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【第一部完結】あと7日で断罪とかマジですか? ーヤンデレ幼馴染と走る断罪回避RTAー  作者:
あと7日で断罪とかマジですか!?ー断罪回避RTAー
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〈第25話〉断罪イベント1日前ー決戦前夜ー

月あかりに照らされた朽ちた広場。そこでは4人の人間が、明日に向け密かに最終会議を行なっていた。


「はぁ……なんだか、壮大な話になってきたね」


ラファエルは肩をすくめて、軽く俯いた。


私がルカであることは話さなかったが、十分に常識の範囲を超えた話だと思う。それすらも瞬時に飲み込む姿に、ラファエルの柔軟さと賢さが滲み出ていた。


その隣にいるメアリーちゃんは、神妙な面持ちでじっと手元を見つめていた。


「矯正力、ですか。そんなものが、存在するとしたら……私のこのデービット様を慕う気持ちすらも、その力によるものなのかもしれませんね」


その瞳はわずかに揺れている。


無理もない。

誰かを救いたいと思う理由が、自分の気持ちではなく外部から矯正された何かから来るものだったら?


考えるだけで背筋が凍る。巧妙に仕組まれたストーリーの上を走っているような、そんな気分になるだろう。


「……もしそうだとしたら、メアリーさんはデービット様との関係を精算したいと思いますか?」


デービットは弱い子だ。きっと1人では立てないだろう。そしたら彼は不幸になる。


それじゃ、意味がないんだ。私が目指すのはみんな笑えるハッピーエンドなんだから。


もしメアリーちゃんが支えたくないというなら……。


ぐっと拳を握り、目を細めメアリーちゃんを見つめる。


視線を受けた彼女は一瞬目を伏せてから、ふるふると首を横に振った。


「いいえ。この気持ちが矯正力によるものなのか、私自身の気持ちなのかは神にしかわかりません。それならば私は今この時を、運命を全うする。自分の手で、運命を必然にしたいんです。」


再び開かれたその瞳は眩い光を纏っていた。目が眩むほど、清廉で、潔白で、強く美しい青い光を。


これが、運命の乙女。数々の人間を導く聖女の覚悟。


「私の中にデービット様を思う気持ちがある限り、私はあの方と向き合い続けます」


その言葉が、眼差しが、私の迷いも憂いも照らしているようだった。息を呑んで、わずかに頬を緩ませる。


……リリアがヒロインにはなれなかったその理由が、この一瞬だけでなんとなくわかった気がした。


「流石"聖女"メアリー・ホワイト。過去の私に足りなかったのは、貴女のような強い覚悟だったんでしょうね。……過去の私はデービットを救いたいと思っていた。でも、救えなかった」


救うために逃げるか、救うために進むか。

リリアの選択はデービットの運命を狂わせた。救うどころか、その手で地獄に叩き落とした。


誰かを思っているようで、誰も見えていない。そういう意味ではリリアもデービットも似たもの同士だ。


だけど……いや、だからこそ。


「私は今度こそ、間違えない。ーーーデービット様の企みを、私たちの手で打ち砕く。私は、もう逃げない」


この結末に、リリアとして責任を果たすために。


リリアの全てを背負うと決めたのだ。その過去も、罪も感情も。全て精算して私は私らしくリリアとして生きていく。


ミカはそれを聞いて、細く息を吐いた。


「実際あの捻くれ王子がどうなるかはわからねぇけどな」


「それでも、やるしかない。今回ダメだったらまた次の手を考える。絶対に、今度はただ突き放すだけじゃ終わらせない」


断罪さえ回避できれば、時間はあるはずだ。5年かけて捻じ曲がったデービットの気持ちが今回だけで真っ直ぐになるとは思えない。長期戦も覚悟の上だ。


ラファエルはそれを聞いて、わずかに唇を歪ませた。


「具体的な策も案もあるとは言い難いけど、なんとなく可能な気がしちゃうのが恐ろしいところだよね」


本来のラファエルならば、こんなふわふわした作戦に乗ったりはしない。飄々としたその言葉の奥に、彼なりの覚悟を感じさせる。


証拠が揃っているとはいえ、王子を追い詰めてやろうと言ってるわけだ。失敗すればただの反逆者。その重みがわからないほど、彼は愚かではないだろう。


ここにいる全員、私を信じてその身を託してくれている。


私はその期待に応えたい。


「私に協力してくれたこと、決して後悔させません」


ゆっくりと、一人一人の目を見据える。


「だからーーーあと少しだけ、私に力を貸してください」


ターコイズの瞳が、細められ鈍く光る。


「断る選択肢なんて、最初から考えてないだろう? 俺の運命を君に託したいと思ったんだ。らしくないけど……嫌いじゃない」


アクアマリンの瞳が、強く光を放ちながらこちらに向く。


「私もリリア様と同じ願いを抱いています。共に、未来を切り拓きましょう」


エメラルドの瞳が、覚悟を宿してこちらを見据える。


「俺はお前と共に歩むと決めた。後悔なんてしねぇよ、どんな障壁も俺が壊してやる」


全ての光に照らされて、ガーネットの瞳は爛々と輝く。月よりも眩しく、太陽よりも柔らかく、確固たる決意を宿して。


さあーーー運命に抗うための、作戦会議の始まりだ。

お読みいただきありがとうございます!

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ブクマ5ごとに番外編を追加予定です✨

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