こぼれる言葉と恋心
ポカポカとした王宮の中庭。今日も平和なそこで、私は一人ベンチに腰掛けていた。
「リリア様……?」
「はぇ?」
あくびをかみ殺しながら後ろを見ると――そこには美しい青い瞳と白い肌が見えた。
「めっ、メアリーちゃん!?」
どうしよう今私すっごいだらしない顔してたんだけど!? えっ、超絶美少女にお見せできる表情じゃなかったけど引かれてない……!?
「あっ、す、すみません……。お休み中でしたか?」
首を傾げるメアリーちゃん。そんな姿も可愛らしい。
「いやいや、大丈夫ですよ。どうされたんですか? もしや迷子です?」
「違いますよ!?」
「あら、てっきりそうかと」
メアリーちゃんはゲームでよく迷子になってたイメージしかない。でも確かに1年王宮にいたのに中庭で迷子はないか。
メアリーちゃんは眉をハの字に下げ、困った様子で目を逸らす。
「その……デービット様が謹慎中なので……少し、寂しくなってしまって。いつのまにかここに来てたんです」
「なるほど、それで」
デービットは今謹慎中だが……なんとか、それで済んで良かった。
あの後は本当に大変だった。お父様は『公爵家が侮辱された』と顔真っ赤、国王様は顔真っ青。
被害者である私とメアリーちゃんの嘆願で王位継承権の剥奪と1ヶ月の謹慎――という特大の温情措置で済ませられたのは奇跡としか言えない。
「……デービット様、ちゃんと変わってくれるといいですね」
あのやりとりがあって謹慎までして。普通ならなんとかなりそうだけど、あのデービットだからなぁ。
「きっと変わってくださると信じてます。約束しましたから」
メアリーちゃんはまっすぐこちらを見る。彼女の真剣な青い瞳に、私は目を奪われた。
「デービット様がリリア様を忘れられる日はきっと来ないと思います。それでも私は……デービット様の心を射止めて、変えて見せます」
ゲームのスチルでも見た事がないほど力強いメアリーちゃんの表情。それを見て、私はふっと頬を緩ませる。
やっぱり、メアリーちゃんは強いなぁ。
「……デービット様のこと、私の代わりに幸せにしてくださいね。でないと、今度は諦められなくなってしまいそうですから」
意図せず出てきたそのセリフ。想定外のそれに思わず私は口を抑えた。
えっ、今の何? 勝手に口が動いた?
「っ……! 私、デービット様のこと誰よりも幸せにします。リリア様には負けません!」
「えっ、あ、いや、違くてね!?」
バサバサと手を横に振って否定する。でも何故か、メアリーちゃんの言葉に酷く安心してる自分がいて。
……もしかしてあれは、リリアの言葉だったのかな。
頭の片隅に、ふとそんな事がよぎった。
そうだとしたら、私が言うべきは――
「……それを聞いて安心しました。次会う時はみんなでお茶でもしましょうか。薔薇の咲いた庭園で、ゆっくりと」
そう、ゲームでリリアとデービットがよくお茶をしていたあの庭園。リリアの大好きな薔薇の花が咲き乱れるそこに笑顔が戻る日が来たならば。
きっとリリアも喜ぶ、はず。
「……! はい、楽しみにしてますね!」
目を見開いてからふわりと笑うメアリーちゃん。その髪には何もついていないはずなのに、綺麗な黄色い薔薇の髪飾りが見えた気がした。
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