聖騎士団入隊
「皆、待たせたな。」
現在、聖騎士団のギルドルームにはONしている人間の殆どが、
ギルドルームに集まっていた。
カルディナは、ベルラインとグランマの二人の姿を見て、肩を
落とした。
「決まったようだな。」
ギルバルトがベルラインに声を掛ける。
「ああ、よろしく頼む。」
「皆、新しく入隊する、グランマさんだ。名前の通りではあるが、
クレインのお祖母さんだ。粗相のないように。」
ギルバルトが全員に向けて言った。
「「「お、お祖母さん・・・。」」」
その場に居た殆どのギルメンが、戸惑う。
「何分ゲームは初めてですので、宜しくお願いします。」
グランマが丁寧に挨拶をした。
「「「よ、宜しくお願いします。」」」
「カルディナさんも宜しくね。」
「は、はいっ。」
「「「???」」」
【なんだあのカルディナは?】
【びびってねえか?】
【借りてきた猫みたいに大人しい・・・】
「ねえ、カルディナさんどうかしたの?」
女性団員がカルディナに声を掛ける。
「な、なんでもないから・・・。」
「ちなみにグランマさんは、カルディナの薙刀の先生でもあるそうなんで、
カルディナ関連で困った事があれば、相談するように。」
「げっ・・・。」
ギルバルトが、速攻でばらした為、カルディナは焦った。
「「「なるほど。」」」
全員が納得した。
その後、グランマは、女子団員に囲まれ、色々と質問攻めにあっていた。
「ベルは、グランマさんの目標を聞いたか?」
「ああ、レベル50だそうだな。」
「確かにギルドに入るのが一番近道だろうが・・・。」
「貴様が気に入られたんだろう。責任は貴様がとれ。」
「ちょっ・・・。」
最終判断はベルラインがしたと文句を言いたがったが・・・。
「団長、うちは物心ついた時には、祖父母は他界してて。」
幹部の一人が言った。
「気にするな、俺んとこもだ・・・。ベルはどうだ。」
「私の所も同じだ。」
「そうだよなあ。生きていたとしても一緒に暮らす奴も珍しいだろ。」
「うちは、祖父母の家は遠いのでもうずっと会ってないですね。」
別の幹部が言った。
「だよなあ。俺も結局合わず仕舞いで葬式だったもんなあ。」
違う幹部が答えた。
「働いて家庭持つようになったら、親さえ会わないもんなあ。」
「だよなあ。」
幹部たちは、しみじみと自分の親を思い浮かべていた。
「ゲーム内のエチケットについては、クレインちゃんがしっかり教えてる
そうなんで、我々が苦労する事はないだろう。」
「はあ。」
「それなら、問題ないですね。」
「俺たちは、年配者を敬う気持ちで接すればいいか。」
ギルバルトが結論づけた。
「「「そうですね。」」」
幹部たちもそれで納得した。
【ちょっとクレイン、もう夜遅いけど先生、大丈夫なの?】
カルディナは、クレインと個人トークしていた。
【普段から、おばあ様は、12時就寝ですよ。】
【ゲ、ゲームのやりすぎは、お体に障るのでは?】
【毎朝の修練もかかしてないようですし、元気ですよ?】
【そ、そうなのね・・・。】
【聖騎士団に入隊決まったんですか?】
【決まったわよ。】
【おばあ様をよろしくお願いします。】
【ちょっ・・・、なげっぱにする気なの?】
【そのつもりはないですけど、おばあ様は、夜は聖騎士団をメインにする
みたいですよ?】
【・・・。】
【私は、夜はテスト勉強ありますし、あまりON出来ないんですよ。】
現在、大学は、テスト期間中だった。
【ちゃんと単位とれるんでしょうね?】
【はい、カルディナのとってくれたノートでバッチリです。】
【同じ履修科目はいいけどさ、他はどうすんのよ?】
【なんとか頑張りますっ!そろそろテスト勉強するんで、落ちますね。】
【了解。】
基本カルディナはノートをとることはない。
教科書は読めば理解できるし、講義も聞いてれば何となくわかってしまう。
生粋の天才だから。
「どうしたカルディナ、元気ないな?」
聖騎士団の古株ハリーが声を掛けてきた。
「うっさいわね。おっさん!」
ハリーのあだ名は、おっさんだった。
「ミルミルが居ないから、寂しいのか?」
「なわけ、ないでしょっ!」
現在、腐女姫もテスト期間中の為、暫くONしていなかった。
「カルディナさん、相変わらず男性には、そういう態度なのね?」
「えっ・・・あの・・・。」
グランマに会話を聞かれていた。
「申し訳ありません。カルディナさんがこんな口の利き方で。」
「いやあ、全然気にしないでください。カルディナは昔からこうですから。
最初だけは、違いましたが。」
そう言って、ハリーは笑った。
「男性が多いギルドで、よくもまあやってこれたわね?」
グランマが言った。
「グランマさん、あんまりカルディナを攻めんでください。こいつは、
うちのギルドに最初に来た女性で・・・。まあ副団長は居ましたけど、
最初に来た娘って感じなんですよ。」
「あなたには、娘さんがいらっしゃるの?」
「あっ、名前言ってませんでしたね。ハリーと言います。団内ではおっさん
って呼ばれてますけど。高校生になる娘が居ます。」
「難しい年頃ね。」
「会話もしてくれません・・・。その点、カルディナはこんな、おっさんでも
話し相手にはなってくれるし、相談にものってくれて助かってます。」
「娘さんの相談を?」
「ええ。紹介しろって言われますが、それは無視してます。」
そう言って、ハリーはまた、笑った。
「あなた、大事にされてるのね。」
グランマは、カルディナに言った。
「・・・。」
「ここは、本当に居心地がいいギルドね。」
「ええ、自分は最高と思ってます。」
ハリーは誇らしげに言った。




