また会えた。
〝3番線電車は大雨のため、運転見合わせとなります〟
「ッざけんなよ…」
帰り道、美優の言葉がひっかかっていた。
『…アオ、絶対何か損してるよ…』
私の心と同じ、曇り空。
損?何を?
思い当たるものがない。
「…損なんかするはずないじゃん」
下駄箱から投げるように出した靴が静かな昇降口に大きな音を聞かせる。
部活に行く生徒に抜かされ、ゆっくり靴を履いて立ち上がった。
あぁぁ~…ダルい。
血糖値が下がってる証拠だ。
帰ったら昨日買ったシュークリームを食べよう。
校門を出て、また空を見上げる。
シュークリームの雲を探してるわけじゃないよ?
「…損って…何?」
見つめていた先に、青白い縦長の光がはしる。
…イルミネーション?
ッッッドーーーーンッッ!!!!!
「ッッ!!!」
その瞬間、空が泣いた。
で、今は駅。
あーあ。ズブぬれ。明日も学校なのに。制服乾かさなきゃいけないのに。
ぬれた毛先をくりくり。
周りを見れば私とオソロ状態(ズブぬれ)の学生。部活が中止になったのか?
そして、ギャル。
そして、オッサン。頭は砂漠化→ワカメ化している。
…なんか悲しい。
結局今日も最悪じゃん。
このまま毎日が最悪になるのか?
さっきから座っているベンチ。背中合わせで人がいるのを忘れ、大きくノビをする。
当然、誰か当たった。
ヤベ。
後ろにグルリ。頭をペコリ。
「すみません」
「あ、いいえ。大丈夫ですよ。」
聞き覚えのある声。
男の人の声なのに、低くもなく、高くもない、響かない、優しい声。
目の前には、ぬれて若干黒さを増したであろう、茶髪の髪。
聞いていた音楽プレイヤーのイヤフォンをとった大きな手。
以前、私に向けたその笑顔。
「あれ?葵ちゃん?」
「一ノ瀬君…だよね?」
〝またね〟
あの時のまたねって…これのこと?
また、会えちゃった。