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代打

「団長、パーティーで戦う時のコツを教えてください。」

ある日、カルディナは、ギルドルームでギルバルトに話しかけた。

「はっ?」

基本、カルディナは男に頼み事をしない。

娘紹介しろだ、妹紹介しろとかは、しょっちゅうだが。

「そう言うのは、慣れだからなあ・・・。」

元々、聖騎士団では、他のギルドメンバーと組むときは、カルディナは、

連れて行かない。

今までのつけとも言えるが。

「じゃあ、今日、俺の代わりに行ってくるか?」

「何かあるんですか?」

「黒豚狩りだ。」

「ああレベル50の解放のやつ?」

「そうだ。」

レベル50の解放クエストが、ブラックオークの三匹討伐だが、

プレイヤーからは、黒豚と呼ばれていた。

このクエストをクリアすると、レベル55まで上げる事が出来る。

カルディナは、自分のはもちろん行っているし、クレインのにも付き合って

行っている。

「あれって、盾が3人は居るんじゃ?」

「まあ、3人居たら安定するが、ベルが居るから大丈夫だろ。」

「行きますっ!」

即答だった。


ベルラインがONして、ギルドルームに行くと、ギルバルトの傍に、

カルディナが居た。

「ベル、俺の代わりに、カルディナを連れてってくれ。」

「・・・。」

無言のまま、カルディナを睨むベルライン。

無言の圧力でカルディナは、少し怯んだ。

「どういうつもりだ?」

「たまには違うメンバーと戦闘しないと、伸びないだろ?」

「こいつを伸ばしてどうする気だ?」

「・・・。」

返答に困ったギルバルト。

「まあいい。今日のメンバーならどうとでもなるだろう。」

「よろしく頼む。」


ベルラインは、仕方なくカルディナを連れて行った。

待ち合わせ場所には二人の男が待っていた。

それを見たカルディナは、少しテンションが下がった。

「ベル様、男ですよ?」

「それがどうした?」

「・・・。」


「いつもすみません。ベルラインさん。」

サトシが頭を下げて挨拶してきた。言わずと知れたムシキングである。

「すっかり辞めたのかと思ってたが、Lv49になったようだな。」

レベル50解放クエストは、レベル49から受ける事が出来る。

「どうにかやっとです。そちらの方は?」

「ギルバルトの代わりに連れてきた。」

「どうも、サトシと言います。宜しくお願いします。」

「こちらこそ、カルディナと言います。」

いつもの如く最初だけよそ行きバージョンで挨拶する。

「聖騎士団の方は、礼儀正しい人が多いですよね。」

サトシは感心したように言う。

「こいつは、完全に猫被ってるだけだ。そのうちわかる。」

「そんなあ。私、いつもこうですよ?」

白々しいカルディナ。

もう一人の男は、木の枝に座って足をブラブラさせている。

見た目も子供っぽく、仕草も子供っぽかった。

「あと、何処に声を掛けてるんだ?」

ベルラインが確認した。

「一応、教会の方へ声かけてます。」

「まあ、そうだろうな・・・。」

ベルラインは、嫌な予感がした。

サーラントが来るんじゃないかと・・・。


「お待たせして、すみません。」

まさかの怖いお姉さんが来た。

「いえいえ、わざわざルビアさんに来て貰えるなんて。」

サトシが出迎えた。

「GMの方が、別の要件が入ってまして、すみません。」

「とんでもないです。自分の解放クエ如きに副GMさんが来てくれただけでも、

 自分には勿体ない事ですんで。」

ルビアが現れた瞬間にカルディナはフリーズしていた。

「あら、カルディナさんも居たのね。」

とても友好的とは思えない目つきでカルディナを見るルビア。

「あと一人はどうしましょうか?」

サトシが言った。

「私がヨルムンガンドに声かけておきましたので、もう少ししたら誰か来ると

 思います。」

ルビアが言った。

「わざわざすみません。それでお礼の方なんですが。」

教会は、僧侶の派遣ギルドである。

派遣して貰えば対価を払うようになっている。

「うちは、サーラさんが、虫系は駄目なんですが、蝶だけは大丈夫なんですよ。」

眠れぬ教会のギルドルームは、ステンドグラスが多く、壁には色とりどりの蝶が、

埋め込まれていた。

「ええ、聞いてますんで。レインボーアゲハを用意しました。」

「いつもすみません。」

「いえいえ、いつも助けてもらってるので、お安いもんです。」


先ほどまで来るんじゃなかったと思ってたカルディナだが、この時僅かな

希望にすがってた。

ミズたん来てくれ、ミズたん来てくれっと頭の中で繰り返し唱えていた。


「お待たせしてすみません。」

ターヤが現れた。

カルディナにとって最悪の組み合わせになってしまった。

「わざわざすみません。」

サトシが、ペコリと頭を下げた。

「いえ、サトシさんは英雄ですから。」

「いや、全然違いますよ・・・。」

「そんな謙遜なさらずに。」

ターヤは笑いながら言った。


「ベル様、あの男、何者なんですか?」

カルディナが小さな声で聞いた。

「ムシキングだ。」

「あ、あれが・・・。」


「ターヤさんの所は、虫はなんでもいいんですよね?」

「ええ。本当いつもすみません。」

「これなんてどうです?瑠璃コガネなんですが、市場には出してません。」

「「き、綺麗・・・」」

ターヤとルビアが瑠璃色のコガネに見とれた。

コガネ系は、宝石のようなものが多く、人気が高い。

この瑠璃コガネは、ポップでは存在しておらず、レアモンス扱いとなっている。

サトシも、まだ一回しか出会った事がない。

「羨ましいわ。ターヤさんの所は、虫は何でもOKだから・・・。」

「それはうちは、魔女なんですから、虫が苦手ってなると問題でしょ?」


「ベル様、うちには無いんですか?」

「要らん、必要ない。」

聖騎士団のギルドルームの内装は、ギルドルームが実装された初期の物から

変わっていない。

中世ヨーロッパを思わせるようなシンプルな物になっている。


「ベルラインさんの所には、いつもお世話になってますし、何か受け取って

 欲しいんですが?」

「必要ない。虫の洞窟を解放してくれただけで十分だ。」

「いやでも、ギルバルトさん共々、いつも手伝って貰ってるし・・・。」

「それを言うなら、あいつだって報酬は貰ってないだろ?」

ベルラインは、そう言って、木の枝に座ってる男を指さした。

「カラットさんには、多少ですがお金を。」

多少と言っても200万だが。

「なっ・・・。カラット、貴様金を貰ってるのか?」

「僕は要らないって言ったんですけどね。」

「ぬっ・・・。」

「だから聖騎士団の方でも何か受け取って欲しいんですが?」

「そ、そうだな。ならキングヘラクレスの標本が出来た場合は、貰うと

 しよう。」

キングヘラクレスは、レアボスだった。

通常のレアモンスよりも更に出現率が低く、今までも数例しか目撃が無い。

討伐に至っては、連合の1例だけだった。

「わかりました。いつになるかわかりませんが、その時は受け取って

 下さいね。」

「ああ。」


6人が揃い、パーティーは、クエストへ出発した。

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