杜景晨の内心日記
2018年9月1日 晴れ。
今日は中学の初日。
いつもより二十分早く起きた――勉強のためじゃない。鏡を見るためだ。
髪がちょっと乱れていたから、水を吹きかけて手で押さえた。
鏡の中の自分は、まあ悪くない。もう少し色が白ければもっといい。
「まあいいや。どうせ顔で勝負するタイプじゃないし。」
台所から母さんの声。「早く食べて、遅刻しないよ!」
肉まんをくわえながら思う。
――もし可愛い子に、俺が肉まん齧ってるところを一発目で見られたら、印象が最悪だ。
慌てて飲み込んで、口を拭い、「行ってくる!」。
通学路は人が多い。
鞄は新しく、制服も新しい。空気には“新学期の匂い”。なぜか機嫌がいい。
「新しい同級生、やり直せるチャンス。今回はちゃんと掴む。」
頭の中で目標を決めた。
見た目のいい女子を一人、成績が自分より下の男子を何人か――そして、クラスで“存在感あって好かれるやつ”になる。
完璧な計画に聞こえる。
校門に着くと、横断幕・スローガン・放送でにぎやか。
流れに乗って校庭へ。陽光が目に刺さる。
きょろきょろしていたとき、ふと彼女が目に入った――
高い位置でポニーテールを結んだ女子。
肌が白く、笑うとすごく自然。
誰かと言葉を交わすとき、横顔に陽が当たり、目が光ったみたいだった。
一瞬、見惚れた。
「いや、可愛すぎんだろ」と心の中でつぶやく。
すぐ目を逸らしたふりをするけど、やっぱり二度見してしまう。
「同じクラスになれたらいいな。」胸の中でこっそり願う。
軍訓が始まる。
太陽はほとんど頭の真上。首の後ろが真っ赤になった。
隣の男子が「暑すぎ」とぼやく。
「文句言うな、トレーニングだと思えよ」と口を挟む。
「出たよ、お前だけだろ」と笑われる。
「当然、頭は回るからな。」半分冗談で言う。
「へえ、成績どうなん?」
「十番以内。」何気ないふりで答えるけど、頬が少し緩む。
――やっと聞いてくれた。わざわざ自分から言う手間が省けた。
実は小学校最後のテストは九位。でも“トップテン”の方が響きがいい。
「すげー、強者じゃん!」
羨望の目線が集まる。
その瞬間、ちょっと浮かれた。
休憩中、水を飲んでむせた。
咳をしながら耳に笑い声が入る。
顔を上げる――校門で見かけたあの綺麗な子だ。
長身の男子と話している。
陽の下で、彼女の笑顔がまぶしい。
二秒、固まる。
「……やっぱ人気あるよな。」
隣のやつに何気なく聞く。「あの二人、誰?」
「女子? 万なんとか琳かな。男は知ってる、孫静沢。オレの小学校の同級生。」
うなずきながら、胸の奥が少しざらつく。
――顔も、まあ悪くない。
女子に自分から話しかけて、しかも会話が滑らか。
もしかして、あのポニーテールの子、もう彼のこと覚えたかも。
心の中で思う。
「もし彼の成績が俺より下なら、まだ勝ち目はある。」
二日目。気づけば、目がまた孫静沢を追っている。
休憩時間、彼は数人の輪の中心にいて、笑い声が絶えない。
――生まれつき“好かれ方”を知ってるみたいだ。
“静”って字が名前に入ってるのに、どうしてあんなに賑やかな性格なんだ。
まだ二日しか経ってないのに、どうやってこんなに馴染めるんだ。
胸の底に、変な感情が湧いた。
嫉妬でも、憎しみでもない。
比べられることで生まれる、半歩引いた劣等感――そんな感じ。
昼休み、解放の合図が出たばかり。
俺は地面にしゃがみ、休んでるふりをしながら、実は周りをそれとなく見回して、
一緒に食堂へ行ける“相棒”を探していた。
すると孫静沢が俺に気づき、まっすぐ近づいてくる。
「まだ飯行ってない? 行こうぜ、一緒に。」
意外だった。
――ああいうタイプは、いつも大勢でつるむもんだと思ってた。まさか俺を誘うとは。
「おう、行く。」
歩きながら、彼は自然に話をつなげる。教官のこと、バスケのこと、
「今度一緒にバスケやろうぜ?」とまで言ってくる。
一つひとつの言葉が軽く、自然で、
まるで前からの友達みたいに空気が馴染む。
実際は、今日が初めて話した日なのに。
俺も笑って相槌を打ちながら、心の中で思った。
――これが“人気がある”ってことなんだ。




