〈第28話〉断罪イベント当日ー状況証拠ー
捉えどころのない表情でデービットを見つめるラファエル。
その無言の圧を受けたデービットは、腕を組んで眉を顰めた。
「私は上司として、彼女の行動を観察する立場にあります。横にいるミカエルは私の補助に過ぎません」
飄々とした低い声が部屋に広がった。すくめられた広い肩がわずかに揺れる。
強く主張するわけではないのに、溢れる格式高さと大人としての余裕。その存在感は、注目を一瞬で奪い去るには十分すぎた。
「宗教省内ではいじめの現場を見たという証言はありません。にも関わらず王宮内では噂が流れ続けている。……不思議に思いませんか?」
柔らかなのに、逃げ道を潰すような周到な物言い。口元だけが弧を描いたその表情は、優しいはずのに有無を言わせぬ圧がある。
デービットは一瞬言葉に詰まり、視線を泳がせた。
「……リリアはああみえて強かな女だ。自分の都合で僕に近づいて、都合が悪くなると去っていくような、な。証拠を残さないように立ち回ることぐらい造作もないだろう」
吐き捨てるようにそう告げる。その声には、どこまでも深い憎悪が宿っていた。
リリアが強かとかそんなこと一度たりともありませんでしたが……?
あまりに身勝手な推測に、わずかに口が開く。
早くも暗雲が立ちこめはじめたデービットの言い分に、職員たちがざわつき始めるのがわかった。
「では何故、証拠もないのにここまで噂が広がったのでしょうか? リリア嬢の噂を流すということは、キャンベル公爵家の顔に泥を塗るということ。その意味がわからない人間が宗教省の本部にいるとは思い難い。あるとするならば、相当な覚悟があるか、恨みがあるか……でしょうか」
真綿で首を絞めるような言葉に、仲間である私ですら身震いする。
このテンションで詰められたら怖すぎて泣くわ。ラファエルのことは敵に回さないように気をつけよう……。
「はっ、あいつならばそれだけ恨まれても不思議じゃない。あいつは人を惑わす稀代の悪女だ」
デービットは断定するような強い語気でそういった。しかしその口元は強張り、目は言い訳を探すように揺れている。
デービットの歪んだ角膜を通すと、仕事以外で異性と話さない女性が稀代の悪女になるらしい。この世界にレーシックがないことが残念で仕方なかった。
いや、呆れてる場合じゃない。このまま押し問答をしても進まないだろう。
罪を認めなかったなら予定通り次の作戦に移らないと。
深呼吸してから再び口元を引き締め、ミカに視線で合図した。
浅はかな王子と違って、こちらにはまだ策がある。この程度では認めないというのならば、認めるまで追い詰めるのみ。次は作戦2ーーー物的証拠だ。
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