〈第21話〉断罪イベント2日前ー混ざり始める人格ー
ベッドに寝転がり呼吸を整える。すっかり日が傾き、部屋がオレンジ色に染まっていた。
思い出した。リリアがデービットと距離を取った理由も、その気持ちも、飛び降りた訳も。
唇をかみ、天井を睨みつける。
デービットが噂を流さなければ、あそこで守ると言っていれば、リリアは飛び降りることなんてなかったんだ。それなのにデービットはリリアの愛を信じなかった。彼女がどれほど、デービットを愛していたかも知らないで。
その自己中心的な思考が、腹立たしくて仕方なかった。
リリアがどんな気持ちで、覚悟で窓から飛び降りたのか。窓から身を乗り出した時に一瞬で迫る地面の恐怖を、時が止まるような浮遊感を味わわせてやりたい。
シーツを掴む腕に、力が入る。
なのになんで……こんなに、悲しいんだろう。胸が、痛いんだろう。
怒りが湧くと同時に、デービットを酷く哀れに感じる自分がいた。
ゲームでの彼は、もっと人の気持ちに寄り添える人間だった。自分からちゃんと謝れる人間だった。
リリアを失ったデービットは愛に飢えた子供のまま、成長することができなかったのだと。
デービットの元へ行って怒鳴りつけてやりたい。なんであんなことを言ったんだ、リリアの気持ちを考えろと。
でもーーーリリアはそれを望まない。この哀れみは、きっとリリアの感情だから。
私がやるべきことは決まっている。リリアとして矯正力に抗い自分の運命を切り開くこと。
そしてリリアが愛したデービットを、不幸にならないように導くことだ。
それがリリアと私の願いだから。私がリリアになったのはーーーきっと、その願いを叶えるためだ。
私にはリリアには存在しない『知識』がある。この世界で知識を使って矯正力の抜け穴を探し、生き残ること。それが、私に定められた『使命』だ。
ゆっくりと体を起こして、机に向かう。
考えろ、突破口を。運命を覆す一手を。
いつも通りノートをひらき、ペンを取る。
その動きが、妙に体に馴染んだ。
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