でも、ソロで動く人達が多く使用している武器となっている。


「ベル様、カンピオーネって、あれスキルですか?」

「いや、ただ殴ってるだけだ。」

「恐ろしい・・・。」

カルディナは、カラットとは挨拶していないし、今まで会った事もない。

しかし、ある程度VFGXをやっていれば、カラットの事を知らない人間は、

まず居ない。


「まあ、頂上まで何もしない手はないな。カルディナ1匹担当して、

 気絶させてみろ。」

ベルラインが言った。

「き、気絶?」

「雑魚なんて、倒すのは簡単だろ?だから倒さず気絶させてみろ。」

「・・・。」

「カラット、次の戦闘は、1匹だけ気絶させてくれ。」

「はい。」

カラットは簡単に返事をした。


次の戦闘は、ヒョロヒョロバードが8匹出現した。

サトシが、トリプルダガーを発動させ、3匹倒す間にカラットは、4匹

倒し、1匹を気絶させた。

ヒョロヒョロバードは死んだように動かない。

「これが気絶ですか?」

カルディナが聞いた。

「そうだ、虫じゃあ無いから標本に出来ないがな。」

そう言って、ベルラインは、止めを刺した。

「相手が死なない程度の攻撃で、急所に打つという難しいものだがな、

 カルディナの片手剣なら出来るだろう。」

「は、はあ。」


「ルビアさん、そんなに睨まなくても?」

後方で二人並んで歩いているターヤがルビアに話しかけた。

「そんなに睨んでませんよ・・・。」

「ビショップさんは、教会の為に今まで嫌なことも引き受けてると

 聞いてます。ビショップさんは許してあげたら?」

「そ、それはそうですが・・・。」

「あの子とサーラさんを合わせるのが怖いの?」

「そうですね。今日だって、偶々私が来たからいいけど、サーラさんが

 来てたらどうするつもりだったんですかね。」

「少し過保護じゃないかしら?」

「え?」

「だって、サーラさんは僧侶不毛時代に教会を立ち上げた人でしょ?」

「女神のような方です。落ち込んでた私に優しく話しかけてくれましたから。」

教会のギルメンが、サーラントを崇拝してる元がこれだ。

「私は、優しさだけじゃあないと思うんだけど。」

ターヤは、ベルサラの人間である。

ターヤにとっては、ベルラインと並び立てるほどにサーラントも強い人間

だと勝手に思い込んでいる。

まあ、間違っては居ないのだが。

「私は、出来るなら会わしたくないと思ってます。」

ルビアは言った。


「カルディナ、次は一匹お前が担当しろ。わかったな。」

「了解。」

次にポップが当たってきたのは、ミニカブトだった。

しかし、敵は、ミニカブト一匹。

【えっと・・・、私が担当すんのこれ?】

と、カルディナが考えていると、カラットが神速の速さで、ミニカブトを

殲滅した。

「ちょっ・・・、私の・・・。」

「カルディナ、来るぞっ!構えろっ!」

突然、周りが暗くなる。

そもそも、6人パーティーでポップに当たれば、6匹以上が確定する。

それが、1匹しか出ないという事は・・・。


今まで聞いたこと無いような音楽が流れだした。

全長7m以上はある、黒光りするキングヘラクレスが登場した。

登場するやいなや、キングヘラクレスは一気に突進してきた。


がっちり構えて待ち受けるのは、ベルラインとカルディナの二人。


ガコォっ!!!


突進によって、ベルラインは、5割、カルディナは8割のHPを奪われた。

「ちょっ・・・。」

慌てるカルディナだったが、ダメージを負ったと同時にHPは最大まで、

回復していた。

【こ、これが、教会のクレリック・・・。】


サトシは、既にスキルを発動させ、攻撃した。

短剣は、雑魚戦は範囲攻撃、ボス戦は状態異常攻撃と言うのは、RPGで多く

見られる仕様であり、VFGXでも同じだった。

サトシは、速度低下の毒を使った。

虫系に関しては、毒が効き難い。

甲殻類なんで、表面が固いからだ。

しかし、そこはムシキング、虫の弱点は知り尽くしている。


ターヤは、ミニカブトが1匹しか出なかった時点で、呪文を唱え始めていた。

ターヤが持つ最大級の魔法の呪文を。

しかし、それが放たれる事は無かった。


「すみません。ターヤさん。あれひっくり返せませんか?」

魔術師や僧侶の人間に呪文詠唱中に話しかけるのはタブーだ。

それでもカラットは、あえて話しかけた。

「ひっくり返す?」

ターヤが返事をした時点で、呪文は中止された。

「ええ。」

「わかりました、やってみましょう。」

「お願いします。」


その間、ルビアは、補助魔法をベルラインとカルディナに掛けていた。

2回目の突進では、ベルラインが3割、カルディナが5割のダメージしか、

受けなかった。

パーティーを組んでいれば、仲間のステータスが確認できる。

それ故にカルディナは思った。

【私とベル様の何が違うというの?】

ベルラインに憧れてるカルディナは、武器こそ違う物の防具は殆ど変わりは

ない。

補助スキルについても、特段変わった物は無い。

それでも、ダーメージ差がここまで顕著に表れている。


サトシは、短剣スキルの飛行封じを使っていた。

その甲斐あって、2回目の突進のあと飛ぶ素振りを一瞬みせたが、不発に

終わった。

地を這う突進と、飛んでくる突進では威力が全然違う。

もちろん、ゲームであるから、いきなり飛んで突進なんて無理ゲーはない。


そして、ターヤのミドルトルネードが発動した。

トルネード系の魔法には2種類存在する。

モンスをターゲットにするものと場所をターゲットにするもの。

ミドルトルネードは、後者の魔法で、ミドルと言うだけあって、威力も

それほどない。


キングヘラクレスの体の下で発生したミドルトルネードは、簡単に巨体を

浮かせることが出来た。

慌てたキングヘラクレスは、羽を広げようとしたが、飛行封じが効いていた

為、羽を広げる事が出来ず、バランスを崩して、ひっくり返った。


既に跳躍していたカラットは、拳に風の魔法を纏い、キングヘラクレスの

角の付け根、目と目の間に強烈な一撃を入れた。

虫系のモンスは、地属性のものが多く、VFGXでは、地に強いのは風となっている。


見事キングヘラクレスは、気絶した。

サトシがスキルを確認すると、採集を発動する事が出来た。

人の大きさ位ある注射器と人の大きさ位あるビンが2つ出現した。

「なんですか、あれ?」

カルディナが聞いた。

「恐らく採集だろうな。」

ベルラインが答えた。


キングヘラクレスと言えど、所詮はカブトムシ。

ムシキングが、採集を失敗するはずもなく、キングヘラクレスは見事、標本と

なった。

全長7m以上ある巨大な標本に。


「ベルラインさん、やりましたっ!」

大喜びするサトシ。

「・・・。」

「どうぞ貰ってください。」

「・・・。」

「どうやって持ち運ぶんですか?」

カルディナが聞いた。

「アイテムボックスに入れれば、大丈夫ですよ。」

「なるほど。じゃあ私が預かって、団長に渡しときましょうか?」

「そうですね。是非お願いします。」

そう言って、カルディナはトレードでキングヘラクレスの標本を貰った。

「ベル様、よかったですね。」

「・・・。」

今更、要らないとは言えず、何の言葉も発する事が出来なかった。

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